レオナールと合流した七支刀達は、再び神殿へと向かうために、結界を解くことを選ぶ。全てを終わらして、平和を取り戻せると信じて。
七支刀とイウヴァルトの振る刃は、亜人を斬り伏せる。更に二人の背後でヴェルドレは呪文を唱え、迫る亜人の動きを封じる。そんなヴェルドレの背後は連合兵が守る。
そういう陣形を組みながら、迷路のような街を奔走していた。建物が全体的に縦に長く、視界があまり広くないのも相まって迷いやすくなっている。
更に、目につく卵を破壊しながら進んでいるので、進むこと自体が遅いというのもある。
そんな中、彼らの視界に映ったのは空から落ちていく影。それがカイムだということにイウヴァルトが気がつく。
「あれは……カイム!?」
七支刀とヴェルドレも反応し、空を見る。ヴェルドレはあのカイムが負けてしまったのかと錯乱気味になるが、七支刀はカイムを追いかけるようにして降りていく影を見た。
……正直遠くて、それが何だったのかを断言は出来ない。しかし、あれはギャラルホルンなのだと直感が言っていた。一度会っただけだし、どういうキル姫なのかもほとんど知らないが、それでも帝国に堕ちきってなどいないと信じたかった。
「大丈夫です、カイム様は……」
「本当か!?……いや、君が言うんだ。信じるぞ」
「……"声"を感じます。確かに死んではいないようだ」
少しだけ落ち着きを取り戻したヴェルドレが、彼の生存を確認する。無事かまでは分からないが、きっと大丈夫だ。
しかし、この場にいる全員がカイムに釘付けになっていた。だからこそ、お構いなしに攻めてくる亜人への反応が遅れる。
慌てて剣を振ろうとする七支刀の目の前で、亜人は爆ぜた。この魔法は……
「大丈夫ですか!何とか間に合いました」
レオナールだ。カイムと別れた彼はこちらへと合流出来たのだ。
「カイム様は?」
「ギャラルホルンとブラックドラゴンとの戦いに。私は再生の卵を破壊することを優先しろと、カイムから聞いております」
「イヤ〜、ムリだろ!封印は破壊されたんだぜ?しかもこの有様!」
しかし、彼に突いている妖精が士気を下げるようなことを言い始める。実際、七支刀がいなければここにいる他の全員も諦めていたかもしれないくらいには、絶望的な状況なのは誰でも分かる。
「諦めません。わたくし達はまだ」
「うるせえな!聖人気取りのイカレ女がよォ!あんたもあのカイムって奴と何も変わらねーぜ?戦うことでしか自分を証明出来ないんだろ?……お?どうした?何か言えよ。いや〜やだねえ、都合悪いこと言われると黙ってふごごご」
止めないと死ぬまで暴言をやめなさそうな妖精を、イウヴァルトが掴んで無理矢理止める。
七支刀が侮辱されて、不思議と怒りが湧いたのだ。彼女に救われたとか、今の希望だとかそんな理由ではなく。何だ、この気持ちは……?と考えるが、答えはすぐに出そうにはない。
「七支刀、妖精の言葉は気にしないでください。最後まで希望を捨てない貴女の姿勢は素晴らしいものです」
「……ありがとうございます」
レオナールがフォローを入れるが、七支刀は少し引っかかっていた。"戦うことでしか自分を証明出来ない"……そんなことは、無いはずだ。戦い以外でも求められている筈だと少し考えてしまい、見たのはイウヴァルトの顔だった。
「大丈夫だ。俺は君のお陰で救われた。そんな顔しないでくれよ」
「そう、ですよね。……行きましょう、神殿へ」
改めて覚悟を決め直した七支刀を、しかしヴェルドレが遮る。
「待ってください。この魔力の流れ……神殿には結界のようなものが施されているかと。鍵か装置があるはずです」
「では、それを探すのを優先しましょう。イウヴァルトさん……そろそろ、離してもらっても」
「ああ、すまない。こんなのでも、レオナールと契約しているんだよな」
ぷはーッ死ぬかと思ったぜレオナールのことも殺す気だったかァ?と、解放された瞬間に煽りだす辺り、妖精とはそういうものなんだろう。
七支刀達は再び帝都を疾走する。