ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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レオナールが逃げ出した先で、瀕死の少年兵を発見する。

彼を庇おうとするレオナールの真意はどこに?


第4節 規則外の憐憫

 レオナールが逃げた先には、やはり少年兵の死体が幾つか転がっていた。

 

「おいおい、死体をどうするつもりだ?ウヒャ。さらに痛めつけマスかー?」

 

 レオナールが少年兵へ、例え死体だろうと危害を加えることなど出来ないだろうと分かった上での煽り。

 

「弔ってやるのです!」

 

 少し声を荒らげながらも死体の前に膝を付き頭を下げる。当然彼が少年兵の死体へ攻撃することなどない。

 しかし妖精は、まだ息のある者が一人残っていることに気がつく。あのカイムが逃したりはしないだろうし、ギャラルホルンが殺し損ねたのだろうと考え、ニヤけた笑みを浮かべる。

 

「フヒャフヒャフヒャ……そんな悠長なことしてる場合か?聞こえねーのかよー、よー、よー」

「!?」

 

 すぐ近くから、地面を擦る音。僅かな息の音。慌てていて気付けなかったが、一人生きている者がいる!

 

「たす……けて……」

 

 急いで立ち上がり、少年兵の近くへ寄る。この子だけでも助けねばと考え声をかける。

 

「僕……僕、こわい……」

「だいじょうぶだ。もう、だいじょうぶだ」

 

 予想通りの行動を取るレオナールに対して、なお妖精は煽るのをやめない。煽るのをやめたら死んでしまうかのように、口は回り続ける。

 

「おや?おやややや?情けかけちゃってマスかー?敵だぜ?震えてる場合じゃねーんだよっ。よっ!」

 

 しかし、こればかりは妖精の言うことが正しいのだと頭では理解出来てしまう。それでも譲れないのだが。

 

「私の弟と……そっくりなんです。声が……」

 

 そう、死んだ弟……キールフーゲと声がそっくりなのだ。見た目こそ目が見えないので分からないが、少年兵を庇おうとする理由はそれだけで十分だった。

 

 ギャラルはレオナールを探しに来ていた。唯一飛べるのと、声をあてに探せるだろうと考えてだ。

 

「私の弟と……そっくりなんです。声が……」

 

 まるで何かを釈明するような、弱々しい声が聞こえる。レオナールの声に違いない。しかし、そっくりとは……?

 

「何をしてるの!?」

 

 ギャラルがレオナールの元に辿り着いたと思えば、そこには少年兵を庇っているレオナールの姿。気持ちは分かるが、敵は敵だ。レオナールが危ない。

 

「まだほんの子供ではありませんか!」

 

 ギャラルに見つかっても、なお庇おうとするレオナールの横からするりと抜けるように少年兵が立ち上がる。

 

「避けて!」

「!?」

 

 ギャラルの声に驚きながらも、レオナールはその場から転がるように移動する。

 そんなレオナールが先程までいた位置目掛けて、死霊が降りて攻撃を仕掛ける。更にギャラルに向かってもう一体、そして少年兵を守るようにもう一体。

 少年兵が、自分に攻撃を仕掛けてきた。それを理解したレオナールは腰を抜かしながらも、少年兵から距離を取る。

 

「バーカ」

 

 少年兵はレオナールを見下しながら罵倒する。最初から芝居を打っていただけだったのだ。レオナールが甘いことに気が付いた上で。

 

「そんな……」

「フヒャヒャヒャヒャ!バーカ、バーカ。傑作。一等賞!」

 

 そうなることが最初から読めていた妖精も、同じくレオナールを嘲笑う。

 そんな妖精を無視してギャラルは剣を構え直す。剣を掲げ魔法を放ち、悪霊共を塵に還す。そして守りのいなくなった少年兵を、あっさりと斬り殺した。

 弟と似た声をする少年が自分を騙した挙げ句、目の前で斬り殺される。最悪の展開にレオナールは戸惑いを隠せない。

 

「レオナール、あなたここに来てから変よ。何かあるなら素直に言って欲しいわ」

「くっ……それは、言えません。ただ私が愚かなことをしたまで」

 

 レオナールとて、自分が如何に愚かなことをしたのかは分かっている。いや、むしろ分かっているからこそこんな罵倒しか出来ない妖精と共にしている。それが彼なりにできる贖罪の一つだからだ。

 

「あらレオナールさん、素直にギャラルちゃんに言ってしまえばどうです?きっと許してくれるぜー?」

 

 それが決してレオナールの望んでないことだと理解した上で、甘い誘惑をする。

 しかし頭を振って否定する。

 

「これは背負わなければならない罪なのです。ましてや君のような純粋な子に許されるなど」

「どういう意味?ギャラルは立派なレディよ!」

 

 遠回しに子供扱いされたことに少し腹を立てて強く主張するが、重要なのはそこではないと頭を切り替える。

 

「あなたの犯した罪が何なのかは分からないけど、素直に言ってほしい。そうやって腹に抱えたままだといつか破滅するわ」

「……気持ちだけ受け取ります。少し、一人にさせてはもらえませんか?すぐに合流します」

「あまり長くは待てないわ」

 

 妖精も置いて、ギャラル達から見えづらい位置まで移動してしまう。瞑想でもするのだろうかと首を傾げるが、そんなギャラルの思考を邪魔するのはやはり妖精。

 

「しっかしあんたがレディね?お笑いなら世界一を狙えるな!」

「なっ!?こう見てもギャラルはあんたなんかよりも長生きなのよ?」

「長生きしてそれなら、あんた本物のお子様だな!ギャハハハハ!」

 

 ムキになり反論しようとした所で、何か変な音が聞こえた。何かを擦るような……?

 聞き慣れない音に、敵が隠れているのかと一瞬警戒するがそういう気配はない。何よりも音が聞こえるのはレオナールの向かった方向。

 

「……何の音?」

「あんた耳は良かったんだっけな?それで分からねえとかホンモノのお子様だな!こりゃおもしれー!」

「………?」

 

 この音と子供に何の関係があるのだろうかと考えるが、よく分からない。少なくとも妖精は何の音なのか分かっているようだが……教えてもらおうとすればまた馬鹿にされるだろうと口を閉ざす。

 少しするとレオナールが帰ってきた。妙にスッキリした顔に、少し鼻に付く臭いがするが……本当に何をしていたのだろうか?

 

「懲りませんねぇ、アンタ。この先もそんな調子でイキていけるんでしょうかねぇ?」

「……えっと、もういいのよね?」

「ええ、ご迷惑をかけました。ですが、やはり新米の兵と戦うのは」

 

 気持ちに整理は付けてきたものの、やはり剣を向ける覚悟までは出来なかった。

 

「ええ、大丈夫よ。ギャラル達に任せて」

 

 なるべく明るい表情で答える。レオナールに表情は見えないが、声でテンションは伝わってしまうものだ。

 

「……罪は人を生きる道へと導くものでしょうか?」

「よぉよぉ!弟達も浮かばれないよね~」

「……何を言われても仕方ありません。私はそれだけの人間です」

 

 これだけ妖精に言われても反論の一つもしない彼の罪とは何なのか。疑問は抜けないが、まずは封印を守るためにも進まないといけないと気持ちを切り替えるのだった。

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