ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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深き森に到着したカイム達。

普段は妖精が棲む森も、封印を探す帝国兵によって無残にも焼き払われようとしていた。
フェアリーは敵が若い兵士であることを意地悪くレオナールに告げる。


第2節 匂い

 アンヘルから降りた四人は深き森の中を走っていく。既に帝国軍の手は回っており、焼けた臭いが辺りに漂う。燃える木々を前に妖精が声をあげる。

 

「ワアチャー!俺の森が燃えてるよーん。どうせロクでもない人間が入ったせいだ。人の土地にずかずかと……やなヤツらだぜ!おまけにやな臭い!くせぇ、くせぇー!」

 

 いつもよりむしろ元気に見える妖精に、ギャラルは顔をしかめる。罵倒さえできれば何でもいいのだろうか、俺の森が燃えてるなどと言っておいて。

 

「大変です、すぐに妖精を助けないと……」

 

 封印を守るのも大事だが、妖精も助けるべきだと七支刀は考える。

 しかしギャラルはいまいちその気にはなれない。だいたい目の前をうろちょろ飛んでいる妖精のせいだが。妖精はみんなこんななのだろうか。

 しかし、気分は気分。助けない理由にはならない。皆が幸せになれる世界のために、やらないわけにはいかない。

 

「よっよっ、おまえよっ、木の陰もちゃんと探せよっ。隠れてるヤツが、調子良く生き残ってるかもよっ!フーヒャハハハッ!!」

 

 妖精が調子良くレオナールを煽る。流れを考えれば隠れてる妖精もちゃんと探せということだろうが……何か引っかかる。

 

「……くっ」

 

 レオナールが思い浮かべるのは、焼かれた家と殺された弟達。それを思い出させる光景だと理解した上でレオナールを煽っているのだ。

 

「コレ、ソレ、アレ、ドレ?……フヒャ!おぅ、木の陰だ!裏!ちゃんと見ろよ、レオナールさん!」

 

 レオナールはその場に崩れ落ちる。それを見た七支刀は流石に怒りを覚える。妖精が煽るのはもう口癖のようなものだと半ば諦めてはいたものの、ここまで傷つける言葉を吐く必要があるのだろうか。

 

「どうしてそこまで煽るんですか!?何もそこまで言わなくても」

「何言ってるんだ?オレが煽る?ヒヒッ、そりゃねーよな?」

 

 今度は七支刀の周りを飛びながら煽りの矛先を変える。

 ……そう、言い方はともかく言ってることはおかしくはないのだ。おかしいはず、ないのだ。レオナールが苦しんでいるのは、きっと辛い過去があるからで。

 

「おっとレオナールさん、こんな女に構ってる余裕ないよな?うさんくさい臭いがしてきたぜ、どーよっ?気配はないか? 危なくないか?キャハ!お?怖くて震えてんのか?それとも……?キャハハハハ!」

 

 それとも……?

 そこでギャラルは何か妙な音を聞く。ぎちぎち……と何か張るような音。誰か弓でも構えているのだろうか。

 辺りを警戒しながら、人斬りの断末魔を構える。緑の刀身に、帝国兵の姿は映らない。

 

『敵か?』

「……あれ?」

 

 それ以上の気配を感じない。音は小さかったが近くから鳴っていたような……?

 警戒は残しつつも、剣を降ろす。気の所為だったのだろうか。

 

「こっち!こっち!こっちだよ!」

 

 妖精が指し示すは森の先。苦しみから解放されたのか、あるいは耐えるだけの準備ができたのか、レオナールは立ち上がる。

 ギャラルもまたそちらに視線を向けるが、やはり先程の音は聞こえない。

 

「新米ばかりの部隊か……」

 

 アンヘルも上空から、カイム達の先を見渡す。そこにいるのは帝国軍だが……どうも新米の部隊のようだ。

 

「新米?それって」

「そっ、そっ、ウキャキャ!まだまだケツの青い甘チャンばかりだぜ!」

 

 つまり、子供ばかりの部隊なのだ。七支刀はハッと息を飲む。子供さえ動員する帝国の残酷さに目眩さえ覚えそうになる。

 ギャラルもそれを聞いてあまりいい感じはしないが、カイムは表情一つ変えない。きっとカイムは、相手が敵であるのなら何であれ斬るのだろう。カイムの強さは、そうして得た強さなのだろう。

 

「……駐屯地があるということはこのあたりに捕虜もいるはずです」

 

 小さく咳払いしてからレオナールは声を出す。

 

「もしかすれば逃げようとした子供の兵もいるかもしれませんね。妖精も助けて解決です」

 

 明るい表情を浮かべる七支刀とは反対に、ギャラルは自分でも気づかない内に暗い顔をしていた。

 レオナールは咳払いをして誤魔化していたが、その直前、つばを呑んでいた。緊張からなのか、それとも……

 理由は分からないが、ギャラルにはレオナールの目に昏い明かりが灯っているように見えたのだった。

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