ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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力のある者の精神波でもある"声"。
だが、今回の”声”は今までと違う怪しい兆紋があるようだ。

その未来を暗示するかのように、帝国軍によって呼び寄せられた亡霊たちが暗黒の空に集いはじめていた。


第十節 牢獄

 また四人乗りになっているため、ギャラルはカイムの前にちょこんと座っている。

 つまり、カイムとアンヘルによる殺戮を見れる特等席でもある。夜の砂漠に浮かぶ、帝国軍兵器の数々に、アンヘルは炎を撃ち込んでいく。

 

「カイム、おぬしは殺戮によってのみ癒されるらしいな……」

 

 ギャラルも、カイムが戦いを求めていることは見ていて理解していた。戦いのさなか、ずっと楽しげに笑みを浮かべているのだから察せざるを得ない。

 ただ、それがカイムの強さでもあるのだろう。少なくとも矛盾を抱え、悩みながら戦っている自分よりかは間違いなく強い。しかし同時に脆さを感じる。戦いが終わったカイムに残るものは……?

 

「仮にも女神の兄ならば、もう少し行動に気をつけるべきかと……」

「その女神の兄に頼っておいて、よく言えるわね?」

 

 ヴェルドレの不躾な言葉にギャラルは怒りを露わにする。確かにカイムの行動は度を過ぎるものだとはわかる。しかしまともに戦場に立つことさえ出来ないヴェルドレがそれを非難する権利はない。

 

「ほう?そやつの殺戮を肯定するのか?」

「それは違うわ。でも……こんな酷い戦いの中では、人は狂うものだと思うの」

『俺が狂っているだと?敵を殺すことの何がおかしい?復讐の何がおかしい?』

 

 カイムをギャラルの言い草に腹を立てて、頬を摘んで抗議する。口に出したいものの、この少女には"声"は届かない。

 

「ご、ごめんなさい。狂ってるは言いすぎたわ。……はは、やっぱりカイムの考えてること、分からないや」

『分かる訳ないだろう。俺とお前は他人だ』

「ギャラルは貴方に寄り添おうとしているのです。何もそこまで突き放さなくとも」

「ヴェルドレ様はお静かに。話がややこしくなります」

 

 カイムの"声"に反応してヴェルドレがまた喋りだすが、そもそもこの話の始まりでもあり、その上で余計なことしか言わなそうな彼に七支刀が釘を刺す。

 ヴェルドレという男、悪い人ではないのだが……決して善い人ではない。

 

「ギャラルね、カイムの強さが羨ましいの。ギャラルは何もできなかったから……」

『……』

「ねえ、カイムはこんなギャラルのこと、嫌い?」

 

 振り返り問うてきたギャラルの顔は、今にも泣きそうになっていた。カイムに浮ぶのは疑問だ。なぜその程度のことをそんなうじうじと気にするのか、それも泣きそうになってしまうほどに。

 カイムが一つ言えるのは、ギャラルは自分で言うほど弱くもなければ無価値でもないということだ。少なくとも戦力としての価値はある。だからこうして連れてきている。

 ……いちいちうるさいことは、好きではないが。

 

「ギャラルよ、おまえは自分で考えているほど弱くもなければ無価値でもない。……カイムはそう思っているようだぞ?」

「え……?」

 

 アンヘルからのまさかの言葉。カイムという人間を見ている限り、自分のことなどどうでもいいと思っているだろうと、ギャラルは勝手に思い込んでいた。

 ただ、そうフォローしてくれる程度には自分のことも見てくれていて……

 

「ありがとう、カイム!」

 

 そう笑顔で感謝を告げるギャラルの顔は、まるで大輪の花が咲いたかのような眩しさで……

 カイムは、目を逸らす。

 

「わたくしはどうですか?戦力としてお役に立てているでしょうか」

 

 七支刀は、カイムのその考えがあくまで戦力としては価値のあるものだというものだと判断した。ギャラルは気がついてないが、そちらの解釈が正解である。

 

「こうして我の背中に詰めてまで連れてきているのだ。足手まといなら置いていくであろうよ」

 

 七支刀はホッと一息をつく。ギャラルとはまた別の理由で、自分が役に立てているのかは気になっていた。昔は言葉だけで何も行動を起こせない、臆病者だったから。せめてキル姫として戦うくらいは出来なければいる意味がないのだ。

 

 話しながらもアンヘルは帝国軍の兵器を一掃していた。この程度、片手間で十分ということだ。

 しかし、暗黒の空へ亡霊が集まってくる。まるで死神のように鎌を持ち、ぼろぼろの黒いマントに身を包んだような姿をしている。

 

「これは……亡霊?帝国軍は亡霊さえ使役しているというのか?」

 

 ヴェルドレが戦慄しながら声を上げる。

 

「カイムよ、悪しき魂を払ってはもらえぬか」

「言わなくとも、この男は全滅させるつもりぞ」

 

 空での戦いは、お互い射撃を繰り返す戦いになることが多かった。しかし亡霊は積極的に距離を詰め、鎌で直接斬りかかってくる。

 ギャラルは神器を取り出し迎撃の準備をする。幸い亡霊の数は多くないのだが、流石のアンヘルも複数の方向から迫られたら迎撃しきれるかも分からない。

 ……そう考えたが、ギャラルの考えは甘かった。

 鎌で直接斬りかかり、あるいは鎌を投げ狙ってくる亡霊共。その攻撃の瞬間を狙い大魔法が放たれる。アンヘルから放たれた幾つもの炎が次々と亡霊を焼き消滅させていく。

 敵を片付け終わったアンヘルは再び口を開く。

 

「この"声"の細さ、振り幅……正常な者ではあるまい」

 

 ギャラルは神器をしまいながらも、アンヘルに質問する。"声"が聞こえない以上、よく分からないからだ。

 

「妖精よりも?」

 

 レオナールの妖精だ。今まで会ってきた中で正常じゃない者といえばアレだろう。帝国兵達もそうだが、あれらは契約者でもないし比べるものではないだろう。

 

「アレはアレで正常よ、その程度のものではない。それでも助け行くか……?同情による救助か?それとも尋常ならざる者の手すら必要としているのか?」

「この先に帝国軍の捕虜収容所がある。"声"はそこから聞こえてくるようだ」

 

 アンヘルの質問には答えず、ヴェルドレは捕虜収容所を指す。

 アンヘルがそこまで警告する人物。好奇心と恐怖が半々のまま捕虜収容所へ向かっていくのだった。

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