ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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人類抹殺を本能に組み込まれたドラゴンとカイム達の戦闘が始まる。
たとえそれが望まぬ戦いだとしても。


第七節 夜空の下で

「カイムよ。生きたいのなら……まず我を倒せ!」

 

 カイムは鉄塊を構え、アンヘルに向かい走り出す。ギャラルもまた人斬りの断末魔を構え、少し躊躇ってから飛んでアンヘルへ向かう。

 

「心臓は元通りだ。我とおぬし、もはや他人よ……」

 

 別れを惜しむような声で語るアンヘルに、二人の心は痛む。しかし戦うしかないのだ。それしか道は残されていない。

 契約の切れたカイムは、今までと感覚が違う。それでも鉄塊を持ったまま走る。

 しかし二人がアンヘルへ辿り着く前に、魔法を唱えられる。雷が放たれ二人を妨害する。ギャラルは難なく避けたが、カイムは鉄塊で防ぐのが精一杯だった。

 動けなかったカイムを狙い、アンヘルは走り出す。これだけの体格差、ただ体当たりされるだけでもカイムにとって致命傷になるだろう。ギャラルは咄嗟にカイムの方へ方向転換し、轢かれる前に引っ張って助ける。

 避けられたアンヘルは小さく飛んで向き直し、またカイム達に相対する。しかし祭壇はそれなりに広いとはいえ閉所に違いない。少し飛んだ後にまた着地する。

 ギャラルは神器へと持ち替え、カイムが接近する前に魔法で妨害されないように、牽制の為の攻撃を仕掛ける。その攻撃は翼で払われてしまうが、その間にカイムは懐へ潜り込み一閃。しかし表面に浅く傷が付くだけで、致命傷にはならない。

 アンヘルは距離を取るために再び飛び上がり、更に炎でギャラルを撃ち落とそうとする。しかしその炎を掻い潜り、右翼を狙い剣で突き刺す。そのまま翼の上を走り大きく傷を残す。

 翼への強烈な痛みにアンヘルはバランスを崩し、床へと叩きつけられる。そこにカイムが追撃しようとするが、左翼の先にある爪を叩きつけ迎撃される。その一撃は何とか鉄塊で受け止めるが、更に全身を回転させ鞭のようにしなる尻尾でカイムを叩く。

 攻撃をもろに食らってしまい、カイムは大きく吹き飛ばされ壁に激突してしまう。

 

「カイム!」

 

 今は契約者でないカイムにとって致命傷の筈だ。そちらへと視線を動かしたギャラルだったが、その隙を逃さず火球が飛んでくる。

 ギャラルもまたそれを避けることが出来ず直撃。ドラゴンの吐く炎だ、普通の人間なら一撃で焼かれ死んでもおかしくない威力。幸いキル姫は生身の人間よりかは耐久力があるので即死まではしなかったが、全身を焼く熱さに耐えられず飛行の制御が出来ずに落ちる。必死になって炎を振り払うが、そこを狙いアンヘルが爪を叩き付ける。

 全力で転がり、直撃だけは避けたがそれでも浅い傷は残る。しかも、当然ながら痛い。

 それでも歯を食いしばり、何とかカイムの元まで翔ぶ。これまで共に戦ってきたドラゴンの強さを感じながら、どうすればいいのか考える。長期戦は分が悪いし、何とか短期決戦を仕掛けたいが……

 

「カイム、大丈夫?」

 

 倒れているカイムへと声をかけると、カイムはゆっくりと立ち上がる。まだ戦えるようだが、やはり傷は浅くはない。

 二人共かなりのダメージを負っている。このままでは体力が尽きて殺されるだけだろう。ならば……

 

「ギャラルが全力の攻撃を仕掛けるわ。……お願いしていい?」

 

 カイムは無言で頷き、鉄塊を構え直す。

 ギャラルは神器を鳴らし演奏する。ギャラルホルンの持つ終焉の力のすべてを引き出し、最大の一撃をぶつける。祭壇の中で反響する笛の音は、まるで世界の終わりを告げるようだった。

 アンヘルは何をしようとしているのかを理解し、雷で妨害しようとする。しかしカイムがギャラルを狙う攻撃を的確に防いでいく。

 ギャラルの背後へ扉が現れ、黒いドラゴンの頭が扉の内から姿を現す。それはギャラル今まで会った中の、最強の存在のイメージ。つまり、アンヘル。それが本物のアンヘルと相対する。

 空気が震えるほどの魔力を溜め込み、最強の一撃を繰り出そうとする。もはや妨害するのは不可能と判断したアンヘルは、翼で自身の身体を覆う。

 ……演奏が終わる。それが合図となるように、ドラゴンの化身からすべての魔力が解き放たれ、ドラゴンがブレスを吐くかのように収束された魔力がアンヘルを襲う。爆発の衝撃で祭壇の壁や天井が吹き飛び、赤い空が顔を出す。

 煙が立ち込みお互いの姿は見えなくなる。しかし、それを払うようにアンヘルは翼を開いた。……翼は焼け、もはや飛ぶことなど出来ないであろう姿にはなっているものの、攻撃を凌ぎきったのだ。

 しかし、翼を開いたアンヘルが目にしたのは、弾丸のように飛んでくるカイムの姿だった。

 

「我が名はカイム!」

「あぁ、カイム……」

 

 先程の攻撃はあくまで布石であり、本命ではなかった。爆発がアンヘルを襲っている間に、全力の攻撃をするためにギャラルがカイムを投げていたのだ。

 カイムの凛々しい名乗りと共に、アンヘルはすべてを受け入れた。開かれた翼は、まるでカイムを受け入れるために開かれたようで……

 一閃。今度こそ、その刃はアンヘルの身体を裂く。それは心臓まで届く。

 

「これで……よかったのだ。そうだ、カイム……よくやっ……た」

 

 アンヘルは崩れ落ちる。最強の戦友との、最悪にして最大の戦いは、ここに幕を閉じたのだ。

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