ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第10節 異形ノ末路

 塩の舞う空に、二匹の竜が相対する。

 

「雑魚が、我らに敵うと思うなよ……!」

 

 そう挑発するアンヘルだが、何処か楽しそうでもあった。ギャラルが神器を鳴らす。ラグナロクの始まりを告げる笛は、今この戦いの始まりを告げていた。

 お互い距離を維持しながら火球を撃ち合う。しかしその程度では何方も掠りもしない。カイムとグリードは、竜の背で剣を構える。

 先に仕掛けたのはアンヘルの方だった。急上昇し太陽を背にして、ブラックドラゴン目掛けて炎のブレスを撃ち出す。ブラックドラゴンも同じく炎を吐き反撃を狙う。互いの炎が勢いを打ち消し合い広がっていく。

 しかしブラックドラゴンの方は、炎を吐きながらも少しずつ近づいていた。二匹のドラゴンの炎が止まった瞬間、グリードが構えブラックドラゴンが加速する。しかし、グリードは直感で突撃をやめドラゴンを横に躱させる。

 それは正解だった。強大な魔力の塊がドラゴンのいた場所を通過する。それは教会へと落ちていき、大爆発を引き起こした。

 目を凝らして見れば、アンヘルの背には扉。ギャラルが仕掛けていたのだ。

 更に横に避けて、突撃する勢いが削がれたことも考え一度距離を取り直そうとするブラックドラゴンへ、アンヘルの大魔法が放たれる。無数の炎の弾がドラゴンとグリードを追尾し焼き切ろうとする。

 全速力で逃げ避けようとするドラゴンへ、更に火球の追撃を浴びせながら追撃をする。全て避けきるのは不可能だと諦め、グリードが剣で切り払いながら対処する。

 

「やはり、手強いですね……!」

 

 追ってくるアンヘルへと向けて、グリードは斬撃を連続で放つ。悪魔の血の力を纏わせた斬撃は、漆黒の刃となり撃ち出される。しかしそれさえも、カイムが鉄塊で的確に弾いていく。

 更にブラックドラゴンは急速旋回しアンヘルへと向き直り、近距離でのブレスを撃ち出す。アンヘルもまた前方へ羽ばたき、追っていた身体を無理矢理止めて即座にブレスの反撃を吐く。

 再び空でぶつかり合う炎。しかしそれは本命ではなかった。

 炎の壁を飛び越え、グリードが直接カイムへと攻撃を仕掛ける。上空から落下しながらの一撃を何とか防ぐものの、アンヘルの背という不安定な足場では堪えきれずに、二人共地上へと落ちていく。

 

「カイム!」

 

 アンヘルが叫ぶ。この高さからあの勢いで落ちれば、いくらカイムでも無事では済まないだろう。

 追うようにギャラルも飛び降り、背には誰もいない竜が相対する。アンヘルも心配だったが、ブラックドラゴンはそうはさせないと体当たりをかます。

 しかしカイムも伊達ではない。攻撃を食らう瞬間、僅かに斜め方向へ力を逃していた。そのお陰で錐揉みながら二人は落下していく。

 鍔迫り合いする剣を右手だけで持ち、左腕を伸ばしグリードの胸ぐらを掴む。そして、グリードを叩きつけるようにして地面へと落ちた。

 グリードを盾にしても、落下の衝撃自体がなくなる訳では無い。両腕が痛むが、それでも何とか力を込めて距離を取り直す。

 グリードも立ち上がり、反撃を狙うがギャラルの放った魔力弾がまばらに落ちてくる。直撃を狙ったものではなく、この瞬間の動きを制限するためのものだ。

 空では二匹の竜がぶつかり合っている。この様子ではお互いに、竜の背へと戻るという選択肢はないだろう。

 再び月光と闇へと持ち替えたギャラルが、その切っ先をグリードへ向ける。

 

「もう逃げ場はないわよ」

「……ええ、逃げ場など最初からありません」

 

 グリードが勢いよく地面へと剣を突き刺す。すると、また地面に暗闇が広がっていく。しかし先程とは違い広いこの空間で、あの技を狙ったところで有効打にはならないだろう。

 そう思い、カイムは走り出そうとして止まる。いや、何かが違う。よく見てみれば、暗闇から無数の武器が生えてくる。実体はないのか半透明だが、それでも異様な光景。

 瞬間、グリードが加速した。文字通り一瞬で接近し、神速の連撃を放った。

 カイムは咄嗟に連撃を防ぐが、その時鉄塊が真っ二つに折れた。

 即座に古の覇王へと持ち替え、連撃を放ち切ったグリードの背中へと剣を振る。しかしそこにいたのは残像だったと言わんばかりに、姿がかき消える。

 更にグリードは半透明の剣の一つを引き抜く。青白い刀身を放つそれと、持っている黒葬剣と合わせた二刀流となり、今度はギャラルへと斬りかかった。

 一撃目は防いだが、二撃目が柄を狙って放たれ月光と闇を手放してしまう。更に三撃目が心臓を狙い剣を突き刺そうとするが、ギャラルが即座に飛び退いたことで外れる。直後に神器を掻き鳴らし扉を出現させ、逆に反撃を狙った。

 しかしグリードは、二刀を交差させるように球を斬ると、威力が分散した球が四方に散り明後日の方向で小さな爆発が起きるだけ。

 その直後だった。古の覇王の小さな刀身が、グリードの腹を背中から貫いていた。

 

「くっ……!」

 

 ギャラルの攻撃はあくまでミスディレクション。本命はカイムだったのだ。しかし腹を貫かれた程度で即死するほどやわではない。

 何とかしてカイムへの反撃をしようと、そちらへ視線を向けた瞬間。

 

「はあああああ!!!」

 

 威勢のよい掛け声。しまったと思った時には遅く、グリードの心臓を前から信義が貫いていた。ギャラルはもう一本、剣を隠し持っていたのだ。

 そして二人同時に剣を引き抜く。血を吹き出しながら、グリードはその場に膝を付いた。

 それと同時に、ブラックドラゴンが地上へと墜落する。その上にのしかかるようにアンヘルが降りてきて、咆哮をあげた。最期の抵抗をしようももがくドラゴンは、動かなくなった。

 

「……これでもまだ、足りぬか?」

 

 流石に心臓と腹を貫かれ、抵抗する力は残っていないだろう。その場から動かないグリードへ、アンヘルは問いかける。

 地面が元の色に戻っていく。無数に現れていた武器は闇の中へ溶けていく。

 

「………ふふっ」

 

 小さく笑う。誰にも、グリードが笑った理由は分からない。

 

「これで、天使の教会もおしまいです」

「他のブラックキラーズはおらぬのか」

「いませんよ。神にとって、必要なかったようですから」

 

 ゲホッゲホッと、咳をする。グリードの口から血が吐き出される。心臓を貫かれたのだ、喋るのも辛いはずだ。

 

強欲(グリード)の名前は、貴方がたに、上げましょう。わたし、は……」

 

 ゆっくりとグリードの身体が、自らが作り出した血の池へと落ちる。見開かれた瞳に、もう力はない。

 グリードの呆気ない最期を見つめる三人。そこへ、ぞろぞろと足音が集まってくる。

 みんな怪我はしているが、そこには誰一人欠けずにいた。むしろ、何故か傷だらけのロンギヌスに肩を貸しているグラトニーがいるまである。

 

「勝った、のか……」

 

 イチイバルが、呆然と呟く。はああと大きなため息を吐きながらその場に崩れる七支刀。そんな七支刀の側で同じく脱力するミュルに、イチイバルの元へ小走りするロジェ。

 緊張の糸が切れたのだろう。気絶してしまったロンギヌスが落ちないように支え直すグラトニー。それからゆっくりと地面へと降ろし、ギャラルの元へ歩く。

 

「やっぱり、彼女の説得は叶わなかったようだね」

「グラトニー、よね?……いいの?神の理想は」

「……まあ、エンヴィに感謝することだね」

 

 決して仲間ではなかったが、強欲の業を得るだけの高い理想を描いていたグリードへ、グラトニーは黙祷をする。

 ギャラルは、グリードを刺した時の返り血で紅く染まっている自らの手を見つめていた。

 

 

 天使の教会との戦いは終わったわ。けれど、それが全てを解決したわけじゃない。それでも、間違いなく大きな前進で、一つの区切りだったと思う。

 だから、これから起きることは、また別の話よ。

 

 

 dream of gree[D]

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