ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第6節 新たな契約

 ミュルは疾走する。異族の群れの中を泳ぐように走り抜けながら引き裂いて行く。今更異族程度は敵でさえないのだが、いかんせん数が多すぎる。更に異族に混ざってレギオンまで暴れているのだから面倒でしかない。

 異族をバサバサと斬り倒しながら近くのレギオンの元まで走り、斬るふりをして拳を振らせてから、その拳を蹴り上げ宙に舞う。

 

「オラァア!」

 

 雷を纏わせながら落下する様は、まるで本物の雷のようだった。放たれた雷が地上で広がり異族達を焼いていく。

 周りが空いたことで自由に走ることが出来るようになった。そうなれば自慢のすばしっこさで撹乱しながらレギオンの懐に潜り込み一刀両断。

 それから、次はどいつを狙おうかなと考えながら改めて状況を確認するが、まあ相変わらず大量のレギオンが跋扈している。

 

「アレどうにかならないの?」

 

 同じく近くで走り回りながらの射撃戦をしていたイチイバルへと声をかける。

 

「どうにかしたいけどね!」

 

 対多数ならロジェの方が得意なのだが、途中ではぐれてしまい今は二人だけ。偶然はぐれたというよりかは、分断されたと言った方が正しいかもしれない。

 この調子だと、カイムとアンヘルも無事か分かったものではない。

 どうしよもないか……と改めて神器を構え直すミュルだが、そこで一つ気がついてしまう。レギオンの群れの中に一回り大きなやつがいる。しかも、赤い双眸が光っている。

 

「ちょっと待って!?あれレッドアイじゃない!」

「これは、万事休すかな……」

 

 以前戦ったような巨大さではないものの、かなり危険な個体であることは違いない。レッドアイ自身の強さも厄介だが、レギオンの統率を取れることが何よりも危険だ。

 あの時はこちらも数がいたから何とかなったが、たった二人であれだけの数を相手するのは無理がある。

 そうは考えつつも、素直に諦める気にもならない二人はレギオンの群れに立ち向かおうとする。しかしそこで異変が起きた。

 巨大な炎が空からやってくる。それはレギオンとは別の方向から迫りつつあった異族と魔獣の群れの中心へと落下し、炸裂。辺り一面が火の海となった。

 

「……アンヘル?」

「いや、違う!」

 

 火の海から弾丸のように放たれた小さな人影は、二人を無視してレギオンの方へと飛んでいく。レギオンが反応して動き始める前に、数体のレギオンの身体が千切れ崩れていく。

 

「おらおらおらおらおらーっ!」

 

 叫びながら自在に飛び回り、炎の弾を連射しながら牽制しつつも懐へ一瞬で飛び込み一撃で切り裂いていく。

 予測のできない不規則な軌道に、バラけていたレギオン達は一箇所に結集する。何処から攻撃が来てもいいように輪を作り警戒する。特に上空からの攻撃を強く警戒し見張るが、まるでそれを待っていたかのように少女は笑みを浮かべ、その輪の少し手前に勢いよく落下する。

 そのまま剣を地面へと突き刺すと、少女の前方へ扇状に無数の炎の槍が地面から生えていく。まとまっていたレギオンの大半が見事にその槍に刺されて絶命していく。

 危機を感じ取ったレッドアイと、少女から遠くの所に陣取っていたレギオンはその槍の山から逃げ出し事なきを得たが、それも一瞬のこと。

 少女と剣を模した炎の分身がレギオンへと迫り、まるで幻影のように疾走っていく。レギオンと同数の炎の幻影は、確実にレギオンを討ち滅していく。

 あっという間に孤立したレッドアイは慌てて逃げ出そうとする。しかし少女が剣を振り上げると、少女の周りに生まれた幾つもの炎の槍が、そのまま周囲を回りながら頭上へと昇っていき、一つの巨大な炎の槍へと変わっていく。

 そして剣を振り下ろしレッドアイの頭部を指すと、巨大な炎の槍は射出され一撃で頭部を粉砕した。

 

「はっ!雑魚ばかりね」

 

 嘲笑いながら振り向いたその少女を、二人は知っている。いや知らないはずがない。なのに誰なのか一瞬理解することが出来なかった。

 圧倒的な力で敵を殲滅したギャラルホルンは、カイムのように快楽に溺れた笑みを浮かべていたからだ。

 

「ギャラル、何だよね?」

「いや、誰に見えるのよ」

 

 笑みを引っ込めて二人に向かって歩き出す。それと同時に、ミュルはもう一つの違和感に気がつく。使っている剣がいつものではなく、カイムの剣ということ。

 

「なんであんたがカイムの剣を持ってるの」

「ああ、カイムからもらったからね」

「カイムと会ったんだな?二人は今……」

「死んだよ」

 

 あっけらかんと、とんでもないことを言い出す。しかもそう言ったギャラルの表情は、特に悲しんでも怒っても、もちろん喜んでもいない……なんの感情も伺えない、逆に恐ろしさを感じる表情。

 

「でも大丈夫よ。カイムはここにいるから」

 

 愛おしそうにカイムの剣を抱く。たった今レギオン共を斬り、血と塩で汚れているその剣を。

 

「なに、言って……」

 

 彼女に、いやカイム達に何があったのだろうか。明らかに豹変してしまったギャラルを見て固まる二人だったが、本人はその様子に気づいてか気づかずが、無視して話始める。

 

「ところで、何があったの?再生の卵はあるし、異族や魔獣までたくさんいるし」

「あ、ああ……いや、それが僕達にも分からないんだ」

「チッ」

 

 小さく舌打ちしてから、ギャラルは向き直す。その方向には、ユグドラシル。いや、あの奇妙な花。

 それを剣で指し、軽薄な笑みを浮かべ楽しそうに言う。まるでこの状況を楽しんでいるかのように。

 

「じゃああれを壊すしかないわね。なんの手掛かりもないんだし」

「何言ってんの?ユグドラシルを壊すとか正気……!」

 

 花へ向けていた剣を、ミュルへと突き出す。そこにはもう笑みはなく、無表情に戻っていた。

 

「あの花がユグドラシルに見えるほうが余程正気じゃないわ。二人とは戦いたくないんだけどなあ」

 

 突然豹変してしまったギャラル。しかもユグドラシルを破壊すると言い出した。その奇妙な言動にイチイバルは一つの結論を出し、神器を構えギャラルへと向ける。

 

「あ〜あ。まあ良いんだけどさ」

 

 ギャラルもまだ戸惑っているミュルから視線を外し、イチイバルへと向き直す。剣を構え直し臨戦態勢に入る。もはや、そこに戦いや殺戮への戸惑いは残っていない。

 その様子にイチイバルは一つため息を吐き、飛び退きながら射撃を放つ。ギャラルは魔法で防ごうとするが、彼女に届く前に矢は弾かれた。ミュルがその矢を弾いたのだ。

 

「あ〜もう!あんたはとっとと行け!」

「……いいの?」

「ミュルにも花には見えないけどさ、多分正しいのはあんたの方だよ」

 

 ミュルの意志が固いことを理解したギャラルは、背を向け飛び立つ。それを止めようとイチイバルはもう一度矢を放とうとするが、ミュルが目の前まで迫り妨害する。

 

「どうして邪魔をするんだ。今の彼女は明らかに正気じゃない!」

「確かにね。でもそれはあんたもだよ、イチイバル」

「何を根拠に……!」

「鏡があったら見せてあげたいね!」

 

 戦い始めた二人を置き去りにして、ギャラルは、二つのキラーズを宿したイレギュラーは、花へと向かって飛翔していく。

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