ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第4節 曖昧ナ希望/凍雨

 二人は迷わず走り出す。しかしそれを見越したグレイニプルの鎖は、行き場を更に封じる様に四方八方から伸びて二人を穿とうとする。

 七支刀は神器を巨大化させ思いっきり振り回しその全てを弾こうとするが、大振りで分かりやすい動きは簡単に読まれ隙を狙って鎖は飛んでくる。そこにカバーする形でミュルが弾くが、更にそのミュルを狙いキャールブは兵を呼び出し襲わせる。

 しかしミュルは違和感を覚える。運がいいのか上手いことその兵さえも斬り伏せることには成功したが、迫る時間を許さぬまま鎖が七支刀を狙う。

 一度なら幸運だろう。二度も起きれば奇跡かもしれない。そしてそれが三度続いて確信する。わざとギリギリで対処出来るように手加減されている。つまり、あの二人がしたいのはあくまで足止めなのだろう。

 随分舐められたものだが、その満身は突破するための布石になるだろう。防御を続けながらニヤリと小さな笑みを浮かべる。

 同じく七支刀も、これがあくまで足止めでしかないということを察する。こちらはミッドガルドでの経験が彼女の感覚を鋭くしたのだ。理屈は分からないが、戦い方がなんとなく足止めされている気がする、程度のもの。

 ミュルの神器が雷を纏いながら、歯が激しく回り始める。防御ではなく攻撃に移ろうとしたことを理解した七支刀は同時に信義に触れて周囲の空間を凍結。僅かながらも止まった鎖を束を無視しミュルは最速でグレイニプルへ接近する。

 鎖で空間を作り出しその上に七支刀への攻撃に使っているためか防御出来ずに食らいそうになるが、台座が横から飛んできてミュルの身体を突き飛ばす。

 吹っ飛ばされたミュルは鎖の壁に激突し、更にそこから伸びた鎖が神器を持つ右手の手首に巻き付く。

 

「しまっ……た……!」

 

 グレイニプル。フェンリルを封じたとされるその鎖は、ただ物理的な拘束をするものではない。

 突如ミュルを襲う強烈な眠気に、立ち上がる力が奪われる。同時に氷を打ち破り再び鎖が七支刀に襲いかかる。かのフェンリルを封じるためのその鎖は氷の力も秘めている。むしろ一時的にでも凍結させられたのが奇跡といっても過言ではない。

 今の立ち回りでは先程と同様に封じ込められてしまう。考えた七支刀は一度神器を元に戻し信義を抜く。二刀流で戦ったことなどまともにないが、アリオーシュだってそうやって戦っていたのだ。試す価値はあるはず。

 更に神器を元に戻したお陰で多少身軽になったこともあり、避けながら鎖を弾き、兵も一掃する。

 

「……つよすぎ、でしょ」

 

 眠気で閉じてしまいそうな目を何とか開け、七支刀の暴れっぷりを見る。巨大化させた神器による一撃必殺と、二刀による素早い身のこなし。更に聞いた話なら呪術まで使える。

 驚いているミュルへと七支刀は舞いながら接近していく。それを止めようと再び台座が放たれるが、七支刀はやや大げさに信義を構える。また氷の魔法が放たれると警戒し止まった台座から振り向き、ミュルに向かって氷を放った。いや、正確にはミュルを繋いでいる鎖へと。

 そして凍った鎖を神器で叩き斬った。敵を凍らせて、氷ごと砕く。エンヴィのやっていた戦い方の一つ。

 鎖から解放され目を覚ましたミュルは、一つ思い浮かぶ。いや、捕まっている時から考えていたが眠くて思考が纏まっていなかったのだが。

 

「七!あっちを凍らせろ!」

「七!?」

 

 まさかの呼び方に驚きながらもミュルの示した方向を見る。それは二人がいる反対側の鎖の壁。

 瞬時にミュルの作戦を理解する。そちらの方向へ走り出した二人に対応しきれなかったのが、追撃の甘い鎖を掻い潜りながら魔法を発動する。

 

「これが最後です!この空間の魔素が足りません!」

「へーきへーき!」

 

 全力で神器を励起させたミュルが、凍った鎖へと斬りかかる。流石に一撃では砕けないが、歯は回り続け少しずつ削っていく。

 更に七支刀も魔法を唱えると同時に神器の力を貯めていた。真っ先にミュルを止めようと襲いかかる鎖が触れる前に、風が吹き飛ばす。更にキャールブは台座に立ち台座ごと蹴ろうと飛んでくるが、途中でコントロールを失い転落する。七支刀の張った呪術がキャールブの身体を蝕んだのだ。

 七支刀が味方で良かったと心底安心しながらも、ついにミュルは壁を破壊する。

 

「行け!」

「はい!」

 

 空いた穴から七支刀は飛び出す。そしてミュルが続いて……

 

「え?」

 

 いや、続かなかった。ミュルは先に飛び出した七支刀を見つめていた。

 

「それだけ強ければギャラルのことも止められるでしょ」

「なに、言って……」

 

 抗議の声を上げようとして、何故ミュルが付いてこないか、その理由を理解してしまう。

 例えば二人の足止めが必要とか、二人共出たら鎖を貼り直されてしまうのではとか、そんなことではなく。

 

「任せたわよ」

 

 真紅に染まり始めている目で見送るミュルの姿は、鎖の中へと消えて行った。

 手を伸ばそうとして、やめる。ここで手を伸ばしてしまえば、ミュルを助けようとすれば、ミュルの覚悟を無駄にすることになる。それだけは駄目だ。

 鎖のドームを迂回しながら走る。金属が弾き合う音が響く。振り返るな。希望を託されたのだ。

 共に戦える筈の仲間を置いていき進んでいく光景は、まるであの"敵"との戦いの時のようだと苦笑する。あの時は自分も残る側になったが、今度は違う。進むことがこれほど辛いことだとは想像も付かなかった。

 

「待っていてください、ギャラル様……!」

 

 だから、きっと。置いていってしまった自分が生きているという事実は、少なくともギャラルにとっての救いにはなる。

 そう信じてただひたすらに走る。

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