ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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カイム達がサイクロプスを倒すため飛び立ったあと、ギャラルホルン達は連合軍の士気を取り戻すべく奮戦していた

更にサイクロプスを撃破したカイムもまた、前線へと舞い戻るのだった


第3節 荒野の夢

 魔力を温存するために、ギャラルは神器ではなくデボルポポルを握り前線へと飛ぶ。サイクロプスを見て足を止めてしまった兵士達を越えていく。

 更に魔法を唱え炎を纏いながら、待ち受ける帝国兵の中へ突っ込んでいく。待ち受けるように動かない壁の中に落ち、炎に焼かれていく帝国兵の中で更に剣を振っていく。

 七支刀も、止めようとする連合兵たちを押し切り神器の能力を解放させながら前線に飛び込む。巨大な神器七支刀で矢を防ぎつつ前進していき、待ち受ける帝国兵共を一振りで薙ぎ払う。

 そんな中で、カイムたちもまた上空でサイクロプスと交戦を始め、抑え込んでいく。

 

「あれがキル姫と契約者の力……!」

「女子供に戦わせて何が連合軍だ、俺たちも行くぞ!」

 

 彼らの圧倒的な力を前に、士気を取り戻していく連合軍。剣を握りしめ、次々と走り出していく。

 二人のキル姫によって空いた穴に連合軍が殺到し、帝国軍の壁は崩壊を始める。しかし連合兵と帝国兵、一対一では帝国兵の方が強く勢いだけで押していくにも限界はある。

 膠着し始めた場所を狙いギャラルは飛ぶ。戦場を有利に進めるためには自分の力が必要なのだ。味方を巻き込まないように魔法は控えつつも、次々と斬り捨てていく。

 七支刀は攻めることより守ることに専念する。奥にいる弓兵部隊からの射撃を避けれないだろう味方の元へ行き、神器で防いでいく。

 更にサイクロプスが次々と撃破されていく状況で、連合軍の士気はかつてないほど高まっていく。

 

「カイム様が帝国軍最前線にて攻撃を開始!我々も遅れをとるな!」

「よし、このまま押し切るのだ。連合軍の底力を見せてやれ!」

 

 サイクロプスを撃破し終えたカイムとレッドドラゴンが最前線へと降下。カイムは帝国軍の群れの中へと飛び降り殺戮を始めていく。

 カイムが前線に降りたのを確認したギャラルは、前線に立つ帝国兵共への攻撃はカイムに任せ、弓兵部隊の排除へと行動を切り替える。武器もデボルポポルから神器ギャラルホルンへと持ち替え、空から魔弾を撃ち弓兵を狙っていく。

 

「これを、人類が行う最後の戦いに……いつもそう願っておるよ」

 

 神官長であり最高指揮官であるヴェルドレは、その立場ゆえに後方で戦況を見守っていた。最低限の護衛と共に立ってはいるが、有利な戦いの中で押し切ってくる帝国兵もおらず、安心して立っていた。

 ギャラルが弓兵を狙い始めた結果、前線へ降る矢が減ってきたことを七支刀は確認する。大振りな武器のため、あまり味方の多い場所では振りづらいため手薄な場所を探しに行く。……なぜ手薄な場所が出来ているのか、そこまでは気付かないが。

 しかし連合軍帝国軍共に総力を結集したこの決戦、いくらカイムたちが強くとも無限かと思われる帝国軍の戦力は中々減っては行かない。連合兵も一対一が不利だと理解しているものがほとんどのため、複数人で囲めるように動いているのもあり進軍も数の割には進んでいかない。

 

 見える限りの弓兵を倒したギャラルは移動しようとし、投石機を準備している兵を発見する。あれを撃ち込まれれば、前線に大きなダメージが入りかねないと最優先破壊対象とし、神器の能力を迷わず解放し投石機ごと兵を吹き飛ばす。

 

「無駄ぞ!所詮人間どもが我に敵うわけがなかろう。行くぞカイム!」

 

 弓兵や投石機によってあまり自由に動けていなかったレッドドラゴンが、ギャラルによって開放される。ダニどもを焼き払うべくカイムはレッドドラゴンの背に戻り、味方を巻き込まないように前線の更に先へと飛び火の海を作り出していく。

 カイムが前線から抜けてしまい、味方連合兵の負担が増えるのを心配してギャラルは一度前線へと舞い戻るが、想像よりは善戦していた。確かに苦戦はしているし、先程よりも進軍は遅れているものの負けてはいない。

 そこでギャラルは違和感を感じる。あまりにも優勢すぎはしないか?と。戦いが始まった時点で、パッと見ではあるものの連合軍と帝国軍の戦力差はないように思えた。いくら士気がかなり高いとはいえ、ほとんど同数の戦いで優勢を維持できるのならば、今までもここまで帝国に侵略を許しているだろうか?

 その違和感の正体を探るために、前線での戦闘を開始しつつも観察することを優先することにした。

 

「帝国の対魔術師団出現!」

 

 赤い鎧をまとった隊が次々と姿を現す。今までは隠れていたのか、前線の後方を奇襲するように現れる。

 現在優勢とはいえ、彼らを放置してはどうなるか分からない。カイム、ギャラル、七支刀は自然とそちらへと移動し始める。

 前線に戻っており、かつ飛翔できるギャラルが真っ先に到達し、既に交戦を始めている連合兵たちに混ざり、デボルポポルで応戦し始める。

 最前線にいたとはいえ、レッドドラゴンに乗っていたカイムが次に辿り着き、帝国軍の群れの中に飛び込んでいく。

 徒歩のためどうしても遅れてしまう七支刀が少し遅く到着する。カイムとギャラルはともかく、応戦している連合兵がかなり苦戦しているのがわかる。対魔術用装備を支給されるだけあってか、前線に立っている一般兵より強いらしい。

 

「皆様はお下がりください!ここはわたくし達が抑えます!」

「くっ、ここはお任せします!怪我人を連れて撤退だ!」

 

 七支刀は時間稼ぎのために、逃げる連合兵に接近しようとする者と優先的に対峙していく。

 その光景を見たギャラルは、ようやく違和感の正体に気がつく。気がつくのだが、対魔術師団の相手だけはしないといけない。それに、その違和感の正体を誰に教えるべきかも思い浮かばず、とにかく剣を振り続ける。

 

「対魔術師団をたった三人で抑え込んでいるぞ!?」

「あの者たちは大丈夫です。私達も負けないように戦いましょう!」

 

 道中もカイムたちと共にいた連合兵は、彼らの強さを知っている。帝国の大部隊を何度も相手にし、その全てに勝利してきた彼らなら大丈夫だと任せ前線へ向かう。

 対魔術師団は、ただでさえ魔法が通じなく厄介なのが、その全てがガタイがよく武器も斧を持っている強靭な部隊だった。カイムはともかく、ギャラルはあまり相性が良くなく苦戦していた。ギャラルが殺しきれない相手をカバーするようにカイムも動き、なんとか持たせていた。

 七支刀は圧倒的質量で薙ぎ払う戦い方なのもあり、むしろ相性はいいほうだった。多少強靭な肉体を持っていようと、七支刀の持つ質量に耐えきれるものではない。心配すべきは、この決戦が始まってからずっと神器を振ってきた七支刀の体力だろう。

 自身の体力の限界を感じ始めた七支刀は、神器七支刀の能力を更に解放する。オーガ部隊を倒した時の大技を放つつもりだ。

 七支刀の様子に気がついたカイムとギャラルは、なるべく一人でも多く巻き込めるように誘導するように下がりながら戦い始める。

 ……そうだ、下がりながら戦うのなら、何処かに誘導しているのではないか?ギャラルはようやくこの決戦での、帝国軍の目的に辿り着く。実はそんなことはなく、本当に優勢を維持出来ているだけという可能性を捨てきれないが、罠という可能性を考慮しないといけない。

 考え事をしていたからか、ギャラルの剣が鈍り弾き飛ばされてしまう。そこへ追い打ちをかけるように斧が振り下ろされそうになるが、カイムがなんとか弾き飛ばす。

 

「ありがとう、カイム……?」

 

 礼を言おうとしてカイムを見たギャラルは、表情を見て少し固まってしまう。この戦いの間、ずっと楽しそうに笑みを浮かべていたのだが、何か複雑な表情になっていたのだ。

 しかし、せっかくカイムが防いでくれたのに、また考え事をしてこれ以上隙を作るわけにはいかない。デボルポポルを急いで拾い直す。

 

「エネルギーを解放します!避けてください!」

 

 七支刀が何か仕掛けようとしていることには対魔術師団の者を気がついていたが、それが何かまでわからないのもありカイムたちに誘導されていた。

 ギャラルとカイムはそれぞれ斧を弾いてから大きく飛び退く。そこに集まっていた帝国兵の群れに、回転する七支刀の剣先を突き出す。暴力的なまでのエネルギーが解放されていき、鎧程度では防げずバラバラの死体へと変わっていく。

 更に、当てられなかった帝国兵も巻き込むようにゆっくりと神器を動かしていく。エネルギーの暴風は残った帝国兵をも切り裂いていき、ついに対魔術師団を壊滅させることに成功する。

 

「カイム、さっきはどうしたの?」

 

 少し余裕ができたこともあり、ギャラルはカイムに質問する。

 

「聞いている余裕があるのか?」

 

 レッドドラゴンが逆にギャラルへ問う。

 その言葉を言われてハッとする。そうだ、この戦いが罠の可能性があることを誰かに伝えねばならない。

 

「待って、もしかしたら帝国軍が罠を張っているかもしれないわ」

「容易すぎるとは感じていたが……カイムも気付いていたか。しかしここでは我らは一兵士にしか過ぎんぞ」

「……ヴェルドレ様に、伝え、ましょう!」

 

 神器を全力で解放し、体力も限界の七支刀が提案をする。

 そうだ、最高指揮官なのだからまずは彼に伝えるべきなのだ。

 

「ギャラルが行くわ。七支刀も連れて行く。だからカイムは前線に戻って」

 

 これ以上は戦えないだろう七支刀を後方に連れていき、ヴェルドレにも報告する。更に一番戦力になるだろうカイムとレッドドラゴンが前線に帰るのが一番だと考え提案する。

 ギャラルは七支刀を背負い、ヴェルドレが待機していたであろう場所まで飛翔する。しかし、それよりも幾分か前線に近いところで彼を発見する。

 

「女神……女神フリアエは無事か?女神フリアエを捜してくれ!誰か!!」

 

 味方の兵士の元まで行き、女神はいないかと声をかけて回っていた。戦局は優勢のままなのもあり、探しに行ったほうがいいと考え動き出していたのだ。

 ヴェルドレの元へ行くとギャラルは声をかける。

 

「ギャラル!それに七支刀も……フリアエは見なかったか!?」

「いいえ。それよりも大事な話が!」

「女神の安全よりも大事な物があろうか!最後の封印が解かれれば、世界が滅びるかもしれないのだぞ」

「いいから話を聞いて!」

 

 女神の無事が心配なあまり、少し錯乱までし始めていたヴェルドレを落ち着かせギャラルは説明をする。

 そもそもギャラルが前線で気がついた違和感の正体、それは帝国軍が積極的に攻めてこないことだ。こちらが近づくまで、視界に入っていても襲ってこない。弓兵も開戦直後は道を妨害するようには撃ってこなかったし、投石機もまともに使われていなかった。投石機はレッドドラゴンを狙い撃っているものはあったものの、ギャラルが早期に全滅させたとはいえ前線へ撃っている様子はなかった。

 ならば何故そのような動きをしていたか?その答えが先程の対魔術師団との戦いで行った、相手を誘うための行為だったからではないか。帝国軍はあれだけの兵力を使ってまで行う作戦、かなり危険な罠を敷いているのではないかとギャラルは説明した。

 

「なるほど……しかしそれが確信できる要素もない。ただ不安を植えつければ士気が落ちるのみ」

「だからといって無視していい可能性ではないわ」

 

 ヴェルドレは少し悩んだ後に、一つ提案をした。

 

「罠だと確信が持てたなら、その笛を鳴らしてくれ。その音はよく通る」

「伝令です。帝国軍は残存兵力を中央に集めています。指揮部隊もそちらに集まっているようです」

 

 そこへ連合兵の一人が、ヴェルドレへと伝令を伝えにやってくる。

 その伝令の内容からしても、その中央地帯に引き寄せるために集まっている可能性がやはり拭いきれない。

 

「七支刀はこちらで待機してくれ。ギャラルよ、罠か見極めるためにも指揮部隊を倒してはくれぬか?彼らを逃してしまえば、戦火が広がってしまう……」

 

 彼の言葉の通り、ギャラルは前線へと飛び立つ。

 最前線で再び剣を振るっていたカイムもまた、中央地帯へ敵が集結しつつあることに気がつく。

 指揮官である騎馬兵と共に残った兵力が集結していくのを見た連合兵は、帝国軍も終わりだと奮い立つ。連合兵と帝国兵が交戦してる間をくぐり抜け、騎馬兵へと接近していく。

 カイムもまた、ギャラルが気がついたことには気がついていた。騎馬兵も、こちらがある程度近づいて来るまで動こうとしないのを確認しつつも接近、ある程度助走が取れる距離で騎馬兵は動き始めカイムへと迫る。すれ違い様に指揮官の剣を斬り飛ばす。更に指揮官は転落してしまい、カイムは止めを刺すために追い打ちをかける。

 他の騎馬兵にも、ギャラルが上空から奇襲を仕掛ける。いつの間に接近していたギャラルが、しかも空から攻撃を仕掛けてくるものだから防げずに斬り飛ばされる。流石に殺せはしなかったものの、落ちたのを見たカイムがトドメを刺していく。

 二人の連携で遂に指揮官部隊も壊滅。残敵の掃討をするだけだとなった。

 

「何だ、この威圧感は……悪い予感がするぞ」

 

 連合軍の勝利だと兵士達が盛り上がっている中、レッドドラゴンは悪寒に身を震わせていた。

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