ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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エンヴィに案内された牢獄で、一人の契約者と会う。
その名はアリオーシュ。帝国に家族を殺された哀れなエルフだった。


第十四節 生き延びたアリオーシュ

 エンヴィを外に残し、カイム達は牢獄に侵入する。既に襲撃があった後なのか、牢獄の中は燃え盛っていた。

 

「この炎の中では長く持たぬ。二手に分かれて探しましょう」

 

 ヴェルドレの提案に三人は素直に従い分かれる。カイムとヴェルドレ、ギャラルと七支刀のペアで牢獄をくまなく探す。

 すると、カイムのペアが先に"声"の主に辿り着いた。破壊された牢獄の中に立つのはエルフの女性。そしてその背後に、炎のような二つの光が浮かんでいる。精霊だろう。

 

「そなた……契約者か?名はなんと?」

 

 ヴェルドレがその女性に話しかけると、虚ろな目をしたまま女性は返事をした。

 

「アリオーシュ」

「おぉ……子宮をなくされたか?」

 

 神官長であり、契約者でもあるヴェルドレは彼女の代償をいち早く理解した。かなり失礼なことを言っているが、気づいてか気づかぬか素直に言ってしまうのが彼らしいというかなんというか。

 しかしそんなことは微塵も気にしていないアリオーシュは、カイムへと質問を投げる。会話しているヴェルドレではなく、黙っているカイムへと。

 

「ねぇ?どこかに子供はいないかしら?」

「心配せんでも、優先的に保護されておる」

 

 なぜ自分ではなくカイムに話しかけたのか?という疑問はあるものの、ヴェルドレは答える。あえて答えない理由もないからだ。

 しかしカイムは悪寒を感じていた。会う前から感じていた調子のおかしい"声"、露骨に嫌そうな顔をして残ると言っていた先程のキル姫、そして……まるで空洞を覗くかのような虚ろさをしつつも、獰猛な獣のような瞳。

 アンヘルが言っていた通り、まともな者ではないのは分かっていたが、ここまでとはカイムも想像していなかった。

 

「ふぅん……いないの?残念。かわいいのに……」

 

 今度はヴェルドレの方に寄りながらアリオーシュは応える。それはまるで獲物を品定めしているようだ。

 微妙に噛み合ってない会話にヴェルドレは眉をひそめる。ヴェルドレもまた、何か本能的な危機感を感じ始めていた。

 そこにギャラルと七支刀が合流した。会話を聞いてギャラルも遅れて駆けつけたのだ。

 

「その人が例の"声"の人?」

「他の牢も見て回りましたが、既に解放されているようです」

 

 ギャラルの質問と、七支刀の報告。それぞれの声に反応したアリオーシュの瞳がそちらに向く。

 落胆の表情が笑みへと変わり、笑顔のまま言った。

 

「いるじゃない、子供」

「えっ……?」

 

 ギャラルが固まる。別に子供呼ばわりされたことに怒った訳ではない。ただ……アリオーシュと目が合ったからだ。獲物を見つけた、歓喜に満ち溢れた獰猛で残酷な瞳と。

 直後、アリオーシュは走り出す。突然の出来事に誰も動けない。ギャラルを押し倒し組み伏せ、口を開き歯を見せ、首元へ齧り付こうと……

 いち早く理解が追いついたカイムが後ろからアリオーシュを掴み立ち上がらせる。七支刀も驚きは拭えないながらもカイムと一緒になりアリオーシュを抑える。

 

『エルフ、控えよ!』

「ク・アボル・レヴェ・ヴォーレーセレ・ヴェーイーレー ク・アボル・レヴェ・ヴォーレーセレ・ヴェーイーレー」

 

 突然の暴行にアンヘルが吠え、ヴェルドレも呪文を唱え始める。呪文が唱え終わり、はっ!と声を上げるとアリオーシュの体が光に包まれ膝をつく。

 

「な、何なの……?」

 

 驚きと恐怖から立ち直りきれていないギャラルが、上半身だけ起き上がらせつつも震えた瞳で声を絞り出す。

 子供だと言われたのは分かる。……ただ、何をしようとした?もしかしなくても、食べようと……?

 

「とりあえず"鍵"をかけました。だが、いつまたタカが外れるかわかりません。周りの人間、および彼女自身のためにも、私が連れてゆきます」

 

 ヴェルドレが咄嗟にかけた封印。今この場でアリオーシュに出来る対処はこれしかなかった。

 

『……それが人間の優しさか?』

 

 アリオーシュがどうであれ、他者の心を封じる術をかけ制御に置くことが優しさなのか?とアンヘルは嘲笑っていた。

 

 ……アリオーシュを連れて出てきたカイム達を見たエンヴィは、完全にドン引きしていたのだった。

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