皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第十一話:緬甸

 ビルマ国首都のラングーン。赤道も近く、日本では春と呼ばれる季節でも暑さが支配するこの都市の路上で、国家の支配者とも言える二人が議論をしていた。

 

「私としては、ビルマ国の現状は民衆が望む独立とは程遠いものに感じます。」

 

 もう一人の男にそう言ったのはビルマ国の国防大臣であるアウンサンだ。彼はぞっとする程に悲壮な決意を固めた目で言う。

 

「もしこのまま独立が認められなければ、私は……。」

 

「日本の統治に対して言いたいことはよく分かる。しかし、ここで反乱を起こしてビルマから日本軍を追い出したとしても、その戦闘で国土はさらに荒廃し、さらには日本との絶望的な戦争を強いられることになる。」

 

 彼の目に宿った決意を見抜き、優しく、そして冷静に諭したのはビルマ国の首相であるバー・モウ。彼は優しい声のまま話を続ける。

 

「それに東条首相ともまた会談をする予定だ、今は下手なことをやらないでくれ。」

 

「独立が目の前にあるのに勝ち取れない、それが悔しくてたまりません……。」

 涙を湛えたアウンサンを慰めるように、あるいは諫めるようにバー・モウは話し続ける。

 

「今は我慢だ。街も復興しつつある。日本に利用され、そして利用してやろうではないか。この後には会議もある、この話はまた後に……」

 

 話を途切れさせるように不躾な足音が二人の元に近づいて、一人の男が話しかけてくる。

 

「お前はバー・モウ首相か?」

 

 カチャ、カチャ、と金属音が鳴る。

 

「ああそうだが、君は一体誰——」

 

 銃声が響き、首相は地面に倒れた。

 

 

 

「現在の状況を頼む。」

 

 参謀総長室に響く霊夢の声に魔理沙が答える。

 

「ああ。まずインドだが、アメリカの応援部隊は順調に掃討されつつある。相手の補給がほとんどない関係で日本軍が圧倒的に有利だ。資源も土地も押さえているから新しい空母なんかも作れるだろうな。だがイランの山岳地帯に英軍の残党が数十万人規模で立てこもっているとのことだ。戦車部隊での突破もチハの性能を考えると難しいし歩兵に関しては論外といって差支えないだろう。」

 

「チハの退役と新たな戦車の量産と改装までしてたらいくら時間があっても足りないし、スエズは強襲上陸で奪取するのが妥当だろうね。」

 

「それとバー・モウ首相に対する暗殺未遂事件があった。警備兵の活躍により事なきを得たが、計画者の磯村副参謀長と実行犯の浅井は共に「英軍のスパイであるバー・モウを生かしておいてはいけない」と言っていたな。」

 

「彼が元英国官僚だったのは事実だけど、それは彼が英国と今も繋がっていることを意味しないのに。目のついてない奴らだ。」

 

「そうだな。次に欧州だが、ロンメルの率いるB軍集団がイタリアへ移動、ローマの奪還を目指し猛攻撃を仕掛けているそうだ。ドイツ参謀本部はかなりの優勢だと言っている。本当ならイタリアの解放とムッソリーニの政権復帰もあり得るだろうな。だが一方でギリシャへの上陸を許してしまったようだ。あそこはヨーロッパでもアルプスに並ぶ自然の要害が続く場所だ、奪還を狙っているそうだがかなり難しいだろう。独ソ戦は未だに停滞しているな、ソ連による大がかりな攻勢もモーデル元帥による天才的な采配で北方軍集団を救出し事なきを得たそうだ。」

 

「欧州は依然として均衡が続きそうだね。」

 

「それとインド制圧で太平洋やインド洋に出られるユーラシア大陸の連合軍基地はほとんど奪取した。これからは大東亜共栄圏全体での活動が容易になるだろうな。」

 

 それから、と魔理沙は真新しい紙を取り出し、霊夢の前にある机に置きながら伝える。

 

「聯合艦隊から伝令だ、インド洋沖でオーストラリア海軍の主力部隊と接敵したらしい。これが敵艦隊の詳細な偵察結果だ。」

 

 それを一瞥した霊夢は不敵に笑う。

 

「戦間期に作られた軍艦の寄せ集め、まさしく烏合の衆だ。容赦なく撃沈してやれ。」

 

「分かった、そう伝えておこう。」

 

 魔理沙はそそくさと参謀総長室を後にして伝令部へ急いだ。

 

 

 

 翌朝、霊夢の元に山本から再び一枚の紙が届けられる。内容は「オーストラリア海軍は13時間の戦闘で重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦5隻を失い完全に海中へ没した。聯合艦隊の被害は非常に軽微であるが、万全を期すためインドネシアに寄港する。」というものだった。

 

 紙を見た霊夢は笑う。

 

「やはりこうなったか。山本君はやはり凄腕の海軍司令官だ。彼を海軍甲事件で失っていたらと思うと恐ろしいな。」

 

 その様子を見た魔理沙も口角を上げるが、二人の間には言い知れぬ緊張感が漂っていた。霊夢の言っていたことがもし本当だったなら、という恐怖がそうさせたのかもしれない。

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