帝国兵は邪悪な力で肉体を再生しているようだ。
連合軍が壊滅状態にある中で、生き残った帝国兵が連合兵を襲っている。その中に、骸骨の兵士が混ざり始める。
先の決戦や、爆撃で死んだ帝国兵すらも蘇らせ手駒にしようと言うのだ。
純粋に実力で負けているのに、数も多く士気も落ちた状況で、連合兵は次々と殺されていく。
「封印破壊の予兆だけでこれほどの惨事となるのだ。封印が無に帰した時、世界は本当に……」
カイムに散々な扱いをされ、どうにか冷静さを取り戻したヴェルドレだが、悲観的な言葉を呟く。
「世界の終わりとは、こんな光景なのかもしれぬな」
今回はこの丘陵地帯だけが地獄と化したが、封印が完全に解かれたとき、世界すべてがこうなってしまうのではないかとヴェルドレは想像する。
「終わらせません。わたくし達はまだ戦えます!」
七支刀が叫ぶ。この場で一番精神を持たせていたのは、意外と七支刀だった。
カイムはもとよりフリアエを救うためにも、戦いを終わらせるつもりはなかった。ギャラルもそんなカイムについていくと決めたのだ。しかし、彼女の強さはありがたいものであった。
「ならば、まずは悪霊どもから蹴散らしてやろう!行くぞ!」
レッドドラゴンの喝と共に、三人はバラバラの方向に走り出す。大量の連合兵と共に戦っていた先程とは違い、今はまともに戦える戦力はこの三人とレッドドラゴンしかいないも同然だ。ヴェルドレのことは元々護衛に付いていた兵に任せ、戦う道を選ぶ。
カイムは新しく得た信義の試し斬りも兼ねて、まずは生き残りの帝国兵から狙っていく。
程よい重さで手に馴染み、切れ味もよいそれはカイムの戦いに応えてくれる。今までも圧倒的な強さで帝国兵を切り刻んで来ていたが、更に素早い殺戮を可能としていた。
しかし、今更ただの帝国兵など相手にさえもならない。よい剣であることは理解できたが、それ以上は分からない。だから、アンデッドナイトを優先的に狙うことにする。
まずは剣に宿った魔法を試し撃ちしてみようと、"フェンリルの牙"を唱えていく。今まで使っていた炎の魔法とは真逆、氷の魔法が撃ち出されアンデッドナイトを襲う。
氷のモヤに囚われ凍りついていくアンデッドナイト。追い打ちをかけるように剣で直接斬れば、氷となったアンデッドナイトは砕け散っていく。新たに得た力に笑みを隠せないカイムは、さらなる殺戮のために走り出す。
ギャラルもデボルポポルを握り飛んでいた。決戦の中で魔力は使い切っているので神器は使えない。
鎧を纏った骸骨、アンデッドナイトを見つけ空から斬りかかる。すれ違うように斬るが、人や亜人を斬った時とはやはり感触が違う。イマイチ手応えを感じないことに違和感を感じつつも、次の相手を攻撃しようと振り返ると、今しがた斬ったアンデッドナイトが骨を落としつつも立ち上がり直す。急所らしい急所も見当たらないことも考えると、一体倒すだけでも体力を使いそうだと考える。
持久戦はあまり向いていないことは分かっているが、神器が使えない以上どうしよもない。かなり厳しい戦いになることを覚悟しつつ、再びアンデッドナイトに向かって飛んだ。
七支刀も、これ以上は神器の能力を解放は出来ないと、本来の大きさの神器七支刀を持ったまま走り出す。体力もかなり厳しいところなので、剣で戦うよりも呪術を駆使して戦った方がいいだろうと考えていた。
ヴェルドレから教わった魔術の類も使う機会が中々なかったので、これも使うべきだろうと詠唱しつつ走る。走りながら詠唱するのはかなり大変だが、接敵してから唱えれば隙だらけになるし、襲われている味方を助けられないかもしれない。
生き残りの連合兵を襲おうとしているアンデッドナイトを発見し、術を完成させ放つ。連合兵に槍を突き刺そうとしていたアンデッドナイトが止まり、連合兵は何とか逃げ出す。
動けないアンデッドナイトに神器を振り真っ二つに割ると、溶けるように消えていった。
それぞれの戦い方で、帝国兵の残党やアンデッドナイトを次々と倒していくが数が減らない。決戦で倒れた帝国兵がアンデッドナイトとして復活してくる以上、とてつもない数と戦わないといけないのだ。
流石に全てを復活させることはできないようで若干少ないが、一体一体が厄介なため気休めにしかならない。
特に、三人の中では一番体力が少なく、有効打も持たないギャラルが限界を迎える。一人でいたら危険だと、とりあえずヴェルドレと複数の兵が待っている場に帰ってきたが、決戦の中で圧倒的な力を見せていたキル姫の一人がそんな姿で帰ってきたという事実に、兵たちは現実を知らされる。
「ギャラルさん、お怪我はありませんか!」
「怪我は大丈夫だけど、少し休ませてほしいわ……」
ギャラルが限界を迎えていた中で、カイムはまだ暴れまわっていた。そもそもアンデッドナイトを駆除するのに苦労していないのと、移動もレッドドラゴンに乗ってできる。何より戦いそのものを楽しんでいる彼は、他の者に比べたら精神的な疲弊は少ない。
七支刀も勢いを落とし、限界を感じ始めたところでカイムとレッドドラゴンがやってくる。
「死者は土に還らせた。一度集まるぞ」
「助かります……」
レッドドラゴンに乗せてもらい、カイムと七支刀はヴェルドレの元に集合する。
「悪しき魂の気配が消えた。まさか!」
「全て眠らせてやったわ」
カイムたちの活躍で、この地からアンデッドナイトはいなくなり帝国兵残党も壊滅させた。
次に行くべき場所を探し、空を見上げた全員にとある物が映った。
「空……あれはいったい!?」