ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第3節 生マレ出ヅル意思

 ギャラルはレッドアイを追撃するべく追っていたが、その道中にもレギオンが残されていた。無視して進む選択肢もあるが、レッドアイに辿り着いた時に挟撃されるのは危険だし、何よりこちらを無視して街まで行かれたら最悪だ。

 何体目のレギオンか。数えるのもバカらしくなるだけの数を叩き斬っていく中で雷光が訪れる。ギャラルを狙おうと背後から迫っていたレギオンが、真っ二つに引き裂かれる。

 

「だいぶ苦戦してるみたいだね〜。手を貸そうか?」

「お願い。ミュルがここにいるってことはレッドアイは?」

「みんなで足止め中。早く行かないとね!」

 

 それだけ確認すると、二人は自然と背中を向けてまだいるレギオンへの対処を再開する。ギャラルが的確に頭部へ狙い斬撃をするのに対して、ミュルは身体を直接引き裂いていく。神器がチェーンソー型という特異極まる武器というのもあるが、やはり剣のキラーズには敵わないということを嫌でも理解させられる。

 二人の攻撃であっという間にレギオンを倒し尽くすが、そこでミュルは疑問を口にする。

 

「神器使わないんだ?」

「……なくした」

「いやそれ大変じゃない!?」

 

 神器とはただ強い武器というわけではなく、キラーズの源でもある。近くなければ死ぬというようなものでもないが、仮に破壊されたりしたらどうなるかは分からない。

 しかし、この世界に来て"敵"との戦いで使ってから一度も見かけていない。キラーズの気配も感じないので、今まで行った街などにもないのだろう。

 あったとして使うかは別だが、あって困るものでもないし大切なものなのも間違いないので見つけたらすぐに取り返そうとは思っている。

 

「これ終わったらミュルも探してあげるから、カステラ頂戴ね」

「いいの?神器とカステラ交換で」

「それくらい貴重なのよカステラ」

 

 冗談……かは分からないが、雑談もここまでにして二人共レッドアイを追うために移動を再開する。

 流石に大きいだけあってレッドアイの姿は割と早く認識できたが、逆に距離感を惑わせてくる。更によく目を凝らせばカイム達が交戦しているし、近くにドラゴンが飛んでいる。本当に元の姿に戻れるんだなと関心しつつも、ラストスパートを掛ける。

 ミュルはトールの力を解放し、全身に力を込め走り出しまるで稲妻の様に駆けていく。ギャラルも月光と闇に炎を灯し、少し跳んでから一気に距離を詰めにかかる。

 

「やあああああ!!」

 

 声を張り上げ、目の前の敵……つまりカイムへの攻撃に意識が持ってかれているレッドアイの背後へ二人の剣を当てる。

 確かに二人の斬撃が直撃し傷は入るのだが、斬った感触に違和感。肌というよりは甲殻だろうか。明らかに人型でないのは見れば分かるが、中身も全然違うようだ。

 そのまま二人は別の方向に散開し、その巨体を振り反撃するレッドアイの攻撃を躱す。

 

「なんか聞いてたより強そうだけど、作戦通り行けるの〜?」

 

 追撃してくる腕をひょいひょい避けながらミュルはイチイバルに確認する。更に反撃とばかりに腕を斬りつけ、歯で腕を削り切っていく。

 しかし削り切るのに多少の時間はかかってしまう。その隙を見逃さず狙おうとする他の腕を、冷静にイチイバルの射撃が妨害していく。

 

「君の攻撃で切れるなら問題ない!」

 

 ミュルの攻撃をまともに食らった腕は、ついに切り落とされる。ここまで一本も落とせていなかった腕をようやく千切ることができたのだ。

 そしてどれだけの異形だろうと、レギオンであるのなら弱点は頭。それはイチイバルの射撃を全てはたき落としていたことからも違いない筈だ。

 ならば、行ける。その確信がイチイバルにはあった。

 再びレッドアイに向けて走り出すカイムと、合流するギャラル。二つの炎の剣は息の合った連携で懐へ潜り込んでいき、ミュルの露払いをしていく。

 更にレッドアイの気を逸らすためにも再びイチイバルは頭部への射撃を再開し、ロジェもまた使える魔導書を全て開き、今度は前線の三人へ補助の魔法をかけていく。

 アンヘルは人の姿に戻り、後衛の二人の元へ落ちてくる。ドラゴンの姿になっていたのは、再び深化をしたという訳ではなく、あくまで魔力を練ってドラゴンの形を再現していただけだ。不便な身体になったものだと思いつつも、残った魔力で炎の魔法を唱えフリーになっている腕へと妨害のために炎を飛ばしていく。

 みんなの支援のお陰でかなり動きやすくなったミュルは迫る腕を的確に迎撃し、腕を一つまた一つと千切っていく。数が減ってきたのでカイムとギャラルも露払いの必要性が減っていき、攻撃へと変えていく。ギャラルがカイムと合わせ同時に腕へ斬撃を繰り出していくと、カイム一人では斬り落とすまでは出来なかった腕を千切っていく。

 これなら案外楽勝かな……?そうミュルが油断した瞬間、腕ではない別のモノが襲撃してくる。いや、襲撃と言うと間違いだ。影大きく暗くなっていくのを認知した瞬間に、三人は一斉に引こうとするが残った腕は道を塞ごうと回り込んでくる。

 そう、押し倒そうとしているのだ。パッと見ゆっくりと倒れてくるように見えるが、それは錯覚であり猛スピードで三人へその白い身体が近づいてくる。

 後ろの二人が必死に攻撃をしたところで落下は止まらない。アンヘルは自分なら下敷きになろうが平気だと考え飛んで向かおうとするが、それも残った僅かな腕で妨害してくる。大した妨害ではないが、避けながら向かっていれば間に合わない。

 

「うわーーっ!!」

 

 ミュルが叫びながら全力疾走をしていると、何かが高速で飛んできて胴体に直撃。

 それは大爆発を引き起こし、僅かながらもレッドアイの胴体を押し返した。更に三人共爆風に吹っ飛ばされる形でレッドアイの影から押し出されことなきを得た。

 飛んでくるギャラルとカイムをアンヘルが受け止めるが、ミュルは誰にも受け止められずに地面を転がり頭を打つ。

 

「いったーい!何すんのよロジェ!もう少し加減してもいいじゃん!」

 

 危うく死ぬところだったことを棚に上げて抗議の声を上げるミュルだったが、ロジェとイチイバルはお互いを見て固まっていた。

 ……今の、誰の攻撃?

 しかしその正体にいち早く気がついていたギャラルは、爆風で受けたダメージを気にせず立ち上がる。

 

「大丈夫なのか?今のは……」

「なんかの魔法だと思うけど、詳しいことは分からないわ。でも!」

 

 ギャラルにだけ聞こえていた音が近づいてくる。それは鬨の声。目の前で繰り広げられていた異次元の戦いに竦んでいた街の人々が、威勢を取り戻し駆けつける声。

 

「ここは俺達の街だ!他所モンに任してられるかよ!」

「魔道士隊!次はいつ撃てる!?」

「走れ走れー!レッドアイを倒すぞ!」

 

 全員が振り返れば、駆けつける人々の姿が見えてくる。それぞれの得物を構え勇猛果敢に突撃する。

 更に遠くには魔導書を構える複数の人々。それを認識したイチイバルはなるほど先程の魔法は彼らが放ったんだなと理解する。

 まるでそれに対抗するかのように、レッドアイの伏せられた身体から次々と新たな腕が突き抜け、レギオンの群れが生まれていく。

 

「あんたがリーダーか!?指示をくれ!」

「いいのかい?僕が指揮を取って」

「誰だか知らねえが、俺達よりよっぽど強いだろ?任せるぜ!」

「分かった。レギオンの気を引いてくれ!それでも余った戦力はレッドアイの触手に対処するんだ!」

 

 再び立ち上がるレッドアイ。走り出すレギオンの群れ。そしてそのレギオンの群れに立ち向かう人達。二人一組でレギオンへと突撃していき、一人が盾を構え攻撃を受けもう一人が頭部を狙った攻撃をしていく。

 それでもみんなが無傷で立ち回れるわけではない。更に遊撃の人員が苦戦している組の援護や負傷者の救助に当たっていく。

 

「……これ、チャンス?」

 

 残っている腕も少ない。その腕も囮になった人を狙うばかりでミュルやカイムとギャラルを狙うものがない。

 一応イチイバルの射撃を防ごうとしている腕がまだあるが、そちらも数は少ない。ただでさえ減ってきている腕を使って頭部を守ろうとしていることから、弱点であるということは如実に伝わってくる。胴体への射撃は殆ど無視しているのにあそこまで必死に守っているのは、余程柔らかいのかもしれない。

 

「ミュルがあいつを止めるから、トドメは任せられる?」

「いいの?」

「流石にあんな高い所に届かないからなあ」

 

 ギャラルがカイムへ目配せをすると、無言で頷く。このままだとイチイバルの攻撃は届きそうにないし、ギャラルがトドメを仕掛けに行くということに誰も反対しない。

 

「さっきの魔法は使える?」

「ああ、アレなら今準備させている。もうすぐで魔素の充填も終わる」

「こちらのタイミングで撃てるかい?」

「それなら大丈夫だ!」

 

 イチイバルもミュル達の行動を察し、攻撃を成功させるための案をその場で練る。

 

「えー?速攻仕掛けた方がよくない?」

「急いた所で結果は得られぬぞ」

 

 ギャラルはその場から離脱し、カイムとミュルは時が来るまでレギオンへの攻撃に参加する。

 間もなくして、街の方角から光が上がる。魔素の充填が終わったという合図。

 

「行けるぞ!」

「分かった。総攻撃だ!」

 

 カイムは今しがた死体に変えたレギオンを蹴っ飛ばし、ミュルもまたレギオンを両断してから走り出す。

 アンヘルも再び大魔法を唱える準備をし、合わせてロジェも支援は止めてありったけの魔力で魔法を練り上げていく。その間もイチイバルは射撃をする手を止めない。

 まずミュルとカイムは胴体の中心目掛けて剣を突き立てありったけの力で刺し、かっぴらくように反対の方向へと走り出す。更にアンヘルとロジェの魔法が開かれた傷口に向けて放たれ、無数の獄炎が抉っていく。

 

「今だ!」

 

 そしてイチイバルが青年に指示を出すと、発煙筒代わりの魔法を空に放つ。眩い光が空に広がると、少し遅れて強大な魔力の塊が一直線にレッドアイへ向かい飛んできて直撃。僅かに経ってから炸裂する。

 そして、爆風が止まぬ中レッドアイの背後に浮かんでいるギャラルは、全ての魔力を剣へと込め炎を纏った一撃を頭部へ

 

 

「えっ?」

 

 誰かの姿が見える。一人の少年がそこにいた。

 

『お姉ちゃん、ありがとう』

 

 それは、見覚えのある姿。

 

「なんで、君が……?」

 

 それはあのハロウィンの夜に出会った少年。

 

『僕はもう僕じゃないから。だから、止めてくれてありがとう』

 

 レギオンは、人の成れの果てで。そして、今レッドアイと戦っていた筈で。だから、だから……?

 

『さようなら、お姉ちゃん』

「待って!!!」

 

 

 放たれた。確かに膨大な熱を秘めたその剣は、想像よりも柔らかな頭を焼き切った。

 けれど、もはやそんなことはどうでも良くて。今確かに視えた光景が頭から離れない。力のコントロールを失った身体は慣性のままに地上へと落ちていく。崩れるレッドアイの、血に塗れた塩の上へと、落ちていく。

 レッドアイが遂に倒された。更にレギオンもその全てを倒すことに成功した。一瞬の静寂のあと、歓声が満ちる。遂に倒された強大な敵を前に、皆が喜びの声を上げる。

 しかし地面に叩きつけられたであろうギャラルを心配しアンヘルとカイムが駆け寄る。

 

「大丈夫なのか?」

 

 違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!

 あの子じゃない。あの夜にお母さんに会えて、そしてキャールブの孤児院に預けてそこで別れて。こんな所にいる筈がない。あの子を今、自分が殺したなんて……!

 

「い……」

「どうした?何処か痛むか?」

 

 カイムがそっと身体を起こす。けれど、二人は驚きの余り硬直する。塩と血に塗れたその顔は、今まで一度も見たことない顔をしていたから。

 

「いやあああああああ!!!!!」

 

 ギャラルの絶叫が、喜びを分かち合う人々の声をかき消した。

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