なんか世界って機械のせいで荒廃したらしいですね   作:饅頭おとこ

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室に怒りて市に色す:家で起きたイライラを外でブチまけるやつ。


室に怒りて市に色す

 

 

 カランコロン、最近巷で流行っているらしい鈴の音が俺を歓迎する。ドアをくぐれば他所の街からやってきただろう吟遊詩人がリュートを弾いていた。

 

 それを横目に俺はカウンターへ歩いていく。

 

 風呂も入っておらず薄汚れた俺に数人が見てきたが、睨み返せばすぐに視線を逸らす。ビビるなら最初から見てくんなと思うが、わざわざ喧嘩してもしょうがない。視線を戻し、目的のカウンターに近づけば、身体の半分をゴツい機械を纏っているおっさんが何かを書いていた。

 

「ん? おぉ」

 

 最初から気づいていただろうに俺を見て大袈裟に驚いた。

 

「マキか。ご苦労」

「……この依頼を出したボンクラは誰だ」

 

 労ってきたが、それ以上に俺の心は荒れに荒れていた。懐から普通のより大きめの導入源をカウンターに叩きつける。そんな俺の行動におっさんは特に顔も変えず、導入源を手に取り隅々まで見ていく。

 

「チッ。無視かよ」

 

 毒を吐いてから近くで給仕をしていた姉ちゃんを呼び寄せ、特製エールを注文。カウンターに肘をついておっさんを待ちながら、リュートに耳を傾ける。

 吟遊詩人は器用なもんでさっきまで楽しげな声で歌っていたかと思えば、悲痛な顔で悲しい音色を響かせる。いつのまにかそれに浸っていると横から声が聞こえてきた。

 

「これが今回の報酬金だ」

 

 目を向ければ、カウンターの上に機銀貨が数枚。機械生命体と銀貨を混ぜて作ったものらしく、改造した人造機械じゃないと一発で偽物だとわかるらしい。

 

 なんで知ってるかって? 以前、チンピラからカツアゲしたやつで買い物したら、機械騎士にショッピられたからだよ。

 数ヶ月間も豚箱にぶち込みやがってクソがッ!

 

 幸い一緒にカツアゲした知り合いが掛け合ってくれて、釈放されたけどな。思い出すとムラムラ……じゃなくて余計にイライラし始める。

 とりありあえず機銀貨を懐に入れ、おっさんを睨み付ける。

 

「おい。リュウ」

 

 俺が言いたいことをすぐにおっさんはわかっていたようで、右手をひらひらしてきた。

 

「依頼人はそうそう教えられねぇよ」

 

 そんなことを言いながら手でお金のマークを作るおっさん。

 

「銭ゲバがッ」

 

 懐に入れた機銀貨を再び取り出し、リュウの顔面に投げつけたが軽々とキャッチされる。

 

 さすが、賄賂で最新の機眼を取り付けただけあるな……

 

 俺もそろそろ体を改造しようと考えたが、痛いのは嫌だからやっぱり却下。おっさんを見ればニンマリと笑ったのでカウンターから背を乗り出し、顔を近づける。

 

「依頼人はこの街『白雉』の機族様だよ」

 

 

 

 

 その夜。

 

 俺はありったけの爆薬をかき集め、散財を尽くしているだろう屋敷の裏にいた。

 

「防人を舐めやがッて……絶対に許さんッ」

 

 ぶつぶつ言いながら爆薬を屋敷に設置していく俺。たまに巡回しているやつらが俺を見つけるが、すぐに知らないふりをして逃げていった。

 なぜなら俺が事前にたんまり鼻薬を嗅がせてあったおかげだ。決して裏路地でクソ竿を顔面に突きつけたわけじゃない。

 

 次々に設置していきそろそろ汚い花火を決行しようとしたその瞬間、俺の頭の上に影が伸びてくる。

 

 

 ぐにゅっ

 

 

 顔を向ければ柔らかい二つの小ぶりの桃が覆いかぶさってきた。堪能していると一気に重さが体にかかり、体がくの字になる。

 

「キャッ」

 

 可愛らしい声が聞こえたが、当の俺は潰されたカエルのようになっていた。小ぶりの桃をどかせば、綺麗なオベベを着た女の子。

 

「え? うん? えっ!? あ、あの誰ですか?」

 

 俺が尻を掴んだことに顔を赤らめたが、特に文句を言ってこなかった。ただし不審者を見る目。

 小さな女の子の尻を揉みしだいたことで、パクられれば行く先々で性犯罪者のレッテルが貼られるのが目に見えている。

 

「防人のマキだ」

「さ、防人!?」

 

 通報される前に自己紹介すれば女の子が驚いて大声を出した。すぐに女の子の口に手を当て黙らせる。

 

「静かにしろ。バレたらどうすんだ」

 

 女の子はモガモガと暴れ回るが、無視して布を取り出し口に縛り付ける。その時、女の子が屋敷の周りにある爆薬を怪訝な表情で見ていたが、すぐにそれが爆薬だと気づくと暴れ散らかした。

 

 チッ

 

 心の中で舌打ちをして、リュックから眺めのロープを取り出し女の子をぐるぐる巻きにした。

 

「ふぅ……いい仕事したぜ」

 

 我ながらいい仕事をした。以前どこかで読んだ大昔に流行った亀甲縛りを女の子へ施した。まるで芸術作品のようになった女の子を見れば、顔を赤らめぷるぷる震えている。

 

 とりあえず女の子を抱き上げ、機械のスイッチをポチリッ。

 

 近隣の家々からレーザーのように屋敷へ光が走った。一気に屋敷からは火炎が出て、焼けた匂いも周囲に立ち込める。それに気づいた屋敷の住人や執事からメイドたちが大慌てで飛び出てきた。

 

 べつに実際に燃やしているわけではない。ただの映像だ。匂いも周囲にセットした機械から出ているだけ。

 

「くっくっく。俺を馬鹿にした償いをさせてやるぜ……ちょ、いった! やめろやめろ!」

 

 悦に浸っていると、女の子が暴れ回り手足が顔面にぶつかる。さすがにこれ以上近くにいて、近隣住民にバレれば誘拐犯だと間違われる。

 俺は決して、そんな非道なことはしない紳士だ。

 

 キリッ!!

 

 女の子を肩に担ぎ、人目が少なく屋敷が見える路地裏へ歩いて行く。すると女の子がより一層暴れ回り、助けてぇぇ! と叫ぶが周りには誰もいない。

 

 チラッと屋敷を見ながら機械のボタンを押し込んだ。

 

 

 ドォカカカアカァン!!!!

 

 

 

 

 

 次の日、俺は『白雉』街だけではなく、『飛鳥』の国家中で指名手配されるようになった。

 

 誘拐犯として。

 

 

 なんで?

 

 

 

 




もう続かない
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