ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第2節 全テヲ破壊スル黒キ巨人/白塩

 それは突然の出来事だった。今まで発見されていなかったレッドアイが姿を現したのだ。

 その日はアンヘルとギャラルが同じ方角へ行こうとしていた。街中に入れないアンヘルとそうでないギャラルでは、得られる情報も違うから試してみようかと。

 そうして飛んで、すぐにその姿が現れた。巨大な白の怪物。レッドアイが。

 

「何だあれは!?20mどころではないぞ……!」

「前見たのと形は同じだけど、大きさは全然違うわ!」

 

 以前遭遇した時よりも、二倍以上の大きさになっている。幾つもある脚を動かし、巨体を運ぶ。だからこそ遠目でもその存在に気がついたのだが、あの大きさは間違いなく厄介だ。

 更に、周りにもレギオンが数体いる。レッドアイを中心に進んでいる先には街が見える。この塩に塗れた世界でも、比較的に活気のある街だ。塩対策をしたプラントもあり、現在の食物の大半はこの街で作られている……というのはイチイバルから聞いた話。交易の要にもなっているので、少し遠いがイチイバルもよく足を運んでいたらしい。

 そんな街に、レッドアイ達が進軍している。本当は全員集まってから仕掛けたいが、そんなことをしている間に街がどうなるか分かったものではない。

 

「ギャラルは止めに行くわ。皆を連れてきて!」

「無茶はするでないぞ」

 

 アンヘルは180度向きを変えて家へと飛んでいく。その姿を見送ってから、ギャラルも急いで飛んでいく。月光と闇を構え、こちらに気がついてないレギオンへと奇襲を仕掛ける。

 上手いことバレずに接近出来たギャラルは、群れの後方にいるレギオンの首を斬る。あっさりと切れた首から血が吹き出し、力なく倒れる。

 しかし、当然ながら他のレギオンはその姿に気がつく。レッドアイもまた気がついたようで、後方にいるレギオンがギャラルを取り囲むように陣形を組み始める。しかし肝心のレッドアイは残りのレギオンを連れ進軍を再開してしまった。

 

「待って!」

 

 追いかけようと飛ぼうとするギャラルだったが、道を塞ぐようにレギオンは立ち塞がる。

 ならばと月光と闇を高く振り上げ、魔法を唱える。幾つもの炎が吹き上がり、レギオンを焼く。しかしそれだけで殺しきれるほどレギオンは柔くはない。

 それは分かっている。けれど魔法を唱えるのをやめない。むしろ炎を強くしていく。それは巨大な炎の柱となり天を貫く。

 全力の魔法に流石にレギオンも耐えきれなかったのか、大半が炎に呑まれ死んでいく。それでもまだ何体かレギオンが残っている。

 ……しかし、それは重要ではない。

 

「あれ、見て!」

 

 一人の子供が指を指す。少し遠くだろうか、とてつもない炎が空へ昇っていく。

 人々の視線はその炎に釘付けとなり、それから異常事態になっていることを理解していく。混乱が起きる。しかしレギオンの襲撃を何度も退けてきた衛兵達は冷静に避難の勧告を始める。

 人々の喧騒は大きくなり、だいぶ遠くにいるはずのギャラルの耳にも届いてくる。

 幾らレッドアイが巨体と言えど、空から発見したギャラル達と地上から見ている者とでは見える距離が違う。彼らが気がついてから行動を始めれば間違いなく手遅れになるからこそ、警告も兼ねての魔法だった。

 剣に込められた魔力の殆どを使い切ってしまったが、こればかりは仕方がない。カイム達が合流すれば何とかなるし、ただのレギオン相手にはもう慣れた。必要ない。

 炎が止み、二度目の魔法が来ないことを確認したレギオンは一斉にギャラルへと向かい走り出す。攻撃が来るだろうギリギリまで引き付けて、それから真上へと勢いよく飛び出す。レギオンの拳は別のレギオンへとぶつかり、またあるレギオンは脚が引っかかり、もつれ込んでいく。

 大気中の魔素を少しずつ吸い上げ魔力へと変えていき、炎を纏わせてレギオンへ目掛け落下して頭部へと突き刺す。他のレギオンはすぐに起き上がりまた拳を振り上げるが、今度は隙間を抜けレギオンの輪から抜け、小さく跳び首を刎ねてから直ぐに距離を取り直す。

 迫るレギオンだが、今度は逆にギャラルから距離を詰めすれ違いざまに一閃。更にその後ろに控えていたレギオンを飛び越えながら頭部を真っ二つにする。

 近くにいるレギオンは全て蹴散らした。それを確認してからギャラルはレッドアイの向かった街の方向へと飛んでいく。

 

「逃げろー!レッドアイだ!」

「戦える者は武器を取れ!この街だけは守らなければならない!」

 

 レッドアイの接近に気がついた人々は、しかし活気付いていた。最後の防衛線と言っても過言ではないのだ。レッドアイに襲われた街が全て壊滅しているという事実を覆さんとばかりに集結していく。

 しかしその中で、もう一つ見慣れない影に気がついた人がいた。

 

「何だあれは!?ドラゴンなのか!?」

 

 それは新たな驚異となるのか。同様が走るが、ドラゴンが放った無数の炎はレギオンの群れへと飛んでいき焼き尽くしていく。

 

「雑魚風情が我が炎に敵うと思うな」

「これは凄いですね……!」

 

 大魔法を放ったドラゴン、アンヘルの背に乗っているのは、カイムとキル姫の三人。

 そのとてつもない炎を間近で見たロジェは、魔術師として素直に驚いている。そんなロジェを見るカイムの顔は何処か満足気だ。

 

「ギャラルがいない……?」

「最初にレッドアイを見かけたのはもう少し遠くだった。足止めされているのかもしれん」

「はいはーい。ミュルが探してきまーす」

 

 ミュルが神器ミュルグレス、チェーンソーの形状をした剣を持ちアンヘルの背から飛び降りる。まだ高さはあるはずだが、難なく着地して走り出す。

 続けてアンヘルが行動を降ろしていくと、残りの三人も飛び降りていく。

 アンヘル達の奇襲により、あっという間に周りのレギオンは全滅に追い込まれた。しかしレッドアイの腹部から、白い腕が生えてくる。レギオンが顔を出し、地面へと転がっていく。

 

「まさか、レギオンを体内に集めているのか?」

「……なるほど、色々と辻褄が合う。ロジェ!レギオンを頼む!」

 

 神器ロジェスティラ、叙事詩に現れる女性の名を刻まれたその本を開き、炎を生み出していく。ロジェが得意とする魔法もまた炎の魔法なのだ。生み出された炎の弾をレギオンへ向かい放つ。アンヘルの大魔法程の火力はないが、正確なコントロールで頭部を狙い撃ちにしていく。

 カイムはカイムの剣を握りしめ真っ直ぐとレッドアイへ向かっていく。イチイバルもまた、神器イチイバルを構え全力の射撃をしていく。光を纏った矢は真っ直ぐと脳天目掛け飛んでいくが、腕で弾かれる。その腕から血が垂れていることから、ダメージは通っているものの致命傷とは言い難い。

 カイムもまた振るわれる腕を避けながら、その腕を斬り落とさんと反撃をしていくが深い傷にはならない。このまままともに致命傷が通らないのなら、体力が尽きる方が先か攻撃を避けきれないのが先か、とにかく追い込まれることに違いない。

 ロジェの放った魔法でレギオンの大半は壊滅し、更にアンヘルの火球が追撃として放たれる。こちらの対処は何とかなりそうだと考え、ロジェはかつて神令(コマンド)されたスクルドの能力で未来視をする。そうして視える未来は確実なモノになってしまうし、何より使いすぎれば呑み込まれる危険性もあるので普段は封印している力だが、今だけは使ったほうがいいだろうと考える。ミュルとギャラルが合流できるタイミング、それが分かればその後を考えて戦えるはずだから。

 しかし、まず視えた光景はそういったものではなく。

 

「イチイバルさん!」

 

 避けてと言うことさえ間に合わなかった。距離を維持しながら頭部へ射撃し続けていたイチイバルを危険だと判断してきたのか、腕が鞭のようにしなりながらも伸び叩き潰そうとする。

 それ自体は身軽に飛び避けるが、宙に浮いている瞬間を狙いもう一本がイチイバルの細い体に叩きつけられる。

 それは正に視えてしまった光景。それ以上の追撃をされないように、アンヘルが火球をレッドアイ本体にぶつけ妨害する。その僅かな間でイチイバルは立て直しもう一度神器を構え直そうとするが、身体が痛む。

 まあ、このイチイバルさんが痛いってだけでやめるわけないんだけどね!

 そう思い気合を入れ直し、今度は腕を狙い射撃を再開する。どれだけ頭を狙おうと弾かれるのなら、やはりあの邪魔な腕を破壊するしかない。

 

「……!視えました!あと二分、いえ一分持てば二人は来ます!」

 

 その瞬間まで視たのだから、当然その瞬間までの間に何が起こるかも視ている。しかし、それは言わないでおく。どうしようとも無駄だと言われれば、抗う気力をなくしてもおかしくはない。

 何よりその先は視ていない。気持ちの持ちよう一つでも、未来は変えられる。

 傷を負い少しだけ動きの鈍くなったイチイバルを集中して狙うつもりなのか、カイムの足止めは最低限にしてイチイバルへ大量の腕が伸びてくる。しかしそれを視ていたロジェは予備の魔導書を使い、より強力な炎の魔法を唱えようとしていた。

 更にイチイバルからのアイコンタクト。何度経験しても慣れない感覚へ備える。

 魔法の詠唱が終わると同時に視界が変わる。それはイチイバルのいた位置。彼女と位置が入れ替わったのだ。なので当然、イチイバルを襲おうとしていた腕は全てロジェの目の前へ飛んでくる。それを狙い魔法を放つ。

 しかし目の前まで迫っていた腕へ向かって魔法を放ったのだ。爆風に自身も巻き込まれ、僅かながらも火傷を追ってしまう。

 

「ロジェ!?大丈夫かい!?」

「平気です、これくらい!」

 

 更にカイムも魔法を唱え炎をぶつけながら、引いていく。何度も何度も腕を斬りつければ、一撃は浅くとも確かなダメージになっていく。それを証明するように動きが鈍くなり始めた腕を炎で撹乱し少しずつ引いていく。

 二人の合流に合わせて一旦距離を取ろうとしているのだ。その意図を理解したイチイバルはカイムを狙う腕へ射撃をし、ある程度距離を確保できた所でアンヘルは伸びる腕を全てを焼き払うように炎を吐いていく。

 そして、気配。レッドアイの背後から二つの気配。奔る稲妻と炎の軌跡が現れる。二人の斬撃が、レッドアイの背中を襲う……!

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