ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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永世中立の里へと続く道、ギャラルホルンは連合軍の兵士達と野営をしていた。
ギャラルホルンはキル姫や自身のことを語り、兵士達もまたカイム達のことを語る。

そんな中、ドラゴンは不吉な"声"を聞く。


第ニ章 交錯
第1節 声の知らせ


 野営地で、ギャラルはイウヴァルト達から話を聞こうとしていた。ここまで同行している間に、カイムは契約の代償として喋れなくなっていることは知っていたし、とてつもない強さなのもその目で見てきた。ただそれ以上のことを知らないのだ。

 しかし、聞こえてきたのは歌だ。この声はイウヴァルトだろうか。声のする方へ向かえば、歌っているイウヴァルトと、それを静かに聞いているカイムとフリアエがいた。

 その時の二人は穏やかな表情をしていた。カイムが戦場で見せるような激しい表情でもなく、フリアエが普段からしている感情が抜け落ちたような無表情でもなく、間違いなく穏やかな表情であった。きっとこの二人は、イウヴァルトの歌が好きなのだろう。

 ちょうど歌い終わりだったのか、ギャラルは余り聞けずに終わってしまう。しかし、その少しだけでもギャラルも良い歌だなと聴き惚れていたことに気がつく。本題を思い出し、声をかけようとする。

 

「ギャラルか、君も聞いていたのか?」

 

 近くにいた事に気がついていたのか、先にイウヴァルトが声をかけた。

 城からの行軍の間、兵やフリアエを守りながら戦ってきたお陰で出発前よりかは信頼されている。

 

「ごめんなさい、3人の時間の邪魔になってしまって」

「いや、大丈夫さ。エルフの里に着けばもっと落ち着ける時間が出来るんだ」

 

 イウヴァルトは気遣ってくれたが、フリアエはいつもの表情に戻ってしまっているし、カイムに至っては不機嫌そうだ。

 ……カイムに関しては、また戦いになればそんなものは消えてしまいそうだが。

 ギャラルは改めて、カイムのことを知りたいと彼らに話す。そして、自分のことも話すと告げた。

 

 カイム達に付いてきた連合軍の兵士の、生き残り。この野営地にいる分は集まってもらった。レッドドラゴンも近くで聞いているようだ。

 ギャラルは自分がキラープリンセス、通称キル姫であること、そしてそれがどういうものなのかを語った。

 

「キラーズ、神話になぞらえた強大な力を持つ武具の力、それを埋め込まれた兵器か。人間とは何処までも愚かなものだな」

「寿命も普通の人間とは違うわ。こう見えてとても長生きなのよ」

 

 更に自分のことを語る。大半のキル姫は、天上と地上が二分されていた時代に、地上の人間が悪魔の支配を脱却するためになったものだが、自分は例外であること。

 ギャラルは神魔大戦、神を語る天使と悪魔との戦いの中作られた、他のキル姫とは違う少し特別な存在でもあると話す。

 

「神と天使、それに悪魔か。余り良い響きではないな」

 

 そう呟くはレッドドラゴンだ。

 

「しかし、そんな戦いがあったことも知らないし、キル姫とやらも初めて見たぞ」

「ああ、聞いたことがない」

 

 やはり、その場にいる誰もがキル姫を知らない。神魔大戦は遥か昔に起きた出来事だし、そもそもラグナロク大陸が出来てからはその出来事は起きていない。だから知らないことはおかしくはないのだが、ラグナロク大陸においてキル姫は隣人だ。

 戦うための兵器としての役割を終え、各々が普通の女の子として、時にはちょっと強い女の子として人間に混じって暮らしている。それなのに一人も知らないのは考えられない。

 だからこそ、ギャラルは一つ確信を持っていた。ここは異世界なのだと。

 

「突拍子もない話ばかりだし、全てを信じてもらわなくてもいいわ。ただ、貴方達がギャラルのことを知らないように、ギャラルも何も知らないの」

「我は信じても良いぞ。おまえから感じる力は、我の知っている何れもとも違う」

 

 レッドドラゴンがギャラルのことを信じた理由はそれだけではなかった。ギャラルが自身のことを語っているとき、寂しいような、悲しいような表情をしていた。外観相応の年端もいかぬ少女のようで、御大層に兵器だと言ったところで普通の人間と何ら違いはないのだろうと、愚かで凡庸なただの人間なのだと感じたからこそだった。

 また、カイムも契約しているレッドドラゴンとは意思疎通ができるため、レッドドラゴンがレッドドラゴンなりに信用したことは理解した。

 

 兵士達やイウヴァルトの反応は同じではなかったが、少なくとも今更敵なのではないかと疑う者もいなかった。

 更に兵士達は教えてくれる。カイムはとある国の王子であったこと、そしてその国は帝国によって滅ぼされ、両親も殺されてしまったこと。だから、今カイムは自ら剣を取り戦場に立っていること。

 これは兵士達が言った訳では無いが、ギャラルはカイムが戦場にいる時に楽しそうにしている理由を理解した。これは、カイムにとっては復讐のための戦いだからだ。

 更に、ここに集まっている兵は大なり小なりカイムのことを慕って付いてきていることも分かる。みなカイムのことをカイム様と呼ぶことからも、その国の兵士だった者の集まりだろうと理解する。

 それから、ギャラルは一つ疑問をぶつけた。フリアエの様子だ。封印の女神ということは聞いているが、何故フリアエはそんな様子なのかを知らない。

 

「フリアエには封印の負荷がかかっているんだ。もう限界なんだ」

「平気です」

「平気な訳あることか!」

 

 封印の負荷。具体的にはわからないが、それほど苦しいものなのだろうか。

 ……それほど大事なものなのだろうか、その封印というものは。

 

 しかし、彼らの語らいは終わりを告げることになる。レッドドラゴンの報せによって。

 

「エルフの里が襲われた。……恐らく、全滅だな」

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