しかしイウヴァルトはその報せを信じることが出来なかった。
現実を知る為に、カイム達はエルフの里へ出立する。
より早く行くためにカイムはドラゴンと共に空から行く。
ギャラルホルンも残りの者達と歩みを進めるが、エルフの里の方向から帝国兵達が現れるのだった。
カイムとレッドドラゴンは空へ飛び立つ。ギャラル達もまた歩みを進める。
「ギャラル、君は信じないよな?永世中立であるエルフの里が襲撃されているなんて」
「……そうね、信じたくはないわ」
少し濁すような回答をする。確かに信じたくはないことではあるが、襲撃されていても何もおかしくはないと考えているからだ。
「君には話していなかったな。フリアエは俺の元許嫁なんだ」
更にイウヴァルトは語る。彼は元々フリアエの許嫁であり、同時に彼はフリアエを愛していた。いや、今でも気持ちは変わっていない。
しかし封印の女神として選ばれてしまった為に、破談。しかもあの城の中で幽閉されることになっていたのだ。
「女神がいなくなれば世界が滅ぶと言われているが、フリアエが女神として幽閉される時点で世界の終わりのようなものなんだ」
イウヴァルトはギャラルに語り続ける。不安なのだろう。言葉では信じないと言っていても、里が壊滅している可能性を考えてしまうのだ。
しかし、その可能性は更に現実味を帯びることとなる。前方、つまり向かっている方向、エルフの里の方向から帝国兵達が現れる。
「どうして帝国兵が……」
イウヴァルトの表情が絶望に染まっていく。
その様子を横目に、イウヴァルトやフリアエに兵を近づけさせない為に、ギャラルは飛び出す。
上空にも帝国兵達は待ち構えていた。レッドドラゴンが飛び立った先の光景。帝国兵達の兵器やガーゴイルといった魔物達の群れ。
「とにかく、このうるさい小蝿どもを一掃するぞ」
エルフの里へ向かうためにも、レッドドラゴンは目の前の邪魔な存在を焼き払う。
次々と飛んでくる砲や魔法、軽く避けては炎の玉を吐き反撃。ガーゴイルやそれの放つ蝙蝠型の魔物を複数の追撃弾で軽く散らし、威力が拡散し落としきれない兵器共は一つ一つ、威力を溜めた炎で落としていく。
誇り高きドラゴンと、復讐者と化したカイムの前には帝国兵共は塵芥に過ぎなかった。
地上でもギャラルは兵を次々と魔力弾で散らしていた。しかしギャラルの前に、大柄で重装な帝国兵達が立ち塞がる。
「封印……破壊……キル姫、邪魔ヲスルナ!」
「知っているの?キル姫を!?」
正気とは思えない目をしつつ、何故かカタコトな言葉から発された単語に驚き硬直する。その一瞬の隙を逃す帝国兵ではなかった。赤い双眸がギャラルの頭を捉え、槍を突き刺そうとする。
しかし、その槍が刺さることはなかった。横から振られた剣により、逸らされたのだ。
「一人で戦うな。我々もいる!」
連合軍の兵士達だった。その中でも戦い慣れてる者達だ。ギャラル一人に戦わせるのも忍びないのだろう。
背後からの奇襲もないため、護衛は最小限にし加勢することを選んだ。
「カイム様も戦っている。私の剣は、子供に戦いを任せるためのものではない!」
士気も高く、ギャラルも援護しながらの戦い。重装兵はエリートなのか、数は多くなかった。
二人以上で囲み抑えつつ、ギャラルがより高く魔力を込めた弾を撃ち出し、時にはギャラルは槍を避けている間に兵士達が鎧の隙間へと剣を捩じ込む。
高い連携により、帝国の兵達は倒れていく。
……しかし、エルフの里へ向かい続けているが、兵はいなくならない。
「この辺りにエルフの集落がある筈なのに。こんな所にまで帝国兵が……」
イウヴァルトの絶望は確信へと変わる。
「よし!このまま集落へと下降するぞ!」
上空の帝国兵ども駆逐し終えたレッドドラゴンは、集落へと続く道へと降りてきたのだった。