ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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神に従う道具へ成り下がったエンヴィと七支刀の戦いが始まる。
しかしその真意は違うところにあった。全てはエンヴィの感情のままに。


第六節 罪業

 七支刀とエンヴィはお互いに距離を取り直す。七支刀は迷わず神器を解放し巨大化させる。そのままではリーチの長さで不利になる。

 しかしこれはこれで、七支刀の攻撃が少し遅くなる。エンヴィの素早く鋭い攻撃に耐えきれるのだろうか。

 

「やめてください!あなたは神の道具などではありません!」

「本当に妬ましいです、その純粋さは。けれどそんな貴方への嫉妬が私を強くさせる」

 

 エンヴィがいつ仕掛けてきてもいいように、七支刀は神器を構えたまま様子を見る。

 七支刀というのは本来、剣として使われたものではない。主に儀式などに使われたり、或いはこれそのものが権力の象徴としてある。そんなキラーズに適合している七支刀と、相手はロンギヌス。聖人のわき腹を突いたとされるその聖槍のキラーズを持つ彼女は強大な力を持っている。

 お互い全力でぶつかればどうなるか、結果は見えている。"少なくとも七支刀は"そう思っている。

 

「わたくしは貴方と戦いたくありません。帝国の者と違い貴方は正気でしょう?」

「……正気でないなら、殺すのですね?」

「っ!?」

 

 それは、この世界に来てからずっと抱えていた大きな矛盾。人々を救いたい、幸せにしたいと思いつつその人々を殺してしまっている事実。あれこれ理由を付けて逃避していたが、エンヴィはその事実を見抜いていた。

 だからこそ、動揺した隙にエンヴィは一瞬で距離を詰め、頭部を狙い一閃。それでも七支刀は咄嗟の判断で身体を後ろに逸しつつ、槍が触れる前に神器で防ぐ。

 しかし、防がれたと理解すると同時に槍を引きもう一度距離を離される。これでは反撃が出来ない。

 いっそ神器の力を完全に解放すればと一瞬だけ考えるが、それをさせてくれるだけの時間を稼ぐ手段がないし、仮に出来たとしてエンヴィを殺してしまうだろう。どうすればいいと頭を悩ませるが、そんな猶予を与えまいとエンヴィはもう一度接近してくる。

 エンヴィの攻撃に合わせてカウンターをするしかないと振ろうとするが、彼女の攻撃は七支刀ではなく地面を突き刺した。直後に血飛沫が舞うかのように赤黒い何かが地面から吹き出し、七支刀の視界を妨害する。

 神器を全力で振り視界を取り戻すが、そこには誰の姿もない。どこに消えたのかと回りを見渡すが、どこにもいない。しかし直感で空を見上げると、近くの建物の上で力を溜めている姿が。

 

「どうすれば……」

 

 悩む七支刀だが、自然と力を神器へと注いでいた。力を解放された神器は激しく回転を始めエネルギーを纏う。しかし力を貯め終わるのはエンヴィの方が早かった。

 見開かれた目は赤く輝き、真っ赤なエネルギーを纏った槍と共に七支刀目掛けて落下してくる。神器の完全解放が間に合わない。中途半端でも迎撃しないとやられると考え今貯めた分だけのエネルギーを解放。落下してくるエンヴィを風で押し返そうとするがそれでも止まらない。しかし軌道が僅かに逸れ七支刀の目の前に槍が突き刺さった。

 ほっとしたのも束の間、黒葬槍に込められたエネルギーは全て地面へと注がれ、大爆発を起こした。黒い花が咲くようにエンヴィを中心に散る。ほとんど直撃したようなもので、七支刀はまともに防げず遠くへ吹き飛ばされる。

 

「これで、終わりです」

 

 エンヴィは一度槍を引き抜くと、もう一度地面へと突き刺した。地面が凍り、それは七支刀へと迫っていく。立ち上がり逃げようとするが間に合わない、巨大な氷が七支刀を包み氷塊へと変えてしまう。

 完全に無防備になった七支刀へトドメを刺すべくエンヴィは走り、もう一度全力で槍を振り絞る。

 ……しかし、トドメにはならなかった。氷が割れる瞬間に七支刀は構え直し、槍を受け止めたのだ。まさか防がれると思ってなかったエンヴィは思いっきりよろけてしまい、そこへ七支刀が一閃。戦いは、終わった。

 

 エンヴィは最初から勝てるとは思っていなかった。ブラックキラーズである彼女は、悪魔の血によってとてつもない力を得ている。しかし、それは同じ"イミテーション"相手ならの話だ。

 無数に分裂したキル姫の一つでしかないエンヴィと、完全に融合した七支刀で、しかも神器も得ている。勝てるはずがないのだ。

 戦いの苦手な七支刀相手なら勝てるかもしれないと考えはしたものの、予想通り……七支刀は戦うことを選んだ。戦うために作られた兵器らしい答えを選んだのだ。

 神器によって身体を真っ二つにされながらも、エンヴィは嘲笑っていた。

 

「殺し、ましたね?私を……」

「………」

 

 先程の一撃は、無我夢中での一撃だった。ほとんど無意識だったと言っても間違いはない。しかし、斬ってしまったのだ、同じキル姫であるエンヴィを。

 

「相手が正気でも、振りました……ね?」

 

 七支刀は神器をその手から落とす。神器を握っていたその手は、血塗れになっていて……

 いや、そうじゃない。今まで散々見て見ぬふりをしてきただけで、ずっと血にまみれていたのだ。ずっと、ずっと。

 

「あ……ああ……!」

 

 もう一度エンヴィを見てみれば、もうその瞳に光はなかった。殺したのだ、話が通じるはずの相手を。

 逃げることは出来ない。何をどう取り繕うが、七支刀は人殺しなのだ。

 力なくその場へと崩れ落ちる。今までずっと現実逃避していてツケが回ってきたのだ。エンヴィはそれを狙い自分を殺させたのだが、失意の底にある七支刀がそれを察することなど出来はしない。

 

 断頭台に立たされても、刃が振り落とされることはないだろう。人殺しのキル姫に、神は償いの機会など与えることはないだろう。

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