ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第3節 愚カシイ兵器/伝承

 噂はすぐに広まっていった。レッドアイを討伐した者がいるという情報。

 残念ながら、花に向かって移動していた七支刀はその者とも、件のレッドアイとも会うことはなかった。しかしその者がカイム達なのだろうという希望も持てた。やはり彼らは生きて、今も何処かで戦っているのだと。

 カイムの戦闘狂っぷりには困ってはいたものの、こういう時は素直にありがたい。

 そんなことを考えつつも、町を歩く。何か食料がほしいと店を探していたところで、異変が起きた。空から何かが落ちてきたのだ。……卵だろうか。

 考えながらそれに触れようとして、その瞬間に何かが頭の中を駆け巡る。それは、怪物になった自分。恐ろしいまでの力で天を裂き、その割れた空から落ちてくるカイムに真っ二つに斬られる。そんな映像と、触れたら恐ろしいことになるという警鐘が鳴る。

 それは殆ど無意識だった。信義を抜き卵を一刀両断。形を失った卵は溶けるように崩れ、液体だけがそこに広がった。

 

「……今のは、一体」

 

 考えようとするが、それを状況は許さなかった。落ちてくる卵は一つだけではない。雨のように、とまではいかないが数えようとは思えないだけの数の卵が落ちてきていた。

 それは時に建物を突き破り、時には落ちた衝撃で周りのモノを吹き飛ばしたり。それ自体が碌でもないことなのだが、これから更に良くないことが起きるという確信があった。

 七支刀は走り出す。一刻も早くあの花をなんとかしないといけない。

 

 町から飛び出し暫くしたところで、レギオンの襲撃が始まった。それだけではなく、今まで見ることのなかった異族や魔獣まで姿を見せ始めた。

 

「今構っている時間はありません!」

 

 迷わず神器を抜き巨大化させ、更に信義に触れ魔術を唱える。凍っていく地面をそのまま走り抜けながら、レギオンを中心に薙ぎ払っていく。

 為す術もなく破壊されていくレギオン。道中にある卵もついでに破壊し、進んでいく。しかし走って進むのにも限界はある。しかも戦いながらとなれば、どうしても時間はかかるし体力も奪われていくだけだ。

 ついに敵の壁に阻まれてしまう。このままでは駄目だ。神器の力を解放しないと、もう進めない……

 そう考え神器を構え直した矢先に、一本の矢が光を纏いながら壁に穴を開けた。七支刀の前方から放たれた矢は通り過ぎた後に爆発を起こし、後方の波を打ち崩す。

 突然のことではあったが、最大のチャンスだと認識した七支刀は出力を絞りながらも、穴を広げるように風を放った。勢いよく穴は広がっていき、遮るもののなくなった前方に人影が見える。

 そちらに走っていくと、眼帯を付けた少女……キル姫の姿がそこにあった。

 

「貴方は?」

「僕はイチイバルだ。そういう君は……生きていたんだね」

 

 神器を見つめながらイチイバルは返答をする。余りに特徴的な形状をしているからこそ、知っている人が見れば一目で分かるのだろう。

 

「君のことはギャラルから聞いている」

「やはり生きているのですね!」

 

 イチイバルは再び弓、神器イチイバルを構え直し攻撃をしながら会話を続ける。

 

「君がまだ戦えるのなら、あの花に向かってほしい。そして、そのギャラルを止めてほしいんだ」

「……?」

 

 どういうことなのだろうか。考えながらも、とりあえず再び距離を詰めてきた異族を一閃する。

 

「説明する時間はない。この先にはミュルグレス……金髪で背の小さいキル姫も向かっている。合流して、彼女の暴走を止めてほしいんだ」

「暴走?まさか……」

「ああいや、その暴走ではないんだが。とにかくあの花を破壊されてはいけないんだ。見た目こそ変わっているけれど本質は同じ。あれが世界の礎であることに違いはない」

 

 そう語るイチイバルの瞳を見る。そこには明確な意志があった。決して騙し陥れようとするような考えでもなければ、誰かに操られて出る言葉でもない。

 一体何が起こっているのか、あいも変わらず分からないがその言葉を信じる気持ちだけはあった。

 信義の魔法を改めて発動し、足止めだけして走り出そうとして止まる。

 

「イチイバル様は?」

 

 イチイバルは振り返ることなく答える。

 

「僕には進む資格なんてないよ」

 

 反対に敵の群れ向かって走り出した。矢を連射し雑魚を蹴散らして、更にその奥から迫る新たなレッドアイを足止めするために。

 見送ってから七支刀は走り出す。途中で赤い髪のキル姫が倒れているのを発見するが、身体に風穴が開けられて絶命している。このキル姫とイチイバルが戦ったのだろうか。

 名前も知らないキル姫へと少しだけ黙祷してから、すぐに走り出す。もっとしっかり弔いたいが、それでは折角足止めのために残ってくれたイチイバルの行為を台無しにするだけだろう。

 そこから暫くレギオンの死体が続き、更に進んだ先で戦闘の音。雷が轟き、敵の群れが吹き飛ばされていく。その中心に立つのは、金髪のキル姫。

 そのキル姫はすぐに七支刀の方に気が付いて、見つめる。いち、に、さん……と神器を見ながら呟く。

 

「あー、なるほど。アンタが七支刀だね」

「はい。貴方はミュルグレス様ですね」

「様か。ふふ、くるしゅうないな」

 

 ニヤリと笑ってから、すぐに真剣な表情に戻る。じぃ……と七支刀の目を見つめてから、質問をした。

 

「あんたはギャラルと一緒に旅してたんだろ?もし戦うことになっても大丈夫?」

「……ギャラル様は、今そんな状態なのですか?」

「うーん。まあユグドラシルを壊す気なんだろうし、止めようとしたらそういうこともあり得るかなって話」

「どうしてギャラル様はそんなことを?」

 

 うえっと変な声を出してから、苦笑いをする。そこは説明してあげなよ、と呟いてから話し始めた。

 

「あの花が全ての元凶だって思い込まされてるんだよ。ミュルもさっきまではそう思ってたしね。あんたもそう思ったからこっちに来たんじゃない?」

「そうですね。違うのですか?」

「さあ?でも破壊はマズいんだよね。ラグナロク大陸ごと破壊しちゃう。……ってのがイチイバルの推測。いや〜神ってやつは怖いね」

 

 神。ミッドガルドで何度も聞いた単語。なるほど、神が全ての元凶というのはなんとなく納得がいく。あのおぞましい"敵"を呼び出し破壊と狂気を巻き起こしたあの神ならば、人を塩に変え未知の化け物に襲わせるということをしていても、そう不思議ではない。理由は全く想像がつかないが。

 

「そんじゃ、とっとと追い付いて……」

 

 話し終わったミュルは改めて花を見て、いざ進もうとした直後だった。鎖が周囲を包むように大量に現れて閉鎖空間に変えてしまった。

 青い鎖を見たミュルは露骨に嫌な顔を浮かべる。七支刀はいまいちピンと来なかったものの、ミュルは知っている。この鎖のせいで散々苦労させられたことを覚えている。

 二人のキル姫が歩いてくる。浮遊する台座に座ったキル姫と、鎖を操っている方のキル姫。赤い目をした二人のキル姫。

 

「フリ何とかとグレイってやつか。最悪じゃん」

 

 フリスズキャールブとグレイニプル、そこにギャラルホルンも加わった三人へと、どれ程の苦戦を強いられたか。神令(コマンド)キラーズに、擬彩(インテグラル)キラーズ、大罪の力を得たセブンスキラーズに、誓約を得たキラーズ、あと誰がいただろうか。とにかくとてつもない戦力でぶつかり合って、それでも苦戦したあの三人の内二人がここにいる。

 まあギャラルがいないし、暴走させられたキラーズ達の攻撃もない。あの時に比べたらマシだろうが。

 考えながらも神器を構え直す。会話して退いてくれるとは思えない。

 

「ギャラル、守ル、守ル守ル守ル守ル守ルマモルマモルマモルマモル……」

「手出シ、サセヌ」

 

 七支刀は首を傾げる。この雰囲気、何処かで?

 そうだ、帝国兵だ。これは暴走というより、神の洗脳なのでは?

 暴走ではなく赤目の病である。その事実に気が付いたものの、それは何の解決策を生まない。むしろ尚更話が通じる可能性がなくなっていくばかりだ。

 七支刀も神器を構える。進むために。そして世界を救うために。

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