連合軍の総力を結集し、この戦いを終わらせる。七支刀も平和への祈りと共に、剣を握るのであった。
第1節 昇る幕
飛来する赤いドラゴンの姿を見て、連合軍の部隊にはどよめきが走る。しかし、連合軍最高指揮官でもあるヴェルドレが現れることによってどよめきは収まる。
「本当に子供が戦っているのか」
「凄い格好だ。服もなくなるほどの激戦だったのか?」
連合兵の視線が自然と七支刀へ集まる。セクハラじみたことまで言われていて顔が熱くなるが、決戦が始まるこの時に士気が下がることはあまり言うべきではないと口を閉じる。
カイムの様子を見てみれば、相変わらず笑みを浮かべている。そんなに戦うのが好きなのだろうか。
「カイムは、相変わらず激しいやつだよな」
イウヴァルトが口を開く。激しいとは優しい表現だと感じる。彼はそんなものではない。
「しかし、今はそんなカイムの強さも頼もしいものです」
「そーだよなァ?アレがいなきゃオレ達殺られちまってるかもだよなァ?………やだなあレオナールさん、冗談ですよ。レオナールさんが死しんじまったらオレも死ぬんですから。ギャハハハ!」
そして妖精も変わらず減らず口をたたいている。改めて冷静になると、凄い人達と共に来たんだなと考える。
そんな七支刀も、イウヴァルトから見たら"凄い人"の一人なのだが、自覚はない。
「戦いを終わらせて、フリアエ様も助けてハッピーエンドにしましょう!」
「ああ、そうだよな」
イウヴァルトやレオナールを心配させないように、明るい声を出すが、一つ心配があった。
イウヴァルトは気づかないが、感覚の優れているレオナールは違和感に気がつく。しかし今指摘するべきではないだろうと思い、妖精を掴んで懐へ戻す。なにすんだよー!と抗議の声を上げるが、わざわざ聞く必要はない。
「……心配か?あの小娘が出てくることが」
七支刀は、アンヘルの心配という言葉を聞いてドキッとするが、どうやら自分ではなくカイムに声をかけたらしい。確かにギャラルホルンのことも気にはしているものの、一番はそこではない。
逆にカイムはギャラルホルンのことを気にしていた。前回の戦いは、奇襲のようなものだったとはいえこちらが一方的に敗北している。自分たちはともかく、他の味方の兵がアレに襲われればひとたまりもないだろう。
そして何よりも、彼女の行動が読めない以上出てくるかどうかも分からない。警戒するに越したことはない。もし出てくればフリアエの居場所を聞けるかもしれないし、仮に来たとして悪いことばかりではない。
「女神のことが心配です。帝国を打ち破り、一刻も早く救出しなければ」
「世界の再生、まったくおぞましいことを考えるものよ」
カイム達が僅かな休息を挟んでいる間にも、連合、帝国共に隊列を組んでいく。決戦が始まろうとしている。
連合の青い旗と、帝国の赤い旗が高く掲げられる。ヴェルドレが連合軍の後方に立ち兵達へ激励の言葉を告げると、それを合図とするように前方の各隊の隊長が剣を掲げ、連合軍全体が前へと動き出す。
共にカイム達も走り出す。決戦の幕は上がった。