しかし、要塞内は邪悪な波動に満ちていた。
要塞内に入ったカイム達を待ち受けるように帝国兵が襲いかかる。いつも通り斬り捨てようとするカイムだが、鬼気迫る帝国兵の雰囲気に違和感を覚える。
侵入者を排除するというより、目の前の敵を殺す。そういう動きをしている。これは……
「邪悪な気配を感じます。帝国兵が凶暴化しているようです」
『まだフリアエは視えるんだろうな?』
「ええ、この要塞にいます」
正直、この要塞にいる帝国兵を皆殺しにしたい気持ちはある。しかし、今だけはフリアエを助けるのが優先だ。
道を塞ぐ邪魔な帝国兵だけを斬り、他は無視して要塞内を走る。無限にいるのではと錯覚するだけの量の帝国兵が追ってくる。レオナールの魔法で追手を散らし、先にいる相手はカイムの剣で殺す。
そんな連携を取りながらもひたすらに要塞内を走り続ける。複雑な造りになっている要塞内に溢れる凶暴な帝国兵に、どうしてもカイム達は手間取ってしまう。
『その者達とまともにやりあっていては命がいくつあっても足らぬぞ。一刻も早く女神のもとへ急ぐのだ!』
ヴェルドレからの声。正直真面目に相手するのならカイムにとって敵ではないのだが、フリアエを探しながら急いでとなると厳しいのも事実。
「邪魔な気配がより強くなってきました」
『雑魚どもがより波動の影響を受けておるわ。気を付けろ、カイム!』
階段を登り上の階に行くが、帝国兵の凶暴さが更に増していく。一刻も早くフリアエを助けなければならないこの状況では苛立たしいだけだ。
しかしこれだけ厳重な守りになっているということは、フリアエがいるという証拠でもある。
更に進み最上階へ続く階段が見えるてくるが、周りには帝国兵の壁が出来上がっていた。これは全滅させなければ進むこともできないだろう。
こんな時でも帝国兵を殺すことに快楽を見出してしまう。無意識の内に笑みを浮かべカイムは走る。それを追い越すようにレオナールの魔法が飛び、最前列を吹き飛ばす。
爆風で見えなくなっているのもお構いなしにカイムは飛び込み、帝国兵を斬り刻む。凶暴化していようが所詮は人間だ、斬れば死ぬ。
「オイ、もう魔法は撃てねーよ!どんだけ撃つんだよ殺す気かァ!?」
もう一度魔法を唱えようとするレオナールだが、妖精からギブアップの宣言。流石の妖精でも魔力は尽きたようだ。
「後はあのやべー奴に任せましょ?あんたがいなくてもアレは殺るぜ?」
妖精の言葉を無視し戒めの塔を抜く。確かにカイムだけでもきっとやるだろうが、時間が惜しい。
そもそも妖精が嫌がっているのは、凶暴化した帝国兵相手にビビってるからであり相手にする必要性なんてない。
幸い閉所だからか、或いは凶暴化させられているからか、弓兵の姿はない。理性をなくし突っ込んでくるだけの相手など容易い。振り下ろされる剣を躱し、弾き、その数だけ斬り返す。
レオナールはカイムほど剣術に優れている訳では無いが、それでも何とか躱しながら反撃をしていく。
それを続けていればその内帝国兵もいなくなる。出来上がったのは死体の山だ。
死体を気にもとめず階段を登ろうとするカイムの後ろで、レオナールが声を上げる。
「女神が……急に視えなくなりました……」
『まさか!』
急いで最上階へ進み、最低限しか配置されていない帝国兵を散らし進むと、そこには魔法陣があった。当然、フリアエの姿はない。
「空間移動……?」
『ちっ、遅かったか!?』
『この魔法陣の先にフリアエがいるのか!』
転移の魔法陣が消えずに残っているということは、まだ転移してからそんなに経ってないはずだ。
カイムの意図を汲み取ったレオナールと共に、魔法陣の中に入る。
二人の転送された先は……