契約者のカイム、その妹であり封印の女神であるフリアエ、そしてカイムの親友であるイウヴァルトであった。
最上階へと辿り着いたギャラルは、着いたと同時に兵士達に囲まれていた。
何とか説得しようと口を開こうとした時、兵士達をかき分け一人の青年が現れた。兵士達に待てと合図をする。
「カイム、この少女がどうしたんだ」
遅れて現れたもう一人の青年が、先に来ていた青年に声をかける。
青年、カイムはレッドドラゴンと契約した契約者だ。彼はレッドドラゴンから『声』で、風変わりな少女が向かっていることを伝えていたのだ。
しかし、カイムは契約の代償として喋れなくなっていた。
「貴方がドラゴンの言っていた男、カイムね」
「ドラゴン……カイムが契約したというドラゴンか?」
もう一人の青年、イウヴァルトがカイムに尋ねると、カイムは頷く。
しかしカイムは嫌悪感を露わにしていた。冷たい視線がギャラルに刺さる。
「貴方は無事のようだけど、封印の女神って人は大丈夫なの?」
「はい、私は無事です」
また一人の女性が姿を現した。
しかし、ギャラルはその女性の声を聞いて驚いていた。まるで感情をなくしたかのような、か細く抑揚のない声だったのだ。
「待ってくれ。そもそも君は何者だ?何故ここに来たんだ?」
イウヴァルトが疑問を口にする。この場にいる全員が大なり小なりギャラルのことを警戒しているのは間違いないのだ。
ギャラルはこの戦場、いや、この世界で何が起きているのかを余り理解してない。しかしこの世界においてギャラルホルンというキル姫は異物であり、この場にいる者は全員そんなギャラルのことは知らないのだ。
信用してもらうためにも、ギャラルはこれまでの経緯を全て素直に話した。少なくとも帝国軍の人間よりも、連合軍の方が信用できそうでもあったからだ。
「少なくとも私は戦えるし、貴方達と一緒に行かせてもらえないかしら。ギャラルも一人になったところで、どうすればいいのか分からないわ」
「俺はいいと思う。カイム、後はお前の意思次第だ」
カイムは何も答えない。しかし、ギャラルへの敵意もなく、ただ隣を通り過ぎていった。
……認められた、ということでいいのだろうか?
イウヴァルトはそう判断したのか、これからの予定をギャラルへと語った。
帝国軍が封印の女神、フリアエを狙っているの相変わらずだ。この城が落ちるのも時間の問題であり、避難をさせることにしたようだ。
向かう先は永世中立の里であるエルフの里のようだ。そこなら安全だろうと提案したのは、イウヴァルトだ。
しかしギャラルは余り良い考えだとは思わなかった。帝国軍の様子を考えれば、中立の場であろうと容赦なく踏み込んでくる可能性があると考えたからだ。
ただ、それはイウヴァルトや他の兵には伝えなかった。
……希望があることの大切さは、ギャラルはよく知っているからだ。
しかし、これが絶望への旅の始まりであることは、まだ誰も知らない。