囚われたままのフリアエの事は心配だが、憎き帝国を打ち破った事にカイムは満足していた。しかしギャラルホルンの言っていた罠の可能性が僅かに心に引っかかっていた。
そんな中、彼らの上空に暗雲が立ち込める……
「正義は勝つんだ!やったぞ!!」
「やりましたぞ!カイム様!先代もさぞや喜んでいることでしょう!」
「ギャラルさんも今までありがとうございました!貴方のお陰で勝利に近づけました!」
「赤い眼の化け物になんか負けるか!」
帝国軍は壊滅。残敵の掃討はしないといけないが、もはや勝利は確定したようなもの。連合兵は次々と勝利だと喜び声を上げていく。
しかし、ギャラルは不安げな表情のまま。カイムも喜んではいるものの、やはり気になってはいるようだ。
それはそれとして、勝利は勝利。カイムが帝国指揮官を踏みつけながら剣を高く掲げると、周囲の連合兵も同じく剣を掲げ、鬨の声が上がる。
しかしその声に紛れて、ギャラルは確かに"音"を聞いた。空から、何か……
「カイム!」
ギャラルはカイムに突撃するように飛び込み、カイムを抱えたまま飛び出した。突然のことに驚くカイムだが、抵抗はしない。
その直後、地面に激しい揺れが起きる。空に暗雲が立ち込めていく。
ギャラルはカイムを抱えつつも、なんとかギャラルホルンを鳴らす。しかし、内心手遅れだとも感じていた。飛べる自分はともかく、連合兵達がこの状況からどうやって避難するのか。
レッドドラゴンもギャラルを追うように避難を始めている。
「何を聞いた!」
「空から何か来るわ!」
何か、何かの音は聞いたのだがそれが何かまでは分からない。しかし危険な何かということはわかる。
ヴェルドレによって、ギャラルホルンの音が危険の合図だと伝わっていたのか、連合兵は慌てて避難の準備を行おうとする。
「裁きがきたぞー!」
なんとか生きていた帝国兵の一人が声を上げる。空に手を伸ばし、次々と帝国兵達が叫んでいく。
直後、雲に巨大な穴を開けながら何かが落ちてきた。緑色に輝く、巨大な魔力の玉が降る。突然の出来事に、連合兵の大半がそれを目で追ってしまう。
………爆発が起きた。連合兵は、声を上げる時間もなく爆発に巻き込まれ、消し炭になっていく。
全力で飛行していたギャラルとカイム、同じく避難していたレッドドラゴンはなんとか免れる。
耳のよいギャラルは、つんざくような爆音に正気を失いかけながらも、意地だけで飛び続ける。カイムは、ギャラルに正面からタックルされ組みつかれているからこそ、その光景を見ていた。一発だけではない。次々と緑の玉が降り注ぎ、戦場を地獄へと塗り替えていく。その瞬間をギャラルが目にしていないのは幸いだったのか。
後方にいたヴェルドレと七支刀、怪我をして引いていた兵やヴェルドレの護衛についていた僅かな兵も、その光景を目撃していた。ギャラルホルンの音を聞き警戒していたのが幸いか、対衝撃体制を取り爆風をなんとかやり過ごす。しかし怪我人には流石につらく、傷が悪化したものや致命傷になってしまったものもいる。
ともかく、連合軍の勝利で盛り上がっていた戦場は、一瞬のうちにして殲滅させられたのだ。