上空には帝国に操られしグリフォンが翼をはばたかせ、ドラゴンを待ち受けていた。
第1節 封印の森
カイムがした提案は、割と無理のあるものだった。カイムの前にギャラルがすっぽりと収まってはいるものの、四人乗せていることには違いない。
「ありがとうね、カイム」
「ここまでして此奴を連れて行こうとは、同情でもしたか?」
カイム自身、その真意には気が付けない。ただ帝国を滅ぼすのに戦力が必要という建前を、建前だと気づいていないから。
しかしお喋りの時間は長くは続かない。進む先にグリフォンの姿が見え始める。さしずめ空の番人と言ったところか。
「すでにここまで侵攻しているのか……封印は無事なのか……?」
アンヘルとて、封印の安否は気になるところだ。人類そのものには微塵も興味ないが、世界が滅ぶともなれば話は違う。
グリフォンはアンヘルを迎撃すべく、音波を飛ばし攻撃を始める。帝国の兵器群に比べればすばしっこく飛び回るものの、ドラゴンの翼に敵うものではない。
むしろ心配なのは、無理して四人も乗っているので誰か振り落とされないかという点である。
「しっかりと掴まっていろ。死にたくなければな」
アンヘルは翼を羽ばたかせ音波を躱しながらも炎を撃ち込んでいく。所詮は獣の域を出ないモンスター、炎が一発当たるだけで羽は焼け堕ちていく。追撃するまでもない、間違いなく死んでいる。
「うるさい鳥どもめ。おぬしらの羽で我を落とせるわけがなかろうに!」
時間稼ぎのためか、本当にアンヘルに勝てると思っているのか、グリフォンの増援が姿を現す。
しかしアンヘルの言葉通り、グリフォン程度がドラゴンに敵うわけもなく……
数が多ければ良いというものでもない。強いて言うのなら耳の良いギャラルに取っては非常にうるさく聞こえて仕方ないが、それ以上でもそれ以下でもない。そもそもキル姫でさえそこらの魔獣相手なら無双できるだけの強さがあるのだ。
しかし、油断して攻撃を喰らえばどうなるかも分からない。時間は少しでも稼がれてしまう。
「封印は無事なのでしょうか?」
「無事です!……たぶん」
『はっきりしない男だな』
視えているのかいないのか、いまいち不安な返事をしたレオナールへカイムは不信感を覚える。会った時からいけ好かないやつとは思っていたが、戦力としても不安になってきた。
「封印されし森はフェアリーが護っているはずだ……あまり良い噂は聞かぬがな」
「フェアリー……?」
アンヘルの言葉に、三人はレオナールへ視線を向ける。ここにも一匹フェアリーがいるからだ。
アンヘルがグリフォン部隊を一掃し終わるくらいに、そのフェアリーが口を開く。
「ウヒャー!!なんかくせぇー匂いがしてこねーかぁ?!」
「……この臭い、焼かれてるわね」
妖精とギャラルがいち早く、森の焼かれている臭いに気が付いたのだ。これは間違いなく襲われている。
「急ぎましょう!封印されし森が襲われているようです!」
『大丈夫か、こいつ?』
無事だと口にして数刻しか経っていないがこのザマである。
兎にも角にも、封印を守るためにもアンヘルは森へ降りていった。