ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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終戦モードだった戦場に巨大な爆発が一閃する。帝国の空中要塞からの反撃であった。残党狩りをしていた連合軍は壊滅。付近一帯は地獄絵図となる。

通常では考えられない巨大な力の解放……
それは、女神フリアエが封印解除の生贄となろうとしている予兆であった。

全てを悟ったカイムは怒りに震える。


第5節 天の知るところ

 ヴェルドレと七支刀のいる側に、ギャラルはカイムと共に降りる。

 爆発で聞こえづらくなっていた耳も収まり周りの声が聞こえてくるが、どれも絶望的な声だった。

 

「眼が……眼が見えない……耳も聴こえない……カイム様?カイム様、どこですかっ?……俺は……地獄に堕ちたのか?」

「……助け……て……バカな……人間の限界を……越えてるぞ……」

「さ……裁きって何だ?あれは一体……い、いやだ……まだ死にたくないよ……」

「い、いやだ……まだ死にたくないよ……うぅぅ……帝国軍の……仕業なのか?」

 

 直撃こそ免れたものの、余波を食らい死にかけている兵士達の声が木霊する。その絶望は何よりも、ギャラルにとって重くのしかかる。後少し早く罠だと気がつければ、ヴェルドレをしっかり説得して引かせていれば、そう後悔したところで現実は何も変わらない。

 何よりも、神魔大戦に巻き込まれ死んでいった人々の悲鳴や絶望を連想してしまう。また、"また"守ることが出来なかったのだ。自分には何もできなかったのだ。戦う力を持ち守るだの救うだの言って、結局何も救えないのだ。

 耳を塞ぎ膝を付き顔を俯かせ、絶望に身を震わせるギャラルの背に、そっと誰かの手が触れる。ゆっくりと怯えながら振り返れば、カイムだった。怒りを必死に堪えつつも、手を伸ばしてくれた。

 

「カイムは……ギャラルのこと、嫌いじゃない?」

 

 縋る物がなくなってしまうことを恐れつつも、なんとか口を動かし質問をする。

 こんなことになって、世界を守るだのどうだのと言えはしない。だからせめてカイムにだけは、捨てられたくない。ギャラルにとって、カイムの存在は世界と同列に並べるくらい大きなものになっていた。

 カイムは何も答えない。当然だ。答えれないのだから。しかしその視線が僅かに逸れているのに気がついてしまう。

 

「ああああああ!!!!」

 

 嫌われたのだ。あれだけ言っておいて、カイムにも迷惑をかけてまで剣の振るえるようになって、その結果がこのザマだ。

 いや、違う。カイムは最初から嫌いなのだ。それをなんとか堪えここまで付いてくるのを許してくれたのであって、戦力になるから許されたのであって、その価値すらない自分には生きる意味などないのだ。

 しかし、カイムにそんな意図はなかった。カイムは初めて声を失ったことがどれだけ大きいことなのか、その意味を知らされつつもどう慰めればいいのかがわからずあたふたする。

 

「落ち着けギャラルよ。おまえはおまえが思っているほどか弱く無価値な存在ではない!おまえがいなければカイムも、当然我も死んでいた!おまえが我らの命を救ったのだ!」

 

 カイムの代わりに、レッドドラゴンがなんとかして慰めようとする。これはカイムの声ではない、紛れもなくレッドドラゴンの想いであることにカイムは少し驚く。

 そのカイムに、誰かが手を握る。カイムの忠臣の連合兵の一人が、ボロボロになりながらも歩いてきていた。

 

「カイム様、この剣を……先代から私が賜ったものです……」

 

 その兵が、信義を渡してくる。

 

「この剣を差し上げます。どうか私の仇を……あぁ……先に逝くことをお許しください」

 

 なんとか言葉を振り絞ると、その兵も力尽きてしまう。糸が切れたように倒れる。

 レッドドラゴンのお陰で、僅かに冷静さを取り戻そうとしていたギャラルも当然、その光景は見ていた。気まずそうに目を逸らし、ぼうっと立っていた。

 カイムは長らく愛用していた"カイムの剣"をしまい、託された"信義"に持ち替える。まだ戦いは終わっていない。

 

「カイム……まだギャラルは、戦ってもいいの?」

 

 呆然と呟くギャラルを、カイムは手を引き立ち上がらせる。

 

「ありがとう」

 

 少なくともカイムは、まだ自分のことを見捨てていないんだ。本当かは分からないが、そう信じ込ませる。例え嫌われていようと、戦力にはなると思ってくれている。だから手を引いてくれる。

 それを確認するすべはないが、そう信じることだけがギャラルにとって最後の一線になっていた。

 

「カイム様!ギャラルホルン様!無事だったのですね!」

 

 二人の姿に気がついた七支刀が駆け寄ってくる。前線に出ていた二人が巻き込まれなかったのではないかと心配していたのだ。

 まだなんとか生きている兵士たちの看病をしていたようだが、七支刀自身も無傷ではない。

 

「ヴェルドレは?」

「無事ですが……」

 

 七支刀の視線を追いかけるとヴェルドレはいた。しかし忙しなく動き回っている。何かをしている訳でもなさそうだが。

 カイムがツカツカと早歩きでヴェルドレに近づく。カイムに気がついたヴェルドレが逆に声をかける。

 

「わ、私にも何が何やら……まさか……最後の封印が……解かれた?」

「女神の血がすでに流れたと?」

 

 誰かを守ろうと必死になり、ボロボロになりながらも戦っていたギャラルとも、真っ先に手当をして回っていた七支刀とも違う、ただ慌てふためき何もしていない無能のコイツにならいいだろうと、カイムはヴェルドレをぶん殴る。

 フリアエが殺されたかもしれない、そんな状況でカイムも怒りを抑えるのに必死だったのだ。

 

「そうだ!この惨状は天からの戒め、人間への呪いだ!女神は天に捧げられたに違いない!」

 

 あまりの言いように、また腹がたったカイムは感情に任せ、今度はヴェルドレを蹴り飛ばす。

 過激すぎる行動ではあるが、ギャラルも七支刀も彼を止めるだけの気力は残っていない。

 

「真実は天のみぞ知る。そこに、道があるのならばな」

 

 進むしかない、レッドドラゴンの言葉はそう告げていた。

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