ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第7節 人のなき所

 無人となった村から出発したカイム達だったが、そこからの移動の間は特に襲撃らしい襲撃もなかった。

 そして、教会の近くへと辿り着く。もちろん教会が何もない原っぱの上にあるということはなく、街の中に立っている。そこを街と言えるのなら、だが。

 

「まるで帝都のようだな……?」

 

 家屋のような建造物が立ち並んでいる。しかしこの世界で一般的に見られる建築様式とは根本的に異なるものにも見える。

 少なくともその街の外観は、アンヘルが呟いたように帝都のそれにそっくりである。

 

「人の気配がしないわ」

「この街に入った後はどうなるか、分かったものではないね」

 

 イチイバルとギャラルがそれぞれ目と耳を凝らしてみるが、人々と営みが感じられない。確かにたった今も人の気配はないのだが、そもそもここは街として機能していたのだろうか。

 それぞれ警戒しながらも街へと踏み込む、それと同時だった。カイムは近くに現れた気配へと反射的に剣を振る。その刃で裂かれたのは、レギオンとはまた違う敵の姿。

 

「異族です!でも何処から!?」

 

 ロジェが見つけた異族へと炎を飛ばしながら声を上げる。気がつけば異族の群れが取り囲む形で現れていた。

 決して異族はそこまで強くはないものの、何かが近づいてくる気配などなかった。となると考えられるのは、瞬間移動でもしてきたか?

 その答えはロンギヌスが真っ先に出していた。斧を投擲しようとした異族へと飛びかかり貫きながら叫ぶ。

 

「裏側への繋がる空間の裂け目をポータルにしています!どうやってなのかは分かりませんが……」

「なるほど。マナナンとマクリル、二人がいる可能性もあるね」

 

 イチイバルが名前を出した二人のキル姫。この世界で唯一自由に裏側へと繋がる空間の裂け目を作り出せるキル姫達だったが、異変が始まってから誰も見つけていないのは、天使の教会に捕まっているからと考えれば不自然なことではない。

 最悪の場合、神がなんらかの手段で二人を自由に操れている可能性まで考慮すべきだろう。

 カイムが走り、新たな敵を殺戮できる喜びに身を任せ古の覇王を振るう。雑魚を蹴散らすのは爽快だが、幾ら殺したところで数が減らないのに気が付く。

 

「ちょっと!?多すぎない!?」

 

 同じく気が付いたミュルが苛立ちと共に声を張り上げる。そもそも異族が何なのかを知った上で相手するのはそこまで気分がいいものではないという点も併せて、苛立ちばかりが募っている。

 

「何故今になって足止めを……?時間なら幾らでもあったはず」

「いや、違うな。小奴らの狙いは戦力の分散だ」

 

 鉄塊を勢いよく振り回し異族を吹き飛ばしながらアンヘルはそう言う。確かに異族の数は多いが、誰かが足止めすれば進むことは容易だ。

 時間稼ぎが目的ならば、もっと教会への行き先を徹底して防いでもいいはずだが、そういう動きは見当たらない。

 

「なら私が残ります。多数への相手なら自身があります!」

「ロジェ一人だけは危ないでしょ。ミュルも残るわよ!」

 

 ならば話が早いと二人が立候補する。イチイバルは二人を置いていくことに躊躇するが、他に反対するものもいないのでそれで進むことにする。

 ロジェが派手に魔法を放つ。巨大な火球が空へ放たれ、それが弾け飛び火の雨と化す。物量を物量で制している間に、全員が駆け抜ける。

 そうして異族の包囲網を掻い潜るが、敵の襲撃はそれだけでは終わらない。教会へ移動している間に、広場へと辿り着く。街の中心なのか、やけに広い。滅茶苦茶怪しいので警戒を強め辺りを見ていると、やはり襲撃。

 レギオンが近くの建物から勢いよく飛んで出てくる。しかし一行はそれがレギオンであると認知するのに遅れる。全身が真っ赤に染まっているからだ。

 

「これは、赤い鎧の兵と同じ……!?」

 

 レギオンの拳を神器で受け止めながら、七支刀は驚く。そのレギオンの纏う赤は、間違いなく血の色をしていた。つまりエルフの血を付け対魔術能力を高めたレギオンということだ。

 今までそんなレギオンを見なかった辺り、やはりここには天使の教会の戦力を集結させているのだろう。

 

「信者の成れの果てがこれとは、笑えぬな!」

 

 両手を握りハンマーのように振り下ろしてきたレギオンを真正面から弾き、お返しに腕を斬り飛ばす。しかし感覚が重い。血を纏っているだけでもなさそうだ。

 

「……まさか、天使の教会がしていることは」

「ええ、快くレギオンになってくれる信者を増やし、戦力にしていたのです。先程の村のように」

 

 イチイバルの矢が光を纏い、レギオンの頭部へと放たれる。しかし光は弾かれその力の大半を喪失してしまう。それでも頭に突き刺さり、絶命はさせたが。

 しかし、どれだけの信者がレギオンになったのかは分からないが、全戦力が投入されているとは到底思えない数だ。やはりこれも、戦力の分断を狙った襲撃なのだろう。

 

「……この中で魔術が使えないのは僕と七支刀、ロンギヌスか」

「でも、大丈夫でしょうか。これだけ人手が削られてしまうとグリードに負けたり……」

 

 キッとカイムが七支刀を睨みつける。まさか俺達が負けるなどと思ってないな?と言外に告げている。

 

「すみません、私は進みたいです。二人に任せてもよろしいですか?」

「……」

 

 イチイバルはレギオンの数を見て、二人だけで対応できるか考える。最初の奇襲こそこちらの人数よりも多かったが、増援のペースはそこまででもない。それにこちらの分断が目的ならば、過剰な戦力の投入をしてくる可能性も低い。

 それに、狙撃手の自分と防御が得意な七支刀なら相性も悪くないだろう。

 

「分かった。先に行ってくれ!」

 

 カイムが跳び上がりレギオンの首を刎ねると、反転して教会へと向かい走り出す。それに続くようにギャラルとアンヘルもレギオンを吹き飛ばし、走り出す。

 ついでにロンギヌスが氷の力を解き放ち、こちらを追おうとするレギオンの足止めだけして走り去る。

 まんまと掌の上で踊らされているようで、カイムは不快感に眉を潜める。だが、現状どうしようもないのも事実。カイム達はただ走る。

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