帝国を知るためにオーガの心を読もうとするアンヘルへ、妖精の悲鳴が届く。
周囲の帝国ゴブリン兵を全滅させたカイム達は、近くの村へ向かう。そちらに指揮官部隊であるオーガ部隊が向かったはずだ。
先頭を疾走する七支刀にいち早く気がついたオーガは七支刀へ剣を振り下ろすが、七支刀は力任せの剣をうまく受け流し、逆に神器でオーガの体を切り裂く。
あんなにもあっさりオーガがやられた。それに焦ったのか複数のオーガが七支刀目掛けて襲いかかろうとするが、七支刀の背後から飛んできた複数の魔力弾が先頭のオーガへと襲いかかる。レオナールの放った魔法だ。
更に炸裂する魔法を目眩ましにしながらカイムはもう一体の懐へ潜り込み、片脚を切断。バランスを崩し倒れ込むオーガの脳天へ容赦なく剣を刺す。
ここは危険だ!オーガ達の本能がそう告げる。情けなく背を見せ走り出そうとするオーガの後ろで、七支刀は神器を解放する。回転する刃はエネルギーの嵐を生み出し、破壊的な暴力が逃げ出すオーガ達を襲う。
「凄いな、あのオーガをこうもあっさり」
少し離れた所でゴブリンを対処していたイウヴァルトが、神器の放ったエネルギーの生み出した音に驚き様子を見に来ていた。
「大将はまだ息があるようだな」
アンヘルは、少し遠くに逃げ出していたオーガが即死していないことに気がつく。
「我が心を読もう」
また祈りだしている七支刀を横目に、カイムはオーガの身体に触れる。フリアエが何処へ連れ去られたのか、少しでもヒントになればいいのだが。
そんなカイムを気にせず、この地で散った亜人帝国兵へ祈る七支刀へイウヴァルトが歩いてくる。
「俺の教えた剣技、少しは役に立ったのか?」
「はい、ありがとうございました!」
素直に返事する七支刀だが、イウヴァルトは少し悔しい気持ちになる。
カイムと共に何年も修行して得た剣技、それの極一部とはいえ、こんなに早く吸収する才能が羨ましいのだ。カイムでさえここまでの早さで身につけることはなかっただろう。
「……キル姫は、そんないいものではありませんよ?」
イウヴァルトの顔を見て、考えていることがなんとなく想像出来るようになってきていた。
心を読まれたと思ったのかイウヴァルトは驚いた様子だが、単に分かりやすいだけだ。
「キル姫はキル姫です、普通の人間ではありません。寿命もとても長いですから、例えば普通の恋をするのだって難しいくらいです」
「そうか……悪かった」
イウヴァルトは七支刀の言葉に引っかかりを覚える。まるで、恋をしたいかのような言い方だなと。
更に、もう一つ気になっていたこと。フリアエが攫われた直後はその事で頭がいっぱいになっていたが、今はそこそこ落ち着いている。フリアエのことを助けたいのはもちろんだが、そこまで焦りを感じない。
「いえ、わたくしも意地悪な言い方をしてしまいましたね。申し訳ありません」
少し笑いながらも謝る七支刀に、イウヴァルトは見惚れていた。
そんな二人をカイムは眺めていた。心を読むのには思ったより時間がかかるらしい。
「仲の良さに嫉妬でもしたか?」
『あんな女と仲良くなりたいとは思わないね』
「フリアエとなら、どうだ?」
アンヘルの問いかけに、カイムは答えない。
「相変わらず、目を逸らすのだけは得意だな。……さて、見えてきたぞ」
『何が見える?』
「女神……帝国……要塞……要塞だとっ?そんなモノ、いったい何処に?」
アンヘルが疑問を口にした直後、契約者達に"声"が届く。それは、妖精の悲鳴だった。
「オイオイオイ、やられちまったなア?逃げ出してきて正解だったぜ」
「……まさか!」
「そう、オレ達が守ってた封印が破られたんだよ。ギャハハハ!!」
同胞の死さえ笑い飛ばす妖精の醜悪さに、レオナールは顔をしかめる。しかし、自分も他者を侮辱できるような者ではないとすぐに思い直す。
「……これでは、三つの封印は絶望的だな」
妖精の悲鳴が聞こえなかった七支刀とイウヴァルトは、若干話に置いてかれそうになるが、とりあえず状況は理解する。
「残る封印は女神の命のみ。急ぐぞカイム!」
帝国領への進軍を再会するために全員支度をし直し、また雪原を進んでいくのだった。