ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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レオナールと合流したカイムは、アンヘルの翼で帝都へと向かう。
しかし黒いドラゴンと共に、ギャラルホルンが彼らを追撃する。


第玖章 鎮魂
第1節 何の為か


「卵を破壊せねば人類は滅ぶぞ……!」

 

 アンヘルの雄大な翼が空を舞う。空中要塞から降りながらも、帝都のある方向へ飛び立つ。しかし、レオナールは"視"た。

 

「来ます……黒いドラゴンの姿が要塞から出ました」

「ほう?やつも来るか」

 

 アンヘルは、僅かに楽しそうな声を上げる。強敵との戦いは嫌いではない。

 

『構っている場合か!』

「分かっておる。振り切るぞ!」

「炎が来ます!」

 

 ブラックドラゴンの放つ青い炎が、アンヘルの横を通る。同時に笑い声が響く。その声は聞き覚えあるが、笑い方が違った。あれはもはやギャラルホルンでさえないのかもしれない。

 

「アハハハ!行かせないわ、人類は滅ぶのよ!そして……!」

「やはり、再生の卵は人類を滅ぼすものなのですか?」

「……言うなれば、断頭台よ。やつはその刃を振り落とすつもりだな」

 

 アンヘルとブラックドラゴンの速さはそんなに変わらない。しかし、炎を放ちながら進むブラックドラゴンと、避けながら進むアンヘルではどうしても距離を縮められる。いつかは逃げ切れない距離まで詰められる!

 

「カイム!フリアエの元に連れていってあげるから!」

『俺はそんなこと望んでいない!』

「黙れ!お前にカイムの何がわかる!」

 

 ……何を言っているんだ?カイムは俺だ。俺を差し置いて俺のことなど誰がわかるか!

 

「落ち着けカイム!あれはもはやお前のことなど分かっておらぬ。偶像にしがみついているだけだ」

「……これが、帝国についた者の末路だと?」

 

 レオナールは本来のギャラルホルンを知らないが、それでも完全に正気を失ってしまっていることはわかる。他の帝国兵も普通ではないが、みなああやって狂わされているのかと考える。

 

『何であれ敵だ。殺すだけだ』

「……ほう?」

 

 アンヘルが意味深に笑みを浮かべる。カイム達から表情が見えないから、二人は気が付かないが。

 カイムが敵を殺すことしか考えていないのはいつも通りだ。しかし、その殺すという意思に僅かながら迷いを感じた。

 

「大丈夫よカイム!あの敵を殺せば、世界は終わるわ!あなたを救える……」

 

 距離を詰められるたびに、ギャラルホルンの表情がよりハッキリと見えてくる。狂気に堕ちた笑みを見ると、何故か悲しい感情が生まれる。

 何故だ?ただの敵だぞ?

 カイムは困惑する。カイムを救うなど言っているが、あれもイカれた頭で妄言を吐いているだけに過ぎない。知り合い以上の何者でもない。なのに?

 

「帝都が見えてきたぞ!……これは!?」

 

 二匹のドラゴンによる飛行の果てに、ようやく帝都の空が見える。しかし、赤く染まった空には無数のワイバーンが、妖精が、モンスターが、滅茶苦茶に飛んでいた。

 無造作に放たれるブラックドラゴンの炎が、アンヘルに当たらずにモンスターの群れに直撃し落とす。狙っていなくとも当たる程度には密集しているのだ。

 

「オイオイ……嘘だろ?」

 

 レオナールの懐から顔を出した妖精が絶望の表情を浮かべる。あまりの光景に、いつもの憎まれ口も出ない。

 

『カイム!我々も辿り着きました。七支刀もイウヴァルトも一緒です。封印は!?』

 

 カイム達へヴェルドレからの声が届く。この光景を見れば、封印がどうなったかなど分かる筈だが、それでも希望を捨てきれないヴェルドレは問を放つ。

 

『破壊されたぞ。"卵"を斬れ、滅びたくなければな』

『卵を……二人に伝えましょう。ああ、封印なき今、私はどうすれば』

「無理よ!卵は無数にあるの、全て斬るなんて出来ないわ!」

 

 声を盗み聞いていたのか、ギャラルホルンは無理だと叫ぶ。いや、本当に無理ならここまで追撃させるだろうか?できるからこその妨害なのでは。

 

『レオナール、降りられるか?』

「もう少し高度を低くすれば行けます。私も破壊に向かえと?」

『ああ。ドラゴン、もう少し降りてくれ』

「簡単に言う!」

 

 ただでさえブラックドラゴンの追撃を躱すのでもなのに、群れを蹴散らしながら地上に近づけというのだ。中々に無茶な要求に、アンヘルも流石に悪態をつく。

 しかし、何とかやってみようと炎で辺りを蹴散らし始める。

 

「……ねえ、あの人を行かせてあげようよ」

 

 突如ブラックドラゴンの攻撃が止む。それどころかアンヘルを狙うモンスターを撃ち始めた。

 

『お前は!何がしたい!?』

 

 いつもいつも理解できないことをし惑わせるギャラルホルンへ、苛つきながらカイムは"声"を投げる。妨害に来た筈なのに、何故助けようとする?

 

「分からぬが都合が良い。降りるぞ!」

「待てよ、あの地上に降りる気か?そっちもモンスターだらけだぞ!?臆病なレオナールさんには無理だからこのまま逃げましょうよ待って分かったからほんとやめてやめろおおお!」

 

 アンヘルは地上へと急降下する。全力で嫌がる妖精を掴み、地上へ最も近づく瞬間を狙いレオナールは飛び降りる。少し遠くにヴェルドレの気配もするから、合流も出来そうだ。

 レオナールが無事に降りたことを確認すると、アンヘルは再び空へ舞い戻る。こうなることを望んでいたかのように、ブラックドラゴンとギャラルホルンは待っていた。

 赤い空に、二匹のドラゴンが対峙する。

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