ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

40 / 179
彼女は「天使の教会」の司教であり、
彼女は帝国軍の首領であり、
彼女は全ての破壊者であり、
彼女は神の使いである。
全ての元凶、マナ。

幼い瞳が見つめる先には、無残に破壊された封印が横たわっていた。


第七章 悲劇
第1節 彼女のために


 空中要塞、祭壇。

 フリアエの亡骸の側、司教マナは楽しそうにしていた。笑いながら、花弁をまき散らし回っていた。

 しかし、祭壇に並ぶ兵士たちを掻き分け接近する誰かに気が付き、小首をかしげる。

 それは、イウヴァルトだった。赤目の病により、思考はぐちゃぐちゃになっていた。戦っていた敵は?何のための戦いを?司教とは誰だ?契約相手とは?何のための契約か?何もかも分からなくなっていたが、それでも嫌な予感に駆られ祭壇まで走ってきていたのだ。そこに大切なものがある気がして。

 大急ぎで走ってきたイウヴァルトは、その赤い目でフリアエを見た。胸にナイフが刺され、壁にもたれかかっているフリアエを。

 

「フリアエ……?」

 

 直後、イウヴァルトの頭にかかっていたモヤが晴れていくようだった。今まで自分が何をしていて、何をしてしまって、その結果、フリアエが死んでしまったという現実が彼の思考へと突き刺さる。

 その中で、司教がイウヴァルトへ何と言ってそそのかしたのかを思い出していた。

 

『封印役は精神、体力共にむしばまれる。必ずや近い将来、命を落とすだろう。……それが女神の役回りだ』

『女神の任を降りれば、ただの女に戻れるのか?』

『……命は延びる』

 

 そうだ、俺はフリアエを救うために、女神から解放するために戦おうとしたじゃないか!なのに、フリアエが……!

 フリアエを救うための戦いだった筈なのに、そのせいでフリアエが死んでいるという現実を受け入れきることが出来ない。ただ、少なくとも元凶は目の前にいる。

 

「フリアエをどうしたっ!?」

 

 幼き司教、マナへと掴みかかる。何故フリアエが死んでいる、命は伸びるのではなかったのか、フリアエと共に幸せに暮らせるのではなかったのか、その為の力ではなかったのか!

 言葉を続けようとするが、マナの冷淡な声がその言葉の続きを発することを許さなかった。

 

『封印は解けた。もういらない』

 

 少女の声と、男性の声が混じったような不快な声でマナは告げる。

 結局、イウヴァルトのことなど最初から利用するつもりでしかなかったのだ。それを理解したイウヴァルトは、怒りの言葉を続けようとする。もういらない、だから殺したのか!と。しかし言葉は続かない。突如マナの周囲に莫大な魔力が発生し、バリアのように球状となる。

 それが徐々に膨れ上がっていき、イウヴァルトの身体は持ち上げられていく。

 マナの笑い声と共に魔力が弾け、イウヴァルトは後方へと吹き飛ばされる。

 イウヴァルトは気が付かない。吹き飛ばされた時、彼の左手がフリアエに突き立てられているナイフに当たったことを。そのせいで深く刺さり、その瞬間まで何とか生きていたフリアエに、トドメを刺していたことを。

 

『天使が笑った。天使は笑うよ』

 

 マナは笑う。ラララララと口ずさみ、くるくると回り踊る。心底楽しそうに。

 

「フリアエ!フリアエ!俺は……君の幸せを思って……違う! 違う!俺は君に歌すら贈れなかった!」

 

 正気に戻ったイウヴァルトは、これまでの自身の行動を深く後悔する。

 フリアエが何を望んでいたのか、何を願っていたのか?

 イウヴァルトが歌を捨ててまで手に入れた力で彼女を幸せに出来たのか?その力でカイムから無理矢理引き離した時も、彼女はそれを望んでいたか?……いや、彼女が求めていたのは歌の筈だ。幼き日に、彼女が楽しそうにイウヴァルトへ歌をねだる姿を思い出しながら、その望まれていた歌を捨てた挙げ句彼女を不幸にしてしまった、死なせてしまった。

 

「では俺の幸せのため?……俺が、君を、殺した?」

 

 あまりにも残酷な現実に、イウヴァルトは嘆く。絶望する。声を上げるしかなかった。

 

「ラララララ、天使、回る回る、笑う笑う。ララ…天使」

 

 司教マナは歌う、笑う、踊る、回る。

 絶望に声を上げるイウヴァルトの回りをくるくると回りながら……

 

「ララララララララ…ラララララ…ララ…天使、回る回る」

 

 それは少女の声か、男の声か、気持ちの悪い声を出しながらマナは歌う。花を散らしながら、回る。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。