ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第5節 虚像

 翌日から、魔素をどうすべきかの話は動き出した。まず最初に出た案は魔素について研究を進め神からの干渉を断つ手段を見つける。しかしこれは今いる面子で出来るものではない。もしこの手段を取るのなら、人々の手を借りないと駄目だろう。

 一つは魔素そのものを消してしまうという案。別の物質に変えてしまうか、単純に移動させるか。どうするにしても簡単に行くものではないだろう。

 この二つの案、両方を採用し行動を始めた。

 イチイバルとロジェスティラの二人は研究する方へ、ミュルグレスとギャラルホルンは無くす方法へ舵を切り街で手を借りることにした。

 カイムとアンヘルの二人にはレギオン狩りを主軸に行動してもらうことになった。この二人は聞き込みを始め交流をするにはイマイチ向いてないし、何よりカイムは戦っていた方が満足しているように見える。

 

「……で、な〜んにも手掛かりないじゃん」

 

 休憩しているミュルが愚痴をこぼす。魔素を消すと言っているが、そもそも魔素なんて目に見えるものでもない。掴むことさえできないのだ。しかも世界中で白塩化症候群が起きているということは、その目に見えない魔素も同じく世界中に広がっているということ。

 世界中にある目に見えないものを無くす。言うのは簡単だがそう思うようには出来ることではない。

 当然ミュルとギャラルではいい案は出なかったので、街を散策しながら色々聞いてみるが、都合のいい話は出てこない。

 

「いっそ世界中に吹く風とか起こしてさ、全部吹き飛ばせればいいのに」

「魔素以外も大変なことになりそうね」

 

 イチイバルのチームが少しでも進展があればいいなと思いつつ、ミュル達は宿に向かう。

 毎回帰るのも大変だからと宿を取っているので、帰宅ではなく宿。街を救ってくれたということで割引までしてもらっている。

 ……そこまでして無料とまで言えない今の状況の厳しさも、理解せざるを得ないが。

 

「お帰り。進展は……なさそうだね」

 

 先に帰っていたイチイバルが、二人の顔を見て察する。

 

「そういうアンタこそどうなのよ?」

「流石に一日じゃどうしよもないよ。まだ人も集めてる段階だよ」

 

 まあそうだろうなと特に驚くことなくミュルは椅子に座る。ギャラルもそこまでは期待していなかったが、結局進展が何もないことへの焦りを感じていた。

 それからカイムとアンヘルも宿に来たが、野宿する旨を告げて出て行こうとする。

 

「止めるな。此奴にとっては十分すぎる休息だっただけぞ」

「いや、君達にはレギオンへの対応を任せてしまっているだ。今一番休むべきは君達だ」

 

 イチイバルは止めようとするが、ギャラルはしない。なぜわざわざ野宿をしようとするのか、その理由が想像出来てしまうからだ。

 結局のところ、カイムは戦いから抜け出せていないのだ。

 

「ギャラルもそうしようかしら」

「やめておけ。お主はカイムとは違うだろう?」

「それは、そうだけど」

 

 何処か拒絶されたようで、悲しい。ただアンヘルが言いたいのは、カイムのように狂ってはないだろうということなのだろうが、それでも納得はしづらかった。

 

「……まあ、君達がそれで良いのならこれ以上は止めないよ」

 

 少し考えるようにしてから、イチイバルも諦める。

 それからロジェも帰ってくる。どうやら買い物をしてきたようだ。料理を作っている時間はないからと出来合いのものを買い溜めしてきたのだ。

 それからお互い大した会話もすることもなく各々自由に過ごし、眠りに付く。イチイバルは寝るまでの間、もう一度パラケルススのメモを読み返していたが、特に何も発見はなかったのか難しい顔をしているばかりだった。

 

 深夜。月明かりも塩に遮られ暗い。吹く風も冷たく肌を撫でる。

 

「何よ、こんな時間に起こしてさ」

 

 ミュルがぶーたれる。無理矢理起こされた挙げ句に外に連れ出されたらそうもなるだろう。

 

「大事な話、ですよね?」

 

 同じく起こされたロジェも言う。ミュルのように起こされたことへの怒りは特にないが、それはそれとして一つ疑問があった。

 

「ギャラルさんも起こさなくていいんですか?」

 

 そう、この場にいるのは三人だけである。二人を起こしてきたイチイバルへ、質問を投げかける。

 

「いや、あまり彼女には聞かせたい話ではなくてね」

「へ〜、内緒話?」

 

 深夜に三人だけで、それもわざわざ外に出て話そうと言うのだ。これは相当な内緒話だとミュルはニヤニヤする。

 

「魔素を無力化、或いは除外する。もしこれが後者になった時のことで一つ気になっていてね」

「うーん?まだ何にも分かってないし、気にすることなくない?」

「……アンヘル。彼女が魔素を出している可能性がある」

 

 静かになる。イチイバルが一体何を言いたいのか二人は考える。風の音だけが辺りにあった。

 

「もし、あの二人を異世界に返せるのならそれで問題ない。けれど、それが出来ないのなら」

「……まさか」

 

 ロジェが先に答えに辿り着く。どうしてこの場にギャラルがいないのかも含めて。

 

「そう、二人を殺さないといけないかもしれないんだ」

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