そんなカイムの前に、ギャラルホルンが現れる。
第1節 罠
転移の光が収まると、そこは要塞の中だった。
『カイム。私は別の場所へ飛ばされたようです。手分けして女神を探しましょう』
『空中要塞だな?我も向かおう。……死ぬなよ』
レオナールとアンヘルからそれぞれ声が届く。カイムもフリアエを探しに行きたいところだが、目の前にいる相手のせいで動けない。剣を抜き警戒する。
「ふふ、そんなに警戒しないでよ、カイム」
ギャラルホルンだ。相変わらず赤い目でこちらを見ている。ここに来るのが分かっていたのか、ここで待っていたのか。しかも他の帝国兵の姿はない。
「フリアエの所へ案内するわ」
『何故だ?お前はフリアエを殺し世界を再生させるのではなかったのか?』
「サイセイ……?」
まるで初めて聞いた言葉化のように、目を丸くしながら呟く。なるほど、もはや何が目的だったかも見失っている。狂気に飲まれたか。
「もう十分時間はあげたでしょ?世界が滅ぶこと、受け入れられるわよね?」
『ふざけるな。フリアエを殺させはしない』
ハッキリと否定する。帝国の傀儡と化したこの女と話すことなど今更ないが、かなりの強敵なのは事実。襲いかかってくるかと思い構えるが、想像もしてなかった反応をした。
「……なんでギャラルを否定するの!?カイムの馬鹿!世界が滅んだ方が絶対に幸せだよ!?」
それは、癇癪を起こした子供のようだった。ぎゃんぎゃんわめいたと思えば、ぎゃーぎゃー泣き出してしまう。
相手にするだけ時間の無駄だと思い、無視して進もうとするが腕を掴まれる。振り払おうとするが、見た目からは想像できないほどの怪力だ。
「ギャラル、司教にカイムを連れてきてって言われてるから、一緒に行けば帝国兵もいないわ」
『……何?』
司教が俺を連れてこいと言った?分からないことが多すぎる。
間違いなく罠だろうが、こちらにとっても好都合だ。罠など壊してしまえばいい。
「ギャラルはね、カイムを悲しませたい訳じゃないの。ただ世界が滅んだほうが幸せだってみんなにわかって……!?」
言い訳するようにまくし立てるギャラルの頬を叩く。
『俺のためだと言うなら早く案内しろ』
「……うん」
ギャラルホルンは、まるで空中要塞を自宅の庭のように慣れた手つきで進んでいく。レオナールが戦っているのか剣戟の音は響いてくるが、自分たちの進む道には誰もいない。
『司教は何故俺を連れてこさせる?』
間違いなく狂ってはいるものの、カイムのためカイムのためだとわめいてるギャラルホルンなら、答えるのではないかと質問をしてみる。
「封印を破壊するためだって。カイムのお陰で世界は救われるのよ?ぬひひ」
世界が滅ぶことを、世界が救われると本気で思っているのだろう。そこには邪気のない、純粋な笑顔を浮かべるギャラルホルンの姿。
こいつと会って、帝国に堕ちるまでの僅かな時間を考えても、そういうことを言いそうには見えなかった。何がこいつをこのまで狂わせた?
……少し考えて、どうでもいいと思考を終わらせる。中途半端に理性が残っているせいで相手しづらいが、敵は敵だ。フリアエを助けたら殺してやる。
カイム達は要塞を下っていく。どうやら高い階に来ていたようだ。レオナールの気配は遠のいていく。あくまで俺に用があるということか。
『我の"声"が聞こえていたら、返事をしろ。無事にたどりついたのか?』
アンヘルの"声"が届く。空中要塞まで近づいてきているのだろうか。
『ああ、俺は無事だ。だが罠かもしれない』
『ほう?あのキル姫がおるのか。気をつけよ、何が仕掛けてあるかわからんぞ』
「……どうしたの?祭壇が見えてきたわ」
"声"でアンヘルとやり取りしていることには気づいてないようだ。ギャラルホルンの案内で、祭壇とやらに近づいている。
扉を開け祭壇に飛び込むと、そこにはフリアエがいた。