だが、カイムとギャラルの二人へと不思議な居心地の良さを感じながら、ドラゴンは飛び立つ。
その頃、地上では七支刀が魔物や帝国兵と戦い道を切り開いていた。
それぞれ向かう先は、司教マナ、全ての元凶。
「もはや我らより強いものはおらぬ。命が惜しければ道をあけろ!」
伝説さえ超え、己をも超えたレッドドラゴンは勇ましく吠える。道を塞ごうとする塵芥も、彼女の炎の前には時間稼ぎにもならない。
空でレッドドラゴンが雑魚を蹴散らしている間、七支刀は戦っていた。連合兵も気力も体力も削がれ、自衛が精一杯。いや、それさえ満足にできずに七支刀がカバーに入りながらの戦いになっていた。
しかし、空での戦いに触発された七支刀は、より前に出て戦っていた。巨大化させた七支刀を維持するのにある程度魔力はいるし、それを振り回すのにも体力を使う。それを理由に諦めるのは簡単だが、そんなことをして世界を救えるほど甘くはないと理解もしている。
「ヴェルドレ様、援護をお願いします!」
「もう無駄だ!封印の女神亡き今、私に出来ることなど」
「無駄ではありません!わたくし達に、出来ることをするのです!」
もう何度繰り返したか分からない。封印が解かれ役目を見失い、更には絶望的な光景に心を折られ、帝都の恐ろしい様に恐怖し、それでも七支刀が引っ張ってきた。
カイムであれば足手まといだと切り捨てていてもおかしくないが、七支刀にはそう簡単に割り切れるものでもなかった。
「カイム様も、ギャラルホルン様も戦って、エンシェントドラゴンを倒したのでしょう?」
「……そうだ、あの人達がいれば伝説だって敵じゃないんだ。私たちにもやれることはある筈だ!」
「カイム隊長はドラゴンと契約したから強いんだぞ?俺たち普通の人間に何が!」
粘り強い説得の中で、僅かに士気を取り戻し始める兵士もいるが、そうでない者もいる。これまでの道中でも何人かやられ、それなのに進むたびに悪化していく状況に足が竦んでも、責められることではない。
「わたくしは、一人でも進みます。着いてこれない方は、休んでいてください」
「……ああ、私は行きましょう。こんなところに取り残されるくらいなら、進んだほうがマシだ」
随分と後ろ向きな理由だが、ヴェルドレは七支刀に着いていくことを選択する。着いていっても怖いものは怖いが、こんなところに取り残されてもやはり怖いものは怖いのだ。
「七支刀さん!後ろ!」
ヴェルドレや連合兵に気を使っていた七支刀は、後ろから接近するオーガに気がついてなかった。連合兵の一人に言われ、咄嗟に攻撃を防ごうとするが、間に合わない……!
見ていた者がそう思っていた中、空から落ちてきた何かがオーガへと突き刺さる。それはオーガの背中から離れ、七支刀の方向に倒れないように蹴り飛ばす。
その落ちてきたものの正体は、ギャラルだった。
「ギャラルホルン様!?」
「空はカイム達に任せて大丈夫だから、降りてきたわ。無事?」
エンシェントドラゴンとの戦いの中で、ヴェルドレの声が届いていたことを思い出し、地上に来ているはずだというレッドドラゴンの主張を聞き、ギャラルは先んじて地上へ降りてきたのだ。
強力な援軍が来たのも相まって、残りの連合兵もまた進軍するための勇気を得る。
帝都のアスファルトを蹴り、縦に長い変わった形状の建物の並ぶ不気味な街を、彼女らは進んでいく。