ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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封印の森には大量に帝国軍が侵入していた。

封印の破壊を目論む帝国軍は、一刻も早く壊滅させねばならない。だが、新米兵ばかりの部隊を攻撃することにレオナールは抵抗を感じていた。


第3節 嘆き

 カイムはいち早く敵陣に向かって走る。若い兵や少年兵さえ混じっている部隊だが、何の躊躇もなく、鬼を裂くもの、彼の握る剣が振られていく。

 

「カイム!話し合えば彼らだってきっと……」

 

 レオナールはそうカイムに言うが、そもそもカイムは話せない。仮に話せたとて、彼が剣を振る腕を止めるとは考えられないが……

 

「こんな狭いところでは飛べぬ。おぬしらの足で進め」

 

 アンヘルは、狭い森には入れないので空から見守っている。七支刀とレオナール、特にレオナールが戦うことに躊躇していることもよく見える。

 ギャラルも流石に子供を相手することには躊躇を覚えるものの、ここで戦わなければ世界が滅ぼされるかもしれないのだ。全てを救いたい気持ちはあるが、そんなものは幻想だとこの世界に来てから嫌になるほど見せられてきた。

 歯軋りの音を立てながらも覚悟を決め、人斬りの断末魔を振っていく。少年兵の悲鳴がつんざく。

 

『腰抜け共が。死にたいのか?』

「カイム……そんな顔、しないであげて」

『くだらん。敵は敵だろう』

 

 七支刀もまた、戦わないわけにはいかないと剣を取る。幸い少年兵の相手は二人がしてくれているので、それ以外兵となら戦える。七支刀だって、戦わなければならないということを理解できないほど馬鹿ではない。

 しかし、それでもレオナールは戦えない。

 

「フヒャッ!ちょっくら可愛いと、すーぐメロメロねぇ、アンタ」

「駐屯地に新米兵の部隊……カイム!無益な殺生は控えてください!」

 

 はやりギャラルは、そんなレオナールを見て強烈な違和感を抱く。彼が戦えないのはただ子供を殺すことに罪悪感があるからではないような?

 しかも、妖精も妖精だ。メロメロとはどういう罵倒なのか。戦いながらのため思考がうまく纏まらないが、彼が戦わない理由はそこにあるような気がする。

 

「兵士は兵士。敵には違いなかろう!」

 

 しかし、そんなレオナールを見てアンヘルは叱咤する。戦わなければ殺される、戦場というのはそういう場所だと理解しているからだ。

 

「お願い、助けて!!うわあああああ!!」

 

 カイムによって容赦なく斬られた少年兵の断末魔が響く。その言葉を聞くだけでも、ギャラルの感情は揺られる。こんな子供を斬ることを躊躇わされる。

 

「カイム!お願いだ!これ以上は……もう……」

 

 七支刀も少年兵と戦うことはできず逃げてしまったが、しかしここまで戦うことをやめるように言い続けるレオナールが異常なのはなんとなく理解してしまう。

 なぜそこまで止めようとするのか?帝国兵への警戒は残しつつも、七支刀はレオナールの元へ向かう。

 

「子供を相手にすることが辛いのはわかります。しかし、そこまでしてカイムの気を削がなくても……」

「君なら分かるはずだ。あんな子供に剣を向け容赦なく殺していく、そのむごさを。まだ無力な彼らを、ここまでやり込める必要がどこに?」

 

 七支刀なら、カイムを止めてくれるかもしれない……そうレオナールは考え、七支刀を必死に説得しようとする。

 しかしギャラルは、少年兵が彼の言うほど無力な相手とは思えない。しっかり剣を持ち襲いかかってくるし、非力なのを理解しているからこそ不意打ちを狙って攻撃してくる。その厄介さに、カイムとギャラルは背中を合わせて警戒しながら戦い始めたくらいだ。

 

「ざっくり殺しちまえよー、案外やわらかいって聞くぜ。フヒャヒャ!」

「うっ……」

 

 レオナールを焚きつけようとする妖精の言葉を聞いて、七支刀はゾッとする。ただでさえ人を斬る感触さえ慣れないものというのに、子供のそのやわらかい身体を斬る、その瞬間まで連想してしまったのだ。

 

「いやああああああ!」

「おかぁさーん。死にたくないよぅ……」

「た……助けて……」

 

 カイムとギャラルが剣を振るたびに、彼らの悲鳴が上がっていく。まるでこちらの気を削ぐための戦略かのように、次々と悲鳴をあげ倒れていく。

 ギャラルが悲鳴に意識が引っ張られ、一瞬だけ棒立ちになる。本当に一瞬だけだったが、その一瞬を狙い死角から剣を突き刺そうと走ってくる。しかし、カイムが横から彼の腹に剣を突き刺し投げ捨てる。

 

「うわああああ!」

 

 まるでお手本のように悲鳴をあげもがき、絶命する。もう、ギャラルの気は狂いそうになっていた。

 しかし、そんな少年兵相手だろうと淡々と……いや喜々として殺していくカイムは、ある意味救いだった。カイムがいなければ、ギャラルの心は折れ……下手すれば命も落としているだろう。

 

「私には……出来ません。彼らを討つことなど、私には……」

「わたくしも、その覚悟は出来ていません。ですが、何もやめろと言わなくとも……彼らは封印を狙っているのですよ!?」

「ですが相手はまだ新人です。くれぐれも手荒な真似は!」

 

 言い争いになりかけている二人を隙だらけと判断した少年兵が、七支刀の視覚から飛び掛かろうとする。

 それに気が付いたギャラルが人斬りの断末魔を空に掲げると、雷がその少年兵に向かって落とされる。

 

「誰か助けて。僕ら何にも悪くないんだ!」

 

 当たりどころが良かったのか悪かったのか、死ねなかった少年兵は喚き始める。

 今この瞬間、自分達に剣を向け殺そうとしていたのにこの言い草……七支刀の中に、何か黒いものが流れた。レオナールから視線を外し、静かに神器を構える。

 

「待ってください!どうか、殺すのだけは。まだ無力な彼らをそうまでする必要は……!」

 

 レオナールの言葉が、むしろ七支刀の怒りを助長させる。剣を握り殺意を向けている時点で、無力なんかではない。殺されそうになって初めて、それを実感したのだ。

 それでも、せめて楽に死ねるようにと一撃で首を刎ねる。そして、その一撃を振ってから……子供を殺してしまったという、感覚だけが手に残る。

 

「戦争とは……ここまで人の心を狂わせるものなのですね」

『ふん、聖女面したところで中身は変わりはしない』

 

 人を一人殺しただけで、それっぽいことを言い始めた七支刀へカイムが反吐が出る気持ちになる。

 そういう意味では、割り切って戦ってくれているギャラルの方がマシだ。こいつも、善人面して殺しをしていることには違いないが。

 しかしそんな彼ら彼女らの意思とは関係なく、少年兵達は容赦なく攻撃してくる。カイムとギャラルが殺しきれなかった兵が、隙だらけの七支刀とレオナールへ向かい走ってくる。

 

「無理です!私には無理です!やめて!やめてください!!来ないで!!」

 

 目の前で七支刀が一線を超えてしまったが、それでも尚レオナールの意思は変わらない。遂には逃げ出してしまう。

 

「ま、待ってください!……くっ」

 

 殺さなければ殺される。走ってくる少年兵に対して神器を構え直す。

 それに、自分がしない分あの二人に殺させているのだ。自分は殺せないと善人ぶった数だけ、罪を人に押し付けることになる。

 ギャラルとはまた違う覚悟を背に、七支刀も戦いに参加する。

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