七支刀は走りながらも、敵がいなさすぎることを感じていた。戦いの跡だけが残されていることからして、左記にいるだろうギャラルが戦ったのだと想像は出来るが、あまりにも多い。彼女一人でここまで戦えるものなのだろうか。
ただその疑問も会えば解決するだろうと足を急ぐ。そうして花が近づいてきた所で、新たな敵が舞い降りた。
「王座……私ノ……」
「また、厄介な相手ですね」
赤に染まった目で、それは七支刀を捉える。ゆっくりと着地し、弓を構える。
フェイルノート。必中の弓。そして、ルシファーと誓約した存在。直接的な面識はあまりないものの、
もはや説得など通じないだろうと七支刀も神器を構える。
「もしまだ意識があるのなら、そこを退いていただけますか」
「王座ハ渡サナイ!」
フェイルノートが神器を向けると、引き絞ることなく勝手に矢が放たれる。悪魔の力を込められたその一撃をまともに食らうのはよくないと思い躱そうとするが、まるで最初から当たることが決まっていたかのように矢は七支刀へと吸い込まれていく。
躱すことはできないと諦め弾くが、感触が重い。レギオンの拳とは比べ物にならない一撃。
しかしフェイルノートの本気はこの程度ではない筈だ。これ以上攻撃を重ねられない内に、フェイルノートへ攻撃しなければマズいと思い肉薄しようとする。
しかしフェイルノートは七支刀の刃が届く前に飛び上がり、再びの攻撃。空いている左手を空にかざすと、闇の力が込められた玉が六つ生成され、それら全てが矢へと変わる。先程放たれた矢とは比べ物にならない圧力を感じる。
七支刀は咄嗟に神器を巨大化させ、来る衝撃に備えるためにどっしりと構える。フェイルノートが神器を再び構えると同時に、六つの矢は放たれる。それらは束ねられ巨大な一つの矢となり七支刀を襲う。
とてつもない衝撃が七支刀を襲う。腕が折れてしまうのではないかという衝撃に身を悶えさせ、更に拡散した闇がそんな七支刀を取り囲むように周囲に集まる。
腕の痛みに堪えながらも闇を振り払うと、再び新たな矢を番えていた。
このままだと防戦一方で、削り取られるだけ。信義を構え次が放たれる前に走り始める。大きく跳躍し、浮遊しているフェイルノートに斬りかかろうとするが簡単に距離を取られ躱される。しかしそれは読んだ上での一撃。宙を斬った信義から氷が放たれ、フェイルノートの神器を凍らせる。
「コイツッ!?」
本来七支刀の持っていない能力だったからか、完全に不意をつかれたフェイルノートは動揺した様子を見せる。
そのまま七支刀は地面へと落下するが、今度は励起させていた神器を解放する。回転する刀身は風を巻き込み巨大なエネルギーへと変え、嵐を引き起こす。
次の一手をどう打つべきか悩んでいたフェイルノートへと、嵐が向けられる。
神器の起こした攻撃に飲み込まれたフェイルノートだったが、七支刀はいまいち手応えを感じなかった。それどころか嫌な予感。
嵐が晴れると、軽症のフェイルノートがいた。しかし問題は、神器の氷が解けてしまっていること。
攻撃を食らいそうになったフェイルノートは咄嗟に凍った神器を盾にしたのだ。幾ら七支刀の放った技が強力とはいえある程度距離があるから大したことはないと踏んだ彼女は、神器の氷を解くために利用したのだ。
「そんな……!」
フェイルノートは確かに強力な力を持っているが、性質としては後方に立ち司令を送る戦略家としての才もある。
実戦で研ぎ澄ませた刃を持つ七支刀とて、フェイルノートの相手するには分が悪い。
絶望する七支刀へ向けて、フェイルノートは再び神器を構える。神器へと魔力が集まっていき、一際大きな魔弓へと姿を変える。
しかし七支刀はすぐに絶望を振り払う。"敵"と戦った時に比べればまだ希望はある。二刀を構え、七支刀は走り出した。