ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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連合軍と帝国軍の戦いは、連合軍が異様なくらい優勢で進んでいった。
カイムはその違和感を抱えつつも、味方の士気を落とさぬように戦い続けていた。


第2節 仕掛けられた罠

 カイムが剣を振るたびに、帝国兵が死体に変わっていく。他の連合兵の追随を許さぬ勢いでカイムは戦っていた。

 レオナール、七支刀、イウヴァルトもまたそれぞれの場所で戦っている。帝国兵はレオナールの放つ魔法で吹き飛び、七支刀の振る神器で散っていき、またイウヴァルトも一つの隊の隊長として前線を引っ張っていた。

 カイムはあまりにも一方的な虐殺へと最初は歓喜していたが、次第に違和感を覚え始めていた。軍全体で見れば、連合軍は帝国軍に劣っていたはずだ。帝国軍の異様な力と、機械のように整った連携に押されていた。

 幾らこの戦場に契約者二人とキル姫が一人いたとして、ここまで有利になるだろうか?

 その違和感の原因を探るために注意深く敵の動きを観察していると、帝国兵の動きが不可解であることに気がつく。連合兵の誰かが近づかないと帝国兵は動かないのだ。基本的に待ちの構えだ。

 しかし、そんな気にすることでもないだろうと流してしまう。元々機械のような奇妙な連携を取っているような奴らだ、今回もそれと変わらないだろうと考えたからだ。

 

 戦局がひっくり返ることもなく、順調に帝国兵を殲滅していく。遂には帝国軍の指揮官部隊も丘陵地帯の中心部へと追い込んでいく。やつらを倒せば連合軍の勝ちも決まる。

 カイムは勢いよく指揮官部隊の元へ走っていくが、七支刀は立ち止まる。ずっと神器を振り流石に疲れたのもあるが、わざわざ中心部へと移動する指揮官部隊の動きをおかしいと感じたからだ。

 

「レオナール様、帝国軍の動きが怪しくないでしょうか?」

「ええ、しかし指揮官は倒さねばなりません」

 

 丘陵地帯を見据えようとするレオナール。目が見えないのもあり、帝国兵が積極的に攻撃してこないことには気がついてはいた。しかしそれが何を意味するのかまでは到達出来ていない。

 

「七支刀!レオナール!カイムは?」

 

 遠くから走りながら声を上げているのはイウヴァルト。彼の持ち場にいた帝国兵が片付いたのもあり、移動してきたのだ。

 

「カイム様なら最前線です」

「なら、俺達も」

「待ってください。この気配……」

 

 突如、レオナールの顔が厳しくなる。感覚の優れているレオナールは早く気がつくのだ。

 そして前線まで進んでいて、やはり感覚の優れているアンヘルも当然気がついた。

 

「カイム!この匂い……やつが来たぞ!」

 

 カイムはアンヘルの言葉に反応し空を見上げる。遠くから迫る影は、ブラックドラゴンのものだ。

 何故帝国軍が壊滅しているこのタイミングで来るんだ?

 疑問はあるが、迎撃しない訳にはいかない。カイムはアンヘルの背に飛び込み、ブラックドラゴンを待つ。

 ブラックドラゴンの背にはやはりギャラルホルンの姿が。真っ直ぐこちらに向かって来る。炎を放ち足止めしようとするが、ひらりと躱しながら迫る。

 ……しかし、反撃が来ない。それどころか、アンヘルの前で止まったのだ。

 

『何をしにきた』

「逃げてカイム、これは罠よ!」

「……やはりか!しかし何故貴様が我らに助言をする?」

 

 罠だという言葉にアンヘルは納得する。これまでが優勢過ぎたのだ。だが、敵である筈のギャラルホルンが忠告をすることへの疑問は拭えない。それこそ罠ではないかと考えてしまう。

 

「いいから早く!」

『……引くぞ!レオナールもヴェルドレに伝えろ』

『信じるのですか!?』

 

 カイムは自分の発言に少し驚く。帝国に堕ち、フリアエも攫った目の前の女の言葉を信じようと思ったからだ。

 あの時自分たちを一人も殺さなかったから、殺すことが目的ではないと考えられるが信じる理由としては足りない。ただ、彼女が必死なのが自然と伝わってきたのだ。

 

「ううっ!これ以上は……!」

 

 ギャラルホルンが頭を抱え苦しんだ様子を取ると、ブラックドラゴンは翼を翻し空を上っていった。

 本当に忠告しに来ただけなのか。やはり不可解な動きを取ることに疑問を感じつつも、アンヘルを急がせる。

 

「裁きがきたぞー!」

 

 地上で、生き残りの帝国兵が突然声を上げる。天を仰ぐように手を伸ばす。

 直後、空から何かが落ちた。緑色に輝く、巨大な魔力の玉が降る。ヴェルドレからの避難の指示を伝えようとしていた者も、残党を処理していた者も、最前線で指揮官部隊を追い込んでいた者も、突然の出来事に足が止まる。

 ………爆発が起きた。連合兵は、声を上げる時間もなく爆発に巻き込まれ、消し炭になっていく。

 

 それはあまりにも絶望的な光景だった。先程まで勝ちを確信し盛り上がっていた戦場が、破滅的な力によって消し飛んでいく。

 玉は一つだけではない。幾つも空から降り注ぎ、それら全てが巨大な爆発を起こし焼け野原へと変えていく。

 七支刀は目の前で理不尽に奪われ消える命に悲しむことさえできなかった。ただ爆発を凌ぐのに必死だった。神器七支刀を地面に差し盾にしている。イウヴァルトも七支刀の背中に慌てて隠れ、レオナールは魔法で障壁を作る。オイオイオイ俺を殺す気かー!と妖精が必死になって叫ぶが、爆音に巻き込まれレオナールにさえ届かない。

 カイムとアンヘルも避難は間に合い被害はなんとか免れた。もしギャラルホルンの忠告がなければ……

 焦土になった丘陵地帯を眺めながら、何故ギャラルホルンは俺を助けたんだ?と考えていた。

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