ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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村を救うためではなく、帝国兵を殺すため。
憎悪に燃えるカイムは村があるという霧深い妖精の森へ。

その森には契約者が居た。
自らの意志の弱さにつけ込まれ、悪意あるフェアリーとの契約を行い光を失った悲しい男、レオナール。


第十一節 焼き討ちのあと

 深い霧の中、カイムと七支刀は森の中へ降りる。方や村を救うため、方や帝国軍を殲滅するため。真逆の意思でありながらも、同じ戦いへと臨む二人がいた。

 

「なんて濃い霧だ。まったく先が見えぬ。気をつけて進まぬと敵の格好の的となるぞ」

 

 アンヘルが二人へと忠告する。その言葉の通りに、少し先も見渡すことができない。

 弓兵の攻撃や、死角からの奇襲など警戒しないといけないと、七支刀の歩みは遅くなる。しかしカイムはその反対、むしろ全力で突き進んでいく。見えないのはお互い様だと考えたからだ。

 流石に霧が濃いとはいえ、ドラゴンの襲来ともあれば気がつく。帝国兵達は陣形を整え直し、アンヘルへの攻撃を決行……しようとした。

 悲鳴を上げる間もなく、一人死ぬ。弓兵の首が一つ飛んだ。

 流石に近くにいた兵士はそれに気がつくが、報告を上げるまもなくカイムの餌食となる。

 敵の奇襲だ!そう気がついた時には、その兵士のいる部隊は壊滅していた。弓兵の首のない死体だけが転がり、次にどこから襲ってくるのかと警戒し構える。そんな帝国兵の一団へと、炎が降り注ぐ。

 カイムはアンヘルへと戻り、弓兵のいなくなった部隊へ容赦のない追撃をしていた。周囲にいた筈の敵兵を警戒していた帝国兵は、空からの攻撃に気がつくのが遅れ全て炎に巻き込まれていく。

 それだけ暴れれば、他の部隊も異変に気がつく。陣形を整え直すのは程々に、カイム達への攻撃を始める。

 しかし濃い霧に紛れ、何とかドラゴンのシルエットが見える程度。弓兵の周りを剣を持った兵士たちが警戒しつつも、弓兵はシルエットへ矢を放ち続ける。

 しかし、帝国兵達が警戒すべき相手はもう一人いた。七支刀はカイムの暴れっぷりを見て、ゆっくり警戒しながら立ち回るのでは置いていかれるだけだと考え、いきなり神器の能力を解放し接近していた。

 アンヘルにもっとも近い一団へ飛び込み、巨大な神器で薙ぎ払う。警戒していただけあって何人かは気づき防ごうとするものの、容易く弾かれてしまう。そのまま弓兵へ追撃しようとし、止まる。

 ……本当にこれでいいのでしょうか?

 ただ闇雲に殺し合って、平和になんかなるだろうか。一瞬のことだったが、その一瞬の間にカイムはアンヘルから飛び降り、七支刀の目の前にいた弓兵を頭から串刺しにしていた。

 

『戦うこともできない腑抜けなら、ここで野垂れ死ね』

「!?」

 

 七支刀の顔面を容赦なく殴り、そのまま神器を奪ってしまう。カイムに神器の能力を解放することは出来ないが、これだけの質量を持つ剣というだけで価値がある。

 

「賢者は戦いより死を選ぶ。更なる賢者は生まれぬことを望む……」

 

 アンヘルが空で何かを呟く。それはまるで、戦わないのなら死ねと、その方が賢い選択だと言っているようで七支刀の頭に血が上る。

 ……戦うことへの覚悟なら、もう決めている!

 神器七支刀を振り回し、次々と帝国兵をぶった斬るカイムへと走る。カイムの強さは異常だが、七支刀だって伊達にキル姫ではない。戦いに夢中になっているカイムの背後から掴みかかる。

 

「返してください!それはわたくしのキラーズです!」

『ふん、怒ったか?聖人ぶったところでお前もその程度だ』

 

 カイムの意思は七支刀には伝わらない。しかし、カイムは神器から手を離し地に落とす。新たに草原の竜騎槍を構え直し、残党を残らず殺すために走り出す。

 

『おぉ……地獄の炎が……』

「”声”が聞こえた。契約者か!?」

 

 周囲にいる帝国軍を全滅させたカイムは、"声"を頼りに東の方角へと走り出す。この"声"の感じなら、まだ敵がいる筈だ。

 

「契約者ですか!?何処に?」

「カイムの向かった先にいる。向かったところで、何も変わらぬと思うがな」

 

 七支刀が何もできないと、いる意味がないと挑発を続けるアンヘル。

 そんなことはない。それを証明するためにもカイムを追い走り出す。

 二人の向かう先には、帝国のゴブリン部隊がいた。近くにある村を襲おうと進軍していたが、その先頭を潰すように槍で貫く。突然の奇襲に驚きながらも構え直すゴブリン達だが、カイムの敵ではない。

 七支刀も攻撃を始める。しかし、七支刀の攻撃はゴブリンに当たりはするもののトドメは刺さない。剣の腹で殴っているからだ。

 近くでカイムの殺戮が始まり、更にはもう一人強そうな者が現れたこともあってゴブリン達の士気は目に見えて落ちる。特に、カイムの殺戮の凄まじさが勝てないことを物語っている。

 カイムを取り囲み同時に攻撃を仕掛けようとしても、いなしながら薙ぎ払い、近くにいるものから順番に貫き殺していく。ゴブリン特有のすばしっこさで避けようとするも、動きを読まれているかのように正確に槍が迫る。

 そんな殺戮を見せられては、次に殺されるのは自分だと理解するのも容易い。ゴブリンは慌てて逃げ始めるが、七支刀はそれを追撃しない。

 

「つまらぬ慈悲はいずれ身を滅ぼすぞ」

 

 その様子を伺っていたアンヘルは、馬鹿馬鹿しいをしていると思いながら呟く。必要があって逃すのではなく、ただ純粋に善意で敵を見逃すのはまた訳が違う。

 そんなアンヘルを通じて、カイムも七支刀の所業を知る。"わざと"逃している、その行為にカイムは激昂しゴブリンを薙ぎ払った後に七支刀へ向かい走る。

 突然のことに対応が追いつかない七支刀の首根っこを掴み上げ、怒りを露わにする。

 

『こいつらは敵だぞ!?逃がすなど正気か?』

 

 カイムの言葉は一つも伝わらない。何故そこまで怒っているのか、七支刀は理解できずに黙るしかない。

 

『……いや、お前は人間じゃなかったな。家族を殺された恨みなど分からないか』

 

 怒りは残ったまま、呆れた様子でカイムは七支刀を放す。直後、再びカイム達へと"声"が聞こえる。

 

『待て!話し合え!その者達にもう戦う意志はない!』

 

 その言葉が誰に向けられたものなのか分からないが、七支刀のことを考えさせられイライラしながら村の方へと走り始める。敵はいないのかと、殺すことだけを考えつつ。

 

「荒波に浮かぶ者が助けを求めるとは限らぬ」

「それは、どういう?」

「会えば分かるのではないか」

 

 二人は村へ進んでいく……

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