ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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ギャラルホルンに導かれ神殿内部を進むカイムはフリアエが囚われている祭壇に近づきつつあった。

だが、その先でカイムとフリアエを待つのは、司教マナが仕組んだ最後の儀式だった。


第2節 落花

 祭壇にはベッドが一つぽつんとあり、ナイフが刺さったぬいぐるみが転がっていた。その側に、フリアエの姿が。

 フリアエに駆け寄ろうとするカイムだが、その近くに誰かの姿があることに気がつく。

 

「あの子が司教よ」

 

 ギャラルホルンは説明しながらも、カイムの背後に回る。逃がすつもりはないらしい。

 

「兄さん!?」

 

 フリアエもギャラルホルンの言葉に反応してそちらを初めて見た。そこには愛しい兄の姿があった。

 しかし、司教ナマは笑う。その姿に見合わない男の声で。

 

「天使は笑わない。天使は起こしてはならない……」

 

 すると突然、何かに引っ張られるようにフリアエの体が浮き、近くの柱へと叩きつけられる。そこにくっついて離れなくなる。

 カイムが動き出すよりも先に、マナは言葉を紡ぐ。

 

「ラララララ、ララ、ララララ……私は女なのに、普通の女なのに、どうしてこんな……ちぇっ、ちぇっ、クソが!」

 

 見た目の相応の少女の声と男の声が混じる。

 

「やめて……」

 

 フリアエは苦痛に顔を歪ませる。それは叩きつけられた痛みからだろうか。それとも……

 

「封印がなんだってんだよ!私を助けろよ!役に立たない男どもめ!助けてください。おねがい。助けて。抱きしめて。お兄ちゃん」

「いや!!」

 

 心を暴かれる苦痛からか。

 

「わたし、あなたの心が読めるの。ふふ、うふふふ……」

「違うわ、私……そんなこと思ってない」

 

 フリアエは必死に否定しようとする。よりにもよって愛する兄が目の前にいるこの場で、汚い心を、本性を暴かれるのだけは避けたいからだ。

 

「憎い、憎いよ、クソ野郎!こんな世界滅びればいい!」

「違う!」

 

 しかしマナは容赦なく言葉を続ける。当然だ、その為にカイムを連れてきたのだから。女神の薄汚れた本性を、愛する、男として愛する兄の前にぶちまけて晒すために。

 

「汚いの。私、汚いの。女神なんかじゃない。諦めてるだけ。お願い、お兄ちゃん。私に……」

「ごめんなさい!!」

 

 もう認めるしかなかった、薄汚い自分の本性を。でなければ、マナは言葉を続けていただろう。

 絶対に口にされたくない。こんな汚い女が、血の繋がった兄を男として愛しているなんて。兄妹で男と女の関係だなんておかしいと、理性があるからこそ否定してしまう。兄もそれを認めないだろうと考えてしまう。

 

「はい、女神失格……どうする?」

 

 女神失格の言葉と同時に、フリアエの拘束が解け柱から離れる。

 マナは楽しそうにフリアエを見守る。これから何が起こるのか期待しているのか、或いは知っているのか。

 カイムは突然のことに呆然としながらも、フリアエへ一歩歩み寄る。そんなカイムへ、フリアエは救いを求めるように視線を寄越す。二人の視線は合い、交わり、そして………カイムは、目を逸らした。

 カイムが何を思って目を逸らしたのかは、フリアエには伝わない。カイムには言葉を伝える口が閉ざされているから。だから、それは拒絶の意思だと伝わってしまう。

 ショックのあまりふらつき柱へもたれかかる。フリアエの視線の先には、ぬいぐるみに刺さったナイフ。そのぬいぐるみからナイフ取り、フリアエは

 

『フリアエ!!』

 

 自分の胸に、ナイフを突き立てた。

 

 カイムは、代償の重さを知る。カイムが視線を反らしたのは、決して拒絶したからではなかった。それも……愛していた故だった。性的な感情を抱いていたのはフリアエだけではなく、カイムもだった。そしてそれはお互い知ることなく、お互い普通ではないと思い、最期まですれ違った。

 ふらふらとフリアエは柱へと戻り、寄りかかる。

 

「私を……見ないで……」

 

 それが、最期の言葉になった。

 

「天使は、笑う?」

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