ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第7節 交わらぬ道を行け

「まっっったくなんでこうなるんだか」

 

 ミュルは怒っていた。馬車に揺らされながらも、シュンとしているイチイバルへと怒りを向けていた。

 

「本当にすまない……」

「そうね。カステラ一ヶ月分で考えてあげる。もちろんイチイバルの自腹で」

 

 行方不明になった三人を探すべく、商隊の使っている馬車へと乗せてもらっていた。既に幾つかの街を回り、巨大な化け物がユグドラシルの方角へと向かったという情報を得ていた。

 その化け物とやらはアンヘルではないかと考え、可能な限り商隊にユグドラシルの近くへと連れて行ってもらっている。代わりに護衛はするという条件で、既にレギオンとは何度も交戦している。

 

「いや、お金とか以前にそんなにカステラは売ってないよ」

「じゃあ平和になってからでいいわよ」

「はは……」

 

 何だかんだ言って仲間思いなミュルの様子に、イチイバルは苦笑いする。

 本当ならロジェも連れてきたかったのだが、研究の方に集中してもらいたくて残ってもらったのだ。なので、二人きりしかいない状態でカイム達に勝てるのか、いやどう勝つのかを既に考えていた。あの状況でわざわざ姿をくらませたのだ、素直に戻ってくるとは思えない。

 

 話している間に次の街へと辿り着いた。ユグドラシルから最も近い街。二人は神器を持ち、歩き始める。体力も温存したいのであくまで歩きだ。

 念の為その街でも聞き込みをするが、やはりアンヘルらしき姿を見ている者がいた。しかし、ユグドラシルまで行って何をするつもりなのだろうかと考えるが、そこの答えは出ない。

 最低限の荷物と共にユグドラシルへと歩みを進める。彼らが何をしでかすのか分かったものではない。歩みはわずかに早くなるが、ミュルはのんびりした様子。

 

「……レギオン、全然いないわね」

「確かにそうだね。奴らが興味あるのはあくまで人間だけということか?」

 

 本当にそうだろうか。ギャラルとアンヘルの言葉を信じるなら、神は世界を作り変えるつもりだったようだ。このラグナロク大陸で同じことを望むのなら、ユグドラシルを狙うのが一番だ。もしかすれば違う世界だから違うことを狙っている可能性もあるが、やはり目的は分からない。

 分からないことが多すぎる。なんというか、不自然だ。

 

「何よ、そんな難しい顔しちゃってさ」

「いや、なんだろうね。この異変が始まってから、あまりにも分からないが多すぎるなと思ってね」

「そりゃそーでしょ。異世界の神が侵略してきたなんて簡単には分からないわよ」

 

 確かに中々分からないことかもしれない。けれど、パラケルススはその可能性自体には辿り着いていたのだ。やはり、何かがおかしい。

 

「……神は、どうやって僕らを操ろうとしているんだ?」

「はあ?それはロジェが調べているんじゃないの?」

「………」

 

 もしかして、僕らも洗脳の影響から逃れられていないのでは?

 ぐっとその言葉を飲み込む。それこそ何の確証もない考えだ。その確証のない考えを話してしまったからこそこんなことになっているのだ。それは落ち着いてから考えて言えばいい。

 

「待って、あれ!」

「ん?……ああ、間違いないね」

 

 考え込んでいたからこそ気がつくのに遅れた。ミュルが言って意識を戻したからこそ、だいぶ先にいるそれに気が付いた。

 赤いドラゴンがユグドラシルの前に立っている。あの姿は間違いない、アンヘルだ。しかし見ているだけだ。今すぐに何か行動を起こす様子もない。

 少しだけ安堵してから、二人共小走りになる。近づいていくと、アンヘルの側にギャラルとカイムの二人がいることも確認できる。

 

「来たようだぞ」

「思ったより早かったわね」

 

 三人が振り返る。しかし三人の目には、明らかな敵意があった。

 

「殺しに来たのかしら?世界を救うために。コマンドキラーズの貴方達にはお似合いよね」

「待ってくれ、僕らだってそんなことしたいとは思ってないんだ。だから今だって別の方法を」

「必要ならやるんでしょ?」

 

 イチイバルは押し黙る。そうだ、その言葉を否定することはできない。

 

「ていうかさ〜、なんでこんなとこいるの?逃げるならもっと

目立たないとこあるでしょ」

「ぬひひ、それなら簡単よ。……ユグドラシル、ぶっ壊しちゃおうと思っただけよ」

「はあ?」

「二人のこと否定する世界なんて、終わってしまえばいいのよ。ね?」

「我らはこの世界に愛着などない。ギャラルが望むのであれば拒むまい」

 

 ギャラルは笑みを浮かべたまま月光と闇を構える。カイムもカイムの剣を抜き、アンヘルもイチイバル達へと立ち塞がる。

 

「これ、ちょっと……」

 

 ミュルもまた冷や汗を流しながら神器ミュルグレスを構える。分かる、彼らは話してどうにかなる雰囲気ではない。

 イチイバルも静かに神器イチイバルを手に取る。ああそうだ、彼らがこの世界を傷つけるのなら、手加減する理由はない。ない、筈だ。

 

「伝承に頼らねば力も持てぬおなごが、我に敵うと思うなよ?」

 

 ……イチイバルは一つ、明確に違和感を覚える。カイムが笑っていない。真剣な表情で剣を握っている。レギオンと戦うときはあれだけ楽しそうにしていた彼が。

 何だ?何が理由だ?アンヘルはむしろ何処か楽しそうに吠えているのに、何故彼は。

 

「いや〜、これはちょっとまずいんじゃない?」

「馬車の中でも言っただろう。カイムとアンヘルは強いが、同時に弱点だ。やるよ」

「は〜いはい」

 

 ギャラルの月光と闇に炎が纏われ、ミュルが神器が神器を起動し雷を纏い歯が勢いよく回り始める。イチイバルが光を得た矢を番える。

 そして、カイムとミュルが走り始めた。

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