皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第十三話:上空

 梅雨明けの空から陽射しが差し込み、夏の始まりを蝉と共に告げる頃。本土防衛隊総司令官である東久邇成彦はとある飛行場を訪れていた。遠くで誰かが「予科練の歌」を歌いながらそこにあるものを整備している音が聞こえる中で、彼は誰に言うでもなく呟く。

 

「順調に整備が進んでいるようで何よりだ。」

 

 特徴的な紡錘形の機体を見ながら、遠く離れた欧州の同盟国よりやってきた潜水艦を想いつつ、彼は続ける。

 

「東京に大規模爆撃の予兆がある、その時が君たちの初実戦となるだろう。恐らく、ドイツに次いで時速1000kmを優に超える領域に入る。しかし、君たちはそれを必ず乗り越えられると私は信じている。」

 

 美しい、芸術的とさえ思えるその航空機に目を向けながら、しかし彼は戦争を見ていた。

 

「けたたましく戦い、本土を守り、この地に戻ってきてくれ。健闘を祈る。」

 

 

 

 1945年7月25日。日本軍の唐突な撤退から1年と少し、様々なトラブルがありながらも航空基地として整備されたサイパン島から、500機のB-29といくらかの護衛機が離陸した。

 

「目標は関東平野、ジャップの本拠地だ。火の海にしてやれ。」

 

 そう命令を受けたB-29飛行編隊第3番機の乗組員たちは、硫黄島やインドの話を思い出し不安にはなっていたが、まだ機内で話し合えるほどの余裕があった。

 

「おい、こんな少しの護衛機で大丈夫なのか?」

 

 誰かが放った質問に、また誰かが答える。声が機内で反響し、発言者が誰かは口元を見なければ分からない。

 

「心配するなよ。」

 

「ジャップの戦闘機はここまで上がって来れないんだ、安心しろ。」

 

 そう言い終わるかという所で、大きなエンジン音が聞こえ、直後に爆発音と共に赤い光がきらめく。

 

「何だ今の音は!?」

 

「分からん!」

 

 飛行機の中でその声が反響した所に再び爆発音が混じる。

 

「おい見ろ!4番機と7番機が落ちていくぞ!」

 

「上空に高速で動く飛行機がいる!」

 

「あんなの見たことがねえぞ!」

 

「早く撃ち落とせ!」

 

 叫び声の響く機内に、再び爆発音が響いた。

 

 

 

「国産ロケット機「秋水」の初実戦はどうだった?」

 

 参謀総長室で霊夢が魔理沙に聞く。

 

「戦闘だけで見れば、痛み分けというのが正当な評価だろうな。2度目の資料輸送のおかげで性能も信頼性もかなり高いものが素早く完成し、今作戦までに500機も準備できた一方で撃墜したB29が107機なのに対して損失した秋水は238機。まだまだパイロットの教練に時間をかけないといけないな。」

 

「じゃあそれ以外の面で見ればどうなる?」

 

「完勝だ。既に量産体制は完全に整っているから200機程度の損失は痛手であっても致命的ではない。それに本土の防空という観点から見ればこちらの戦略目標は完全に達成された一方で、米軍は本土に1発も爆弾を落とすことができなかった。その上、こちらは今回の経験を次回のB-29迎撃に活かすことができるが米軍はそれができない。護衛機で撃ち落とそうとしたところで最高時速1000kmを超えるロケット機に追いついた上で撃墜できる機体なんて向こうはまだ量産できてないからな。」

 

「つまりは勝利した、ということでいいんだな?

 

「ああ。これから日本全土に秋水が配備されれば、損失の大きさを鑑みて米軍も爆撃を試みなくなるだろう。」

 

 魔理沙が言った予想は当たっており、実際に1945年の8月になるとアメリカのB-29爆撃機隊は秋水による被害が爆撃成功による利益を上回ると判断し爆撃機の領空への侵入は鎮静化。

 本土上空には平和な夏が戻ったのであった。

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