そこに現れたのは、封印へと呼び寄せられた呪われた亡霊たちだった
「砂漠の神殿はこの向こうだ。道は自分で作るしかないぞ」
レッドドラゴンの声の示す通り、カイム達の行く手には帝国軍が。倒さねば砂漠の神殿へと辿り着くことはできない。
足止めをする部隊と神殿へ向かう部隊に別れたのか、こちらに向かってくる部隊もいる。これ以上時間を稼がれる訳にはいかない。
カイムとギャラルはそれぞれの炎の魔法を放ち、帝国兵を死体へと変えていく。赤い鎧の兵がいなければ、魔法を防げる兵などいない。足止めもままならぬまま全滅した部隊を横目に、二人は走り続ける。
攻めに向かっていた部隊も、後続の部隊があっという間に全滅させられたことに気がついたのか迎撃の姿勢を取る。
魔素を使いすぎたカイムは魔法ではなく剣で斬り倒しにいく。ギャラルも近づかなければ当たらない魔法なので接近するしかない。カイムが剣を振るたび盾が飛び死体が増え、ギャラルもまた炎で焼きながらも、運良く炎を逃れた兵も突き刺していく。
開かれた道を進み、神殿へ辿り着く二人。無事を確認するためギャラルは封印の陣が光っている場へと足を踏み入れようとする。
「危ない!」
レッドドラゴンの鋭い声に、ギャラルは飛び退く。直後、次々と化け物が現れる。骸骨の頭と腕を持ち、胴体は霊体の呪われし亡霊達だ。
「闇をくみしものよ!我の前から消え失せろ!」
レッドドラゴンの威勢のよい声と共に、カイムが亡霊を斬る為に走り出す。呪われた亡霊、レイスを払わなければ封印が危険だ。
ギャラルも慌ててデボルポポルを握り直し、近くのレイスへと斬りかかる。鎧を斬った時と違い曖昧な感触だが、感触があるのなら効いている筈だ。
カイムの方を見れば、斬り刻まれたレイスが消滅していくのが見える。やはり効くのならばとギャラルも必死に剣を振る。
しかしこちらはたった二人なのに対し、封印に群がるように湧いてくるレイスに取り囲まれてしまう。更にギャラルの耳にはまだ湧いてくる帝国兵の足音。このままでは押し切られてしまう。
それでもカイムは果敢に剣を振り続け、レイスの数を減らしていく。しかしレイスがカイムに抱きつくように腕を振ると、カイムが吹き飛ばされてしまう。即座に立ち上がるがカイムの周りには湧き続けるレイスの群れ。
ギャラルは少し飛び封印の場から離れる。これだけ時間も経てばそろそろ使えるだろうと神器ギャラルホルンを構え直し、魔弾を連射していく。
カイムに道が出来るようにレイスを潰し、それを理解したカイムは群れの中から抜け出し、そのついでに群れを斬り裂いていく。
ようやく湧くのが収まったレイスだが、帝国兵がいなくなった訳ではない。神殿に侵入されないためにも帝国兵を迎撃しに向かう。
「闇に属するが故に愚かなのか?愚かゆえに闇に飲み込まれるのか?いずれにせよ、死ぬがいい」
無尽蔵に湧き出る帝国兵共を一掃すべく、カイムはレッドドラゴンの背に戻る。
魔力がある程度回復し魔弾を使えるようになったギャラルも、レッドドラゴンの妨害をされないように弓兵を狙い撃ちしていく。
その連携を防ぐためか、また赤い鎧の重装兵の部隊が接近してくる。デボルポポルに持ち替えたギャラルは今度こそ奴らを殲滅するために振るう。カイムも援護したいが、カイムまで降りれば重装兵を皆殺しにしている間により大量の兵に囲まれるだろう。そうはならないように赤い鎧の部隊を援護しようとするその他部隊をレッドドラゴンの炎により壊滅させることを優先していく。
関節部や鎧の隙間など、弱点となる部分を集中的に狙い相手の剣をふわりと避けていく。流石に慣れたのか、赤い鎧の重装兵部隊を全滅させることには成功するが、落ち着くと神殿の方向から複数の足音が。
「神殿の方向に帝国兵がいるわ!」
「こやつら全て陽動か?癪な真似をする!」
もう一度神殿へ戻る二人だが、そこにいたのは指揮官部隊と、破壊された封印だった。
それでもカイムは止まらず、その部隊も斬り刻んでいく。目的を果たし油断していたのか、そこまでの抵抗もなくあっさりと死体になった。
だが、その部隊をどれだけ殺したところで封印は戻らない。
「すでにここは落ちた。一旦女神の元へ戻るがよい」
神殿の防衛に失敗した二人は、レッドドラゴンの背に戻りこの場を離脱した。
上空、ギャラルが申し訳無さそうに口を開く。
「ごめんなさい、カイム。……封印を守れなかった」
「お主の謝ることではなかろうて。我らもいたのだ」
「けれど、封印が破られればフリアエの負担も増すでしょ?カイムのためとか偉そうなこと言っておいて、何も出来なかったわ」
今回の一件もそうだが、ここまでカイムと共に来て、何かを守れた試しがない。カイムのことを救いたいと口にしておいてこのザマだ。
ギャラルホルンの力は、みんなを幸せにするための力だとギャラルは考えている。その為に必死になって戦って、何も得ることも出来なかったのは神魔大戦の時も同じ。あの時から、自分は変われたのだろうかと心配になる。
「安心しろ。この男も、おまえのことを拒絶まではしておらん」
「………」
それは、カイムの本心なのか。或いはレッドドラゴンが気遣う為についた嘘なのか。無意識の内に強くカイムのことを抱きしめていたギャラルのことを、振り払おうとしないのが答えだと理解は出来なかった。