そこへ神官長からカイムへ"声"が届き、フリアエ達は彼の元へ向かうことに。
更に集落の探索を続けるギャラルホルン達は、新たなキル姫と出会う。
「地獄だ……地獄だよ……」
壊滅している集落を目撃したイウヴァルトは、その場に崩れ落ちる。安寧の地などないのだ。
森に囲まれた集落はドラゴンの身体には狭いため、上空から見下ろしていた。だからこそ違和感を感じる。一方的に襲われ壊滅したのなら、帝国兵の死体があるのはおかしいのだ。
そもそも橋を渡り森に入ってからはまともに帝国兵とは交戦していない。まだ生き残りがいるのではないかと考える。
その思考をしていると、ドラゴンとカイムに"声"が届いた。
「神官長ヴェルドレから"声"が届いたぞ」
「神官長?」
ギャラルは聞いたことのない単語に首を傾げる。
「ああ、知らないんだな。封印を管理する神官の中でも、最上位の者だ。普段はフリアエはその人としか会えないらしい」
イウヴァルトが説明してくれる。ゆっくりと立ち上がりながら空を見上げ、今度はイウヴァルトが疑問を口にする。
「しかし、"声"?神官長も契約者なのか?」
そう、"声"を届けられるということは神官長も契約者ということになる。契約者同士でしか出来ないのだから。
「ああ。相手のドラゴンは既に石化しておるがな」
「彼は今どこに」
そう質問するのはフリアエだ。この場にいる者で、ヴェルドレと面識があるのは彼女だけだ。
「神殿巡礼中で砂漠にいる。異常事態を危惧し、女神の保護を申し出てきた。早急に向かうが良い」
「……すまない、フリアエ。俺ごときではフリアエを守れないな」
中立の場所なら大丈夫だろうと連れてきた挙げ句こと有様な自分と、保護を申し出る神官長を比べてしまい、更に落ち込むイウヴァルト。
「あなたの歌に、私は癒やされます」
「君もそういうんだな。けれど、歌なんかじゃ君を守れない。力が欲しい……!」
そう呟くイウヴァルト。カイムとレッドドラゴン、そしてギャラルの戦いぶりを見ていたイウヴァルトは、より力を欲していたのだ。愛するフリアエを、"自分で"守るために。他の誰でもない、元許嫁である自分で。
ドラゴンの言葉の通り、神官長の元、砂漠へ向かうために一行はまた歩み始める。
しかし、カイムが動き出さないのに気がついたギャラルは止まり、声をかける。
「行かないの?」
「いや、我らはもう少しここを調べる。フリアエのことはお前に任せるようだ」
その言葉が、イウヴァルトとフリアエと一緒にいさせてあげようという気遣いだと理解したギャラルは、ならば自分もここに残った方がいいだろうと考える。
「ならギャラルもここに残るわ。カイムのことは任せて頂戴」
「……我々は女神の護衛をします。カイム様のこと、お任せします」
連合兵、イウヴァルトとフリアエは神官長に会うため砂漠へと出発した。
残ったのはカイムとギャラルだ。レッドドラゴンがギャラルへと声をかける。
「少し奥へ進んでみよ。奇妙な格好をした女がいる。知り合いではないか?」
レッドドラゴンは話しながらも、空から集落を観察し続けていた。
倒れている死体の中に、奇妙な格好……妙に露出の多い格好をしている者がいる。その目の前にはまた不思議な形をした剣のような物がある。
戦場に似つかわないドレスに角笛というこれまた妙な武器を使っているギャラルホルンと、同じキル姫ではないかと考えたのだ。
キル姫がここで戦っていたのなら、帝国兵の死体があることも頷ける。
ギャラルとカイムが言われた通り調べてみると、確かにメイド服を簡略化したような格好をした少女が倒れている。血まみれになっているが、よく見れば目立った外傷は殆どない。脈もあるので、気絶しているだけだと分かる。
すると、近くのボロボロになっている家屋から一人の女性が顔を出す。カイム達に気がつくとヒッと悲鳴を上げ、家屋にまた隠れてしまう。
「待って!ギャラル達は帝国の者ではないわ」
おずおずと顔を出し、襲ってくる気配がないことを理解すると改めて姿を表した。
「エルフか。生き残りがいたか」
「はい、その子が助けてくれました」
その子、というのは倒れている少女のことだ。エルフの女性は介抱するために姿を表したのだ。戦いの音がしなくなったから、帝国兵もいなくなったと踏んだのだろう。
「そやつはキル姫だろう。ギャラルホルン、おまえが話を聞いておけ。我らはその間に探索しているぞ」
エルフは井戸水を汲みに行き、ギャラルは布を探す。
それから、濡らした布で血を拭いていると、少女は目を覚ます。
視線はエルフの女性を見たあと、ギャラルへと映る。そして身体を起こす。
「集落は!?」
そして、目にするのは壊滅した集落。その表情は、落胆、そして自己嫌悪へと変わる。
「貴方のお陰で私は助かりました」
「いえ、わたくしがもっと強ければ皆様のことをお守りに……」
それから少女は改めてギャラルへと視線を合わせた。
「ギャラルホルンよ。ギャラルでいいわ」
「七支刀です。あなたはどうしてここに」
お互いにキル姫だとは言わない。キル姫特有のキラーズの共鳴により、キル姫であることは察しているからだ
ギャラルはこれまでの経緯を全て話した。帝国軍と連合軍のことや、中立の地であるエルフの里に封印の女神を避難させる為に来たこと、今はカイムとレッドドラゴンとギャラルだけがこの場に残り探索していること。
それを聞いた七支刀は考える。七支刀の願いは、みんなが平和で幸せな世界にすること。けれど、その平和を一方的に破壊し虐殺をしている帝国軍とは戦わないといけないということ。
「あの、ギャラルホルン様。わたくしも連れて行っていただけないでしょうか」
「そんなに畏まらなくてもいいわよ?ギャラルで……」
「ギャラルホルン様!」
ぐいっとギャラルへと近づき、強く主張する。
「その、カイムに聞いてみるわ。ギャラルは構わないけど」
若干目を逸らしつつ答える。七支刀、間違いなく戦力にはなるだろうが、カイムはいいと言うだろうか。
「帝国軍を追うのなら、この近くの渓谷に、”天使の教会”の宮殿があります。そこにみんな連れられていきました」
エルフの女性が二人にそう教える。そこが次の目的地になるだろう。
エルフの女性とは別れ、避難を勧める。そして、カイムと合流するのだった。