ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第3節 進め

「大丈夫ですか?」

「……まあ、なんとか」

 

 エンヴィ、もといロンギヌスが目を覚ます。近くで見守っている七支刀とギャラル、更に見覚えのない女性に気が付く。

 身体を起こす。身体中に包帯だらけだ。幸い深いところに入った傷は少なかったようで、多少痛みは残っているがその程度。

 

「しかし、生きていたとはな。あのおぞましい化物共をどう掻い潜ったのだ」

「その声、まさかアンヘルですか?」

「ああ。違和感あるだろう?」

 

 そう言いながら背中の翼をバサバサさせる。確かに違和感は凄い。

 

「でも、本当に無事で良かったわ」

「ギャラルも無事だったんですね。それより、ここは?」

 

 ロンギヌスが改めて辺りを見渡す。こうして手当され寝かせていたのだから安全地帯なのだろうが、それはそれとしてずっと休んでいるわけにもいかない。

 

「イチイバル達の家なんだけど、言っても分からないわね?」

「まあ、そうですね」

 

 聞いたことない名前だ。ただ他にも協力者がいるのならありがたいばかりだ。

 

 ギャラルの案内でみんなでリビングへ向かう。元コマンドキラーズの三人が改めてロンギヌスと顔を合わすことになる。

 手当を手伝ったミュルはともかく、イチイバルとロジェはロンギヌスを見るのは初めてだ。

 

「君がエンヴィだね?」

「ええ。出来ればその名前で呼んでほしくはありませんが」

 

 ロンギヌスは少しだけ嫌そうな顔をする。とはいえ本来ラグナロク大陸にいるであろうロンギヌスも探せばいるだろうし、紛らわしいので区別のために呼ばれるのは仕方ないと諦める。

 

「でも、見たところロンギヌスさんと変わらないですよね?少し雰囲気は違いますが」

「……まあ、実際今の自分はただのロンギヌスですから」

 

 そこまで言って、同じくリビングで待っていたのであろうカイムの視線に気が付く。まあアンヘルがいるならいるのだろうと思っていたが、なるほどやはり三人は同時にこちらの世界に来たのだろうと理解する。

 しかし機嫌はあまりよくなさそうだ。まあ、カイムは七支刀のことを嫌っていたし、それが理由だろう。

 

「悪魔の血が抜けている。確かに君はもうブラックキラーズではないのだろうね」

「ああ、パラケルススですか」

 

 何やらコップにヤバそうな色の液体を注いでいたパラケルススが、ロンギヌスを見据える。

 

「悪魔の血が?……何かあったの?」

 

 ギャラルが心配そうな様子でロンギヌスの顔を覗く。君も人の心配している場合ではなかったと思うけどねと呟くイチイバルだったが、無視される。

 無視されて半目になっているイチイバルをロジェが宥めながら、パラケルススに聞く。

 

「悪魔の血ですか?」

「ああ、エンヴィという名には聞き覚えがあるよ。三国が発展するよりも昔の、天上での争い。その時に現れた神側のキル姫、そうだったね」

「そうですね。私達ブラックキラーズは、悪魔の血を取り込むことで力を増したのです。ただ、その力も使い切ったみたいです」

「使い切れるものなのか?」

「現になくなっているので、そうなのでしょう」

 

 ロンギヌスが言うには、異世界での"敵"との戦いの最中、カイム達を七支刀と共に見送った後の最後の抵抗、持てる力全てを使った一撃を使ったのを最後に悪魔の力を感じなくなったという。

 ついでに黒葬槍もなくしてしまったので、新しい武器も探していたようだ。

 

「なるほど、何故槍を取ってきたのかと思っていたが自分用か」

 

 カイムが兵士長の聖槍を取り出す。もちろんカイムにも扱えるが、これは自分用だったらしい。

 特に愛着もないので、カイムはひょいっと槍を投げ渡す。ロンギヌスはそれを受け取るが、別に今すぐ使う訳でもないので適当に立てかけた。

 

「それより、そろそろ本題に入ろうじゃないか」

「それは、ギャラルも気になってたわ。……天使の教会があるという話」

「ああ、それですか。別に難しい話ではないですよ」

 

 ロンギヌスは思い出す。そもそもラグナロク教会が天使の教会という名に置き換えられたのは、まだ自分が異世界へと行く前の話だ。

 

「グリード、グラトニー、エンヴィ。この世界が混乱に陥っている隙に三人のブラックキラーズを呼び出し、ラグナロク教会を制圧。それから最も影響力のあるグリードを司教に据えて、こちらの世界の侵略の準備をしていただけですよ」

 

 ロンギヌスがさらっと説明したが、パラケルスス以外がキョトン顔になっていることに気が付く。

 理由は単純明快。知らない名前がさらっと出てきたからである。

 

「待って、司教はティルフィングじゃないのか?パラケルススはそう言っていたが……」

 

 予めパラケルススから話を聞いてのもあって、若干混乱しながらイチイバルが質問をする。肝心のパラケルススは一人で勝手に納得している様子だったが。

 

「ああ、なるほど。そのティルフィングがグリードというだけですよ。そしてグラトニーはパラシュ。説明していませんでしたね」

 

 それを聞いたギャラルから、ふっと力が抜けた。カイムが慌ててギャラルの身体を支える。

 七支刀もそこまでのリアクションはしていないが、安心してほっとしていた。あのパラシュが裏切って天使の教会についたのではなく、あくまで別人。

 

「でもさ〜、そっちの世界で天使の教会は戦争してたんでしょ?こっちでそういう気配ないんだけど」

「まあ、手段が違いますから。この世界で行っていることが何か考えれば、ある程度想像は付くと思いますが」

「……まったく、酷いことをするもだね」

 

 これまた一人だけ察したパラケルススが呟く。少し遅れてアンヘルも想像がついた。他の面子はピンと来なかったが。

 

「とにかく、私達が第一にすることは天使の教会を倒すことです。皆にも協力して欲しいです」

 

 カイムがふっと笑う。やることが単純になった。天使の教会と、それに従うやつらを皆殺しにすればいい。至極単純なこと。

 カイムが殺戮へと思いを馳せていることはアンヘルにしか伝わらないが、それは別としてその意見に反対するものはいなかった。

 

「わたくしはここに残らせてもらうよ。下手に近づいて洗脳されたりしたら話にならないからね。何より、どうしてここなら神の干渉が減るのか、その理由も掴めそうだ」

「ならばパラケルススは残って、残り全員で攻めることになるか。ふん、今度こそ潰してやろうぞ」

 

 天使の教会、忌々しいその名を噛み締めながらアンヘルが言う。それがこの世界を救うための一歩となることを信じて。

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