「私達が聞いた情報と一致しますね」
ギャラルの報告を聞いて最初に反応したのはロジェだ。アンヘルと組んで情報収集に向かっていた二人だが、何か聞いているのだろうか。
「レギオンを統率する特別なレギオン。異形の化物であり、赤い目をしていることからレッドアイと呼ばれている、か」
「そうです。正にその情報通りです」
「……おや、アンヘルも一緒に聞き込みをしたんじゃないのかい?」
何処か他人事のような言い方をするアンヘルに、イチイバルが疑問を口にする。
「見ての通り目立つからな。服で隠しきれるものでもない」
『考えれば分かることだろう』
平和な世の中ならともかく、どこにいってもヒリヒリしている現状、明らかに人間のものではない翼を持ったアンヘルが近づくべきではないだろうと、街に入ることはなかった。
「それもそうだね」
納得はしたものの、イチイバルは何となく違和感を覚えたままだ。その理屈自体に何もおかしなことはないのだが。
「しかしお主ら二人で苦戦するとはな。そこまで苦戦させられたのは、それこそあの"敵"共くらいだろう」
「レッドアイの襲撃があった街は全て壊滅していると聞いています。少しでも被害を減らすためにも、私達で倒しましょう!」
「まーそれもいいけどさ、ちょっと気になる話があったよね」
ロジェの発言を遮ったのはミュルだ。イチイバルに目配せをして、話してと視線で伝える。
「ああ、僕ら以外のキル姫の話だろう?」
そんなイチイバルの発言に、ギャラルとロジェは露骨に反応する。余所者の二人からすれば、まだ戦力があるかもしれないという程度のことだが、同じキル姫の二人からすればかなりの朗報だ。
だが、イチイバルがそこまで嬉しそうな表情をしていないことに二人共気がつく。
「街の人間を襲ったという話さ。誰なのかまでは分からなかったけどね」
「暴走したキル姫か。レッドアイとは別にそやつも対処しなければならぬか」
「そうとも限らない。被害に合ったのが一人だけという話だ。完全に暴走しているなら、その程度では済まないだろう」
今は武装している人も多く、昔に比べたら人々の防衛は硬くなっている。だが、それでもキル姫一人だけでも街一つ壊滅させることは不可能ではないということは自覚している。
「ただそのキル姫のことは情報が少なすぎるし、僕はレッドアイの討伐が優先だと考えるね」
「実はそいつが全ての元凶で、倒したら全部解決とか……ないかなあ」
なんの根拠もない憶測。あるかもしれない希望。そうだったらいいなくらいの感覚でミュルが呟いたが、確かにそうだったらどれだけ簡単なことか。
しかしそう思いたくなるのも気持ちは分かる。というのも今の所、何をすればいいのかという明確な目標がない。
「……そうして偶像に縋るか。余りにも脆いな、人間というのは」
「なにそれ。ミュル達のこと馬鹿にしてる?」
むすーっとした顔で噛みつくミュルだが、ギャラルは苦笑い。嫌味を言っているようにしか聞こえないが、きっとアンヘルのことだ。
「その分だけ逞しいとか、なんか考えてるんでしょ?」
「さて、な」
「アンヘルが何を考えているのかはさておいて、とりあえずレッドアイの討伐が最優先事項ということは問題ないね?」
イチイバルの確認に、誰も反論しない。ミュルが言ったように、それで解決とはならないだろうが、間違いなく被害は減るしそれが解決の糸口になるのかもしれない。
ただ、闇雲にレッドアイを探してもきりがない。まずはレッドアイの発見、或いは行動の予測。明日から各々が出来ることをしようということになった。
それが、希望に繋がると信じて。