ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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砂漠の封印が破壊され、失意の中でカイム達はフリアエの元に戻る。
砂漠に落ちていた神器ギャラルホルンを七支刀へ差し出すカイム。それの意味するところを察する間もなく、カイム達は移動を開始する。

移動した荒野で一夜のキャンプを張る。
その時、空から黒い旋風が舞い降りた。


第肆章 背反
第1節 歪んだ祈り


 帝国に砂漠の封印が破られ、更に帝国から逃げていたカイム達は披露が溜まっていた。

 各々が腰を降ろし少しでも疲れを取ろうとしていた中で、レオナールが真っ先に異変に気がつく。

 

「この気配……ドラゴン!?」

 

 レオナールの言葉に反応し空を見上げたカイムは驚愕する。ブラックドラゴンがこちらに向かって飛んできていたのだ。両親の仇である、あのブラックドラゴンが。

 単に姿が似ているなんてものではない。あの姿、見間違える事などない。

 更に一行は驚くこととなる。そのドラゴンの背から降りてきたのは、ギャラルホルンだった。

 

「無事だったのか!?」

 

 あのブラックドラゴンが、カイムの両親の仇だと知らないイウヴァルトが真っ先にギャラルへと近づく。

 しかし、警戒しているカイムは彼の前に立ち道を塞ぐ。

 

「ドラゴンを連れているとは、まさか契約者に?」

 

 ヴェルドレが疑問を口にする。キル姫である彼女も契約ができるのか、どうしてなったのか、など色々疑問が浮かんでくる。

 

「ええ、契約したの」

 

 ギャラルはカイム達に手の甲を見せる。そこには、契約の証でもある紋章が浮かんでいた。

 それからギャラルは七支刀の方を見る。キル姫であることを直感的に理解したからだ。今いる中で、ギャラルが知らないのは七支刀とレオナールだけだ。

 

「あなたはキル姫よね?それと、そちらの方は?」

「わたくしは七支刀です。あなたがギャラルホルン様ですね?」

「私はレオナール。よろしくお願いします」

 

 二人がギャラルへと挨拶する。それからギャラルはカイムを見て、にひひと小さく笑みを浮かべる。

 カイムはギャラルの、琥珀色だった筈の、今は赤い目を見ながら疑問を投げかける。

 

『捕まってから何があった?何故お前がそのドラゴンと』

 

 今までなら通じてなかっただろうが、同じく契約者になったギャラルには"声"が届く。

 

「ギャラルね、司教と話してきたの」

「天使の教会の……?」

「ええ。帝国軍を使って封印を破壊し、再生の卵を出現させる。それが天使の教会の目的」

 

 不気味なまでに笑みを崩さぬまま、ギャラルは話し始める。

 この場にいる人は、帝国の狙いが再生の卵ということまでは知っているが、その先に何があるのかを知らない。

 カイムはそこへの興味は薄かったが、フリアエにも関係する話なので妨害はしなかった。

 

「再生の卵による世界の再生。一度滅びて、それから新しい世界にするのよ」

「世界が、滅びる……?」

「もちろん、フリアエも死ぬわ」

 

 動揺したイウヴァルトに対して、容赦なくギャラルは告げる。

 

「オイオイオイ!このガキ怪しいぜ!そこまで知ってきて、なァんでここまで来れたんだ?」

「それは、私も疑問です。ギャラルホルンさん、どうやってここまで来たのですか?」

「んー、それはね?」

 

 後ろで待機しているブラックドラゴンに近づき、その背から荷物を取り出した。それは、巨大な鉄の剣だった。ギャラルの背丈よりも大きいそれは、もはや剣より鉄塊と呼ぶに相応しいもの。

 その鉄塊の剣先を、カイム達へ向ける。相も変わらず、笑いながら。

 

「司教の命令で来たからよ?」

「やはり、堕ちていたか……!」

 

 赤目になっていることに疑問を覚え警戒していたカイムとアンヘルは特に驚きもしなかったが、他の者はそうでもなかった。

 カイムは冷静に剣を抜きギャラルへ向けるが、イウヴァルトはその前に躍り出てギャラルへ声をかけようとする。

 

「う、嘘だ!君が帝国になんて!」

「ええ、ギャラルは別に天使の教会のことはどうでもいいの。ただ、世界の再生に興味があるだけ」

「待ってください、そんな世界を滅ぼすなんて!」

「七支刀は覚えてないかもしれないけど、ラグナロク大陸だって一度枯れた世界樹から再生してるのよ?それと変わらないわ」

 

 説得も通じなさそうだと理解すると、カイムはイウヴァルトを押して退かし走り始める。目の前の"敵"を殺すために。

 一瞬だけ、ギャラルから笑みが消え悲しそうな表情をする。だがすぐに元の笑みを浮かべ、カイムの剣を軽く受け止める。更に力技でカイムの剣技を無理矢理いなし、弾き飛ばしてしまう。

 アンヘルも炎を吐こうとするが、それを予期していたブラックドラゴンが空から奇襲を仕掛ける。首根っこを押さえられ、地に叩き伏せられる。

 

「わたくしが!」

 

 咄嗟に神器を巨大化させ、七支刀が走る。しかし契約の力でより強くなったギャラルの剣と神器七支刀を何とか振るっている七支刀の剣では話にならず、こちらも弾き飛ばされしまう。

更にギャラルは容赦なく七支刀の腹を蹴り飛ばし、遠くに吹き飛ばす。

 

「チョッ、あんなヤベーやつと戦ったら命が幾つもあっても足りないですよ、レオナールさぁん!」

「女神が殺されれば世界が滅ぶのです。今やるしか!」

 

 全力で逃げたがっている妖精を強引に掴み、魔法を放つ。妖精の高い魔力が大量の魔法の玉となり、ギャラルへと飛来するする。

 しかし、ブラックドラゴンが炎で迎撃し全て防がれてしまう。その隙をついてアンヘルは抜け出そうとするが、逆に足に力を込められ首に強い負荷がかかる。

 

「待って!レッドドラゴンを殺さないで!」

 

 しかし、それにいち早く反応したのはギャラルだった。ギャラルの隙をついてカイムは立ち上がり、ブラックドラゴンへ走る。

 ブラックドラゴンに殺されそうになっているアンヘルを見て、カイムの脳裏に浮かんだのは目の前で殺された両親の姿。

 

『あんな悲劇、二度とごめんだ!』

「!?……カイム!」

 

 走ってくるカイムを脅威と感じたのか、或いはトドメを刺すチャンスだと感じたのか、今度はそちらへ炎を放つ。

 走るカイムを先回りしたギャラルは、鉄塊でブラックドラゴンの青い炎を防ぐ。

 

『!?何故庇った?』

「……ごめんなさい」

 

 まさかの行動に驚くカイムの腹を殴る。ギャラルの行動を読みきれないカイムはもろに食らい、今度こそ倒れてしまう。

 もう一度魔法を放とうとしているレオナールへ向かって飛び、背後から鉄塊の腹で殴る。咄嗟の反応が間に合わず、レオナールもまた倒れてしまう。

 今までとてつもない強さを見せていたカイム達があっという間に倒されていく姿に、イウヴァルトは絶望する。それでもフリアエを守るのだと必死に身体を動かし、ギャラルへと走る。

 しかし、イウヴァルトの剣は簡単に躱され、反撃に鉄塊で殴られる。契約者でも耐えれなかった攻撃にイウヴァルトが耐えれるはずもなく、また彼も地に伏せてしまう。

 もはや女神を守れるのは自分しかいないと、咄嗟にヴェルドレは呪文を唱え始める。しかし、彼は神官長であり一応契約者だ。当然警戒していたので、呪文が完成する前に近寄られ杖を蹴り飛ばす。しかも、蹴られた時に杖が自分に当たり、その衝撃でヴェルドレも激痛に倒れてしまう。

 守りがいなくなったフリアエへギャラルが接近する。それからギャラルはフリアエの耳元で、何かを囁いた。その言葉が届いたのは、目が見えず感覚の鋭くなっているレオナールだけだった。

 

「自分が幸せになれない世界なんて、滅んでほしいのよね?」

「……それは」

 

 否定しきれないフリアエのことも殴る。元々激痛に苛まれているフリアエは、それだけでも気絶するには十分だった。

 ギャラルはそのままフリアエを抱え、ブラックドラゴンの背に戻る。

 

『殺しでしか快楽が得られないのでしょう?大丈夫よ、世界の終わりだけは誰にも平等だから』

『!』

 

 カイムだけに聞こえるように"声"を飛ばす。赤目の病もありギャラルの心は歪んでしまっているが、それでもカイムのことを考えているのだ。

 更に、カイムは今まで純粋に復讐のために戦ってきていたつもりだった。しかし実際は殺戮を楽しんでいるのだと、その言葉で初めて自覚を持った。

 

「じゃあね、カイム。よき終わりを」

『待て、ギャラルホルン……!』

 

 用を終えたブラックドラゴンはギャラルを乗せたまま飛び立つ。

 伸ばしたカイムの手は、誰にも届くことはなかった。

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