ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

41 / 179
封印は全て破壊された。
世界には「再生の卵」が出現し、人間は最期の時を迎えようとしていた。

マナの呪縛から開放されたイウヴァルトは、「復活を司る」とも云われる「再生の卵」を利用し女神復活を目論む。
冷たくなった妹を抱く親友を、カイムは追った。
「天使の教会」が全てを破壊した上で生じた「再生の卵」に、希望などある筈が無い。

だが、イウヴァルトの耳にそれが届く筈も無かった。


第2節 哀しみの空

 フリアエの亡骸を持ち出し、ブラックドラゴンにまたがるイウヴァルトの瞳は決意に満ちていた。もう一度、フリアエの笑顔を見る。その為に、再生の卵を使う。

 

「奇跡を……女神の復活を!」

 

 冷たくなったフリアエに口づけをし、先を見据える。

 

 しかし、カイムとギャラルの乗るレッドドラゴンがブラックドラゴンを発見する。フリアエの亡骸を抱え飛ぶイウヴァルトを、放置する訳にはいかなかった。

 カイムたちに気がついたイウヴァルトは、ブラックドラゴンを振り向かせ容赦なく炎を飛ばしてきた。

 

「また俺の邪魔をするのか!」

「何をするつもりなの!貴方が攫ったせいで、フリアエは死んだのよ!」

 

 自身のことで精一杯なギャラルは、その言葉がどれだけイウヴァルトに刺さるのか、傷付けるのかを理解する余裕がない。

 もはや、彼は救うべき人物ではない。カイムが戦うのならば、倒すべき敵でしかない。

 

「決まっているだろう。フリアエを生き返らせる。再生の卵で奇跡を起こす!」

 

 カイムは、結局イウヴァルトが狂気の中に沈んでしまったことを理解する。カイムも、彼を救うことは諦めていた。彼との、昔からの因縁がここまでこじらせてしまうのかと、やりきれない気持ちになっていた。

 

「起こらぬからこそ奇跡と呼ぶ。無駄ぞ」

「う、嘘だ。俺は信じない、俺は信じないぞ!俺はフリアエさえいればそれでいい。フリアエの世界などどうでもいい」

 

 レッドドラゴンがあっさりと否定した、奇跡。少なくともギャラルは奇跡と呼べるだけの現象を目の当たりにしているし、奇跡を起こすのは不可能ではないと知っている。

 しかし、彼の歪んだ願いと、想いと、再生の卵という未知の存在。これらが真っ当な奇跡など起こせるようには思えない。

 

「そんな自分勝手なこと!」

「お前にはフリアエのことなど分からないだろう!」

 

 カイムとイウヴァルトはともかく、ギャラルとイウヴァルトは短時間行動を共にしただけの赤の他人。しかも、二人共相手のことを思いやるだけの心を持てないこの状況では、否定し合うことしかできない。

 

「カイムなら分かるだろう。おまえだって、フリアエを生き返らせたいだろう?違うのか?」

『ああ、フリアエにもう一度会いたい』

 

 確かに、カイムも出来るものならもう一度フリアエに会いたいとは感じていた。

 しかし、これまで共にしてきたレッドドラゴンの言葉が引っかかる。お互い辛辣な言葉をぶつけてきたが、嘘をつくようなやつではない。

 何とかイウヴァルトを説得しようと、カイムは"声"をぶつける。

 彼の言葉も想いも、何も分からないギャラルはただ静かに待つ。こうしてお互い言いたいことをぶつあいながらも、赤と青の炎は交差していく。戦いが終わりそうにないことが、カイムの返事がどうだったかを物語っていた。

 

「おまえのフリアエの愛など所詮その程度なんだな。じゃあ、僕の勝ちだ。僕は強い!僕は強いんだ!僕はやれる!」

「勝ち?ふざけないで。あんたの一方的な愛なんかでフリアエを救えるか!」

 

 余りの言い分に、遂に語調まで荒くなり始めたギャラルの手を、カイムが握ってくる。

 カイムからのアプローチに驚きながらも、自分がかなりヒートアップしていたことに気が付く。そして、イウヴァルトの言う通りギャラルはフリアエのことに詳しい訳ではないし、愛していたでもない、赤の他人でしかないのに偉そうなこと言い出していた自分を恥じる。

 

「……ギャラルが言えたことじゃないよね。カイムが言うべきことだよ、ね?」

 

 ギャラルはカイムへとぎゅっと抱きつきながら、許しを請うように口を開く。

 別にカイムは怒っていなかった。ただ、フリアエのことをまるで自分のことのように悲しんだり怒ったりするギャラルのことを、不思議に感じていた。

 しかし、小動物のように怯えているギャラルを見て、理解できた、気がした。今のギャラルにとって、カイムのことが全てであり、それ以上でもそれ以下でもないと。多分、今ここでギャラルのことを否定すれば完全に壊れるだろうとも。

 

「ギャラルのこと、嫌い?」

「痴話喧嘩はそこまでにしておけ。我の背中でするな、暑苦しい」

 

 カイムの意思は契約者であるから伝わってくるし、ギャラルの意思は見てればわかる。そんなレッドドラゴンは、痴話喧嘩だと二人を一蹴する。

 それがどういう意味なのか、理解しきれなかったギャラルが目をパチクリさせる。カイムも、そんなギャラルの琥珀色の瞳を見つめた後に、なんとなく気恥ずかしくなって前に向き直す。

 

「もう十分か?」

 

 少し微妙な空気になったが、とりあえず二人が落ち着きを取り戻したことを察し、レッドドラゴンは呟く。

 それから、この長い口論の中でも未だに決着が付かないブラックドラゴンへ、勇みこむように吠えた。

 

「なかなかやるではないか。だが我の足元にもおよばぬぞ。燃え尽きろ!!」

 

 レッドドラゴンの動きが変わった。今まではお互いの炎が当たらぬように慎重に避け繊細な戦いをしていたが、最大限の力で炎を飛ばすべく空で静止する。

 ギャラルは神器を鳴らし、扉を呼び出した。ブラックドラゴンの放つ炎を迎撃すべく、魔力を放っていく。

 炎と魔力がぶつかり合い煙が舞い、視界が塞がれていく。レッドドラゴンの口元に集まった炎が、背中に乗っている二人さえ焼いてしまいそうなほど強くなり、それがブラックドラゴンへと放たれる。

 煙から突然顔を出した巨大な炎を、ブラックドラゴンは炎を返し迎撃しようとするが簡単にレッドドラゴンの炎に呑み込まれていく。避けるのも間に合わずブラックドラゴンに直撃。爆炎の中、何とか耐えきったブラックドラゴンが背を向け飛んでいく。

 

「所詮、貴様の炎などそんなものだ。身の程を知れ!」

 

 逃げるイウヴァルトとブラックドラゴンを追撃すべく、レッドドラゴンが羽ばたこうとするが、突如カイムへと"声"が届く。

 

『やめるのだカイム!もう封印は解かれてしまった。これ以上の戦闘は無意味だ!!』

 

 ヴェルドレの"声"だった。

 その"声"で、カイムはハッとする。今すべきことは逃げるかつての友を討つことではなく、再生の卵を破壊すること。そして、全ての元凶、司教マナを討つことであると。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。