決戦が始まる前になんとか丘陵地帯に辿り着き、連合軍との合流を果たしたカイムたち。帝国との決戦が、始まるのだった。
第1節 決戦
渓谷を越え、緑豊かな丘陵地帯へと付いたカイムたち。そこには連合軍、帝国軍共に大部隊が集まっていた。
連合軍の元にドラゴンが飛んできたこともあり少しざわめきが起こるが、ヴェルドレが現れたことによりそれも収まる。
「あなたが、噂のカイム隊長ですか?」
ドラゴンと契約して、とてつもない強さで連合軍を有利にしている男がいるというのは噂になっていた。
また、カイムだけでなくキル姫二人も噂は広まっていた。
「本当にあんな子供が戦っているなんて……」
「あの子たちも凄く強いと聞いているぞ。この決戦、連合軍の勝利だ!」
強力な助っ人が合流したことにより、連合軍の士気が自然と上がっていく。
最後の決戦になるであろうこの戦い、ギャラルはかなり緊張していた。この戦いの結果が世界の命運を握るのだ。緊張を紛らわしたいなと思いカイムに声をかけようとするが、彼の顔を見たときに少し驚いた。
あれだけの帝国兵と戦い、復讐を果たし、殺戮することが出来るのだからカイムは喜んでいるだろうと思っていたのだが、少しだけ不安そうな顔をしていた。
「カイムでも緊張ってするのね」
「いや、こやつはもう戦いのあとのことを考えているらしいな」
単に緊張しているだけかと思ったが、レッドドラゴンは否定する。戦いのあとのこと。まずはここで帝国に勝っても、まだフリアエやイウヴァルトがいないのだからそれを取り戻しに行く必要はあるのだろう。
カイムが考えているのはきっとその先だ。何が不安なのかは分からないが、それでもギャラルは提案した。
「平和になったら、ラグナロク大陸に来るといいわ。もちろん、フリアエとイウヴァルトも連れて」
「行けるのか?」
「帰り方も一緒に探しましょ。その方がきっと楽しいわ」
にひひとカイムに笑いかける。そんなギャラルの提案をどう感じたのか、やれやれといった様子でため息をつく。受け入れてもらえたのかは分からないが、少しでも不安を解消できたのならいいと思う。
そして、カイムは帝国兵の殺戮を期待する、いつもの笑みを浮かべる。準備は万端だ。
そんな中七支刀は、連合軍の波に飲まれていた。
「七支刀さん、俺が貴方の分まで戦います!」
「私もそのつもりだ。君のような子に戦わせるなど」
「いえ、わたくしも……!」
囲いができていた。七支刀の雰囲気か見た目か、その両方かいきなり人気になっていたのだ。
正直なところ、普通の連合兵よりも圧倒的に七支刀の方が強く、彼女の代わりに戦うなんてのはまず不可能だ。しかし、実際の強さを目にしていないのと、理屈とか関係なしにそう言いたくなるような可愛らしさがあったのだ。
決戦前の僅かな休息も終わる。連合軍、帝国軍共に整列し、それぞれの青と赤の旗を掲げ進軍していく。お互いの距離が近づいて来たところで、それぞれが剣を掲げていく。
連合軍最高指揮官たるヴェルドレにより、ギャラルへギャラルホルンを鳴らすように指示が飛ぶと、戦意を高揚させる音を鳴らす。それが開戦の合図になるかのように、うおおおと声を上げ連合兵は走り出す。
しかし、ある程度走っていったところで、連合兵たちは次々と立ち止まってしまった。彼らの視線の先にはあるのは、山のように巨大な1つ目の巨人であった……