ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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帝国の追撃から逃れるため、一行は砂漠から荒野に移動した。荒れ果てた大地の上で、カイム達は一夜のキャンプを張る――

その時、空から黒い旋風が舞い降りた


第四章 背反
第1節 イウヴァルトの告白


 先程までカイムと殺陣を演じていたギャラルは、荒れ果てた大地の上に見を投げ出していた。

 移動していく中、何度かカイムに剣を教えてもらっていたのだがその殆どが一方的に斬り伏せられることになった。技術、腕力共にカイムのほうが圧倒的に上なのだ。

 カイムも余力は残しつつも地面に座っていた。流石のカイムでも連戦続きだった上に、今も帝国軍から逃れるために逃避行の最中、ギャラルの面倒まで見ていたのだから疲れないことはないのだ。

 他の連合軍兵士や、フリアエ、ヴェルドレ、七支刀も思い思いに過ごしている。ただ全員疲れが溜まっていることもあり、テントの中に入って眠っている者が多い。

 ギャラルは疲れも相まって、ぼんやりと何もしないよりかはいいはずだとだけ考えていた。しかしその耳に、空から接近する何かを捉える。

 

「空から、何か来るわ」

 

 慌ててデボルポポルを構え直し立ち上がる。同じく異変に気がついた者が一人、レッドドラゴンがいた。

 

「この匂いは……?」

 

 ギャラルとレッドドラゴンの様子にいち早く気がついたカイムも剣を握り直し立ち上がり、近くで二人を見守るように座っていたフリアエも立ち上がる。

 少し離れた場所で座っていたヴェルドレ、七支刀も異変に気が付きカイムたちの元に集まる。

 

「ドラゴン?」

 

 彼らの目が捉えたのはドラゴンの姿。黒いドラゴンを見て、全員驚いてはいるが、特にカイムは強く驚いていた。

 更にそのドラゴンの背から降りてきたのは、イウヴァルトだった。

 

「イウヴァルト!」

「生きていたのね!?」

「ドラゴンを連れているとは、そなたも契約者に?」

 

 直接顔を合わせたのが初めての七支刀以外は、それぞれの反応をする。フリアエは嬉しそうにイウヴァルトに寄ろうとし、ギャラルも安心していた。

 ヴェルドレも、以前会った時と違いドラゴンを連れていることへ疑問を覚え口にしたが、強く警戒をしていることはなかった。

 しかし、イウヴァルトは違った。

 

「フリアエ……俺のもとへおいで。何も怖くない。何も恐れるな。世界はきっと良くなる。君だけが犠牲にならなくていいんだ」

 

 フリアエへ手を伸ばし、語りながらゆっくりとフリアエの方へ歩いていくイウヴァルト。明らかに様子がおかしいのもありフリアエは距離を取り、そんな二人の間をカイムが割って入った。

 

「……堕ちたか」

 

 呟くレッドドラゴン。七支刀以外は全員、彼の眼が元とは違う赤に染まっていることに気がつく。帝国兵と同じ赤い眼に。

 帝国側に、墜ちたのだ。

 

「僕、弱くなんかないよ。カイム!そんな目で僕を見ないで。僕もっと強くなるから!」

 

 強く睨みつけるカイムに、イウヴァルトはたじろぐ。カイムはイウヴァルトへ剣を構え直し、ヴェルドレはフリアエの手を握り下がらせる。

 七支刀も神器七支刀を構え、いつでも神器の力を解放出来るように構え、ギャラルもまたデボルポポルを強く握りカイムの隣に立つ。

 

「歌を失くしたものの……俺は強くなったんだ、カイム。だから安心してフリアエを任せてくれ」

 

 そう主張し、改めてフリアエへ近づこうとするイウヴァルトを制するように、剣を向けたままフリアエの側によるカイム。

 

「またその目か……俺はおまえのその眼がずっと嫌だった。俺をさげすみ、憐れむその目が!!」

 

 突然激昂しだすイウヴァルト。しかしギャラルの目には、カイムがそんな憐れむような眼をしているようには見えない。そこにあるのは戸惑い。やはりカイムにとってイウヴァルトは親友であり、その親友に剣を向けるのは楽なことではないのだろう。

 

「待って、イウヴァルト。カイムは貴方のことをそんな風に思っていないわ」

「おまえに何がわかる!俺たちは幼い頃からの付き合いなんだ。だからわかる、カイムがそういう眼でいつも俺のことを見てると!!」

 

 ギャラルはカイムの前に立ち、カイムの代わりに剣を向ける。親友同士で戦うのなんて間違っているのだ。

 

「復讐のためなら、妹をも犠牲にするカイムより……俺はずっとまともだ!」

 

 怒りが最高潮に達したのか、遂にイウヴァルトも剣を抜く。ニヤリと笑みを浮かべるイウヴァルト。近くに降りていたブラックドラゴンも飛翔し、この場の最大の脅威であるレッドドラゴンへと狙いを定める。

 

「そこを退いてくれ、俺はカイムを越えるんだ」

「退かない。親友同士で殺し合いなんてさせないわ」

 

 カイムが何か主張しようとするが、声を封じられた彼から言葉が出ることはない。普段は彼の口となっているレッドドラゴンも、ブラックドラゴンと睨み合いそれどころではなくなっている。

 

「カイムはドラゴンを!」

 

 ギャラルの声と共に、レッドドラゴンがけたたましい咆哮を上げる。開戦の合図となるかのようにそれぞれが動き出す。

 イウヴァルトは走り出しギャラルへと剣を振り下ろす、何とか一撃を受け止めるが、ドラゴンと契約したイウヴァルトの力は以前とは比にならない。

 ブラックドラゴンも空から飛びかかる。レッドドラゴンも同等かそれ以上の力を持つブラックドラゴンの、しかも空からの体重を活かした攻撃は受け止めきれず倒されてしまう。

 まだギャラルに何か言いたそうにしていたカイムだが、レッドドラゴンの元へ走り出した。

 七支刀はイウヴァルトの足を止めるべきと考え神器を構えつつも呪術を唱え始める。ギャラルとイウヴァルトの剣戟の隙をついて完成させようとするが、そうはいかなかった。

 2度、3度ギャラルが剣を受け止めたが、それが限界だった。ただでさえ力や体格の差が圧倒的なのに、カイムと共に剣の修行をしていたイウヴァルトの剣に、付け焼き刃でしかないギャラルが技術的に勝ることもない。持っていたデボルポポルは吹き飛ばされ、更にその勢いで倒れてしまい背中を強く打つ。

 カイムが離れてくれたから、もう剣に拘る必要はないからと神器ギャラルホルンを構え直そうとするがそれも軽く蹴り飛ばされる。

 また同時に、レッドドラゴンもピンチになっていた。ブラックドラゴンに押し倒されただけではなく、首元に噛みつかれていた。放おっておけば間違いなく殺される。

 カイムの脳裏に浮かぶは、ブラックドラゴンに殺された両親の姿。怒りを顔に滲ませて、ブラックドラゴンの元へ走る。

 隙ありと言わんばかりにブラックドラゴンはレッドドラゴンから離れ顔を蹴り倒し、カイムへと炎の玉を吐き出した。契約者と言えども生身の人間がドラゴンの炎に耐えられるわけもない、ボロボロになったレッドドラゴンが何とかカイムを庇い九死に一生を得る。

 ついに呪術を完成させることが間に合わず、次々とやられていく仲間を助けることも出来ず頭が真っ白になった七支刀は、神器を解放しイウヴァルトに向かって走り出す。しかし力任せで技のない剣は容易に動きを読まれ、逆に神器を叩き落される。更に神器の重さに連れられ倒れた七支刀を無視し、フリアエの元へ歩き出す。

 炎上するレッドドラゴンに、そのレッドドラゴンに包まれて身動きが取れないカイム。イウヴァルトに負かされ地を這うキル姫二人。残るのは自分しかないと慌てて呪文を唱え始めるヴェルドレだが、イウヴァルトは軽く杖を斬り飛ばす。更に腹に剣を掠めてしまいヴェルドレもまた倒れてしまう。

 炎が落ち着き、ようやく身動きが取れるようになったカイムは惨状を見る。しかも、その視線の先にはフリアエの唇を強引に奪うイウヴァルトの姿だった。

 キスされたせいでフリアエの、封印の女神の"オシルシ"が今までにない激痛になり気絶してしまう。フリアエを抱えるイウヴァルトへ、戸惑いよりも怒りが勝ったカイムが走り出すが、怒りに飲み込まれた剣はイウヴァルトに当たらない。剣を弾き飛ばされ、更にバランスを崩してしまいカイムも倒れてしまう。

 止めるものもいなくなったイウヴァルトは、ブラックドラゴンの元へ戻る。

 

「歌の消えた世界に口づけを!」

 

 その言葉だけを残し、フリアエを連れてブラックドラゴンに乗り、空へと飛翔していくのだった。

 何とか剣を拾い直し立ち上がるカイムの手は、何にも届かなかった。

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