皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第十五話:運河

 1945年12月25日、紅海である船団が太平洋を目指し航行を続けていた。

 

「やっと紅海か、まだ太平洋への道のりは遠いな。」

 

 この船団を指揮するアメリカ海軍元帥のウィリアム・リーヒは甲板の上でそう呟いた。

 

「そうですね、クリスマスを洋上で祝うなんてこれに乗った時は思いもしませんでした。」

 

 二日酔いの頭を抱えたある船員が彼の呟きに反応して返事をする。

 

「それにしても、太平洋には既に15隻もの空母が配備されているのに、さらに空母を配備する必要はあるのでしょうか?」

 

 頭痛と共に吐き出された質問に、リーヒは真面目な顔をして答える。

 

「ノルマンディーが失敗した以上、大統領は太平洋でケリをつけたいのだろう。この大西洋艦隊の空母2隻が到着すれば、少なくとも日本海軍との戦力差が大きくなる。」

 

 リーヒは空を見上げ、底抜けの青色を眼前にしながら不安を吐露する。

 

「しかし気にかかるのは最近の日本海軍の動向だ。あの聯合艦隊はどうやら極秘で行動しているようでな、未だにどこで何をしているか分かっていない。参謀本部はオーストラリア近海と踏んでいるようだが、それなら態々極秘にする必要もないだろう。既にこっちも分かり切っている行動だ。もっと大きな何かをしようとしているんじゃ——」

 

 その時、突然に甲板に通信士が駆けだしてリーヒの名前を呼んだ。

 

「ウィリアム元帥殿!イエメン航空基地から連絡です!紅海入口で日本の艦隊を発見したとのこと!」

 

「なんだと!?規模はどれぐらいだ!?」

 

「空母4隻、戦艦6隻を含んでおり日本の第一主力艦隊で間違いありません!さらにその後方を大量の輸送船団が通過したとのこと!」

 

「輸送船団だと!?まさか日本軍はスエズ運河に上陸しようとしているのか!?」

 

 リーヒは拳を振り上げ甲板の柵に落とす。

 

「クソッ!よりにもよって輸送中にか!こっちは空母2隻に戦艦1隻と駆逐艦20隻ほどしかない!この戦力でそんな大艦隊と当たったら……だが……!」

 

「どうしますか、迎撃を行いますか!?」

 

 船員の質問にリーヒは怒鳴り声で返す。

 

「当たり前だ!スエズ運河が落ちれば連合軍は劣勢へと切り替わる!いくら戦力差があったとしても奴らを絶対に通す訳にはいかない!」

 

 

 

 年明け、霊夢参謀総長は陸海軍共同での戦果報告を聞いていた。

 

「日本海軍は予想外にも移動中であった米空母艦隊と接敵、圧倒的戦力差からすべての敵主力艦、具体的には戦艦1隻と空母2隻を撃沈しました。聯合艦隊も空母1隻中破、戦艦1隻大破の損害を受けましたが1艦も沈没することなく海戦を終了しました。」

 

「その後、12月30日には山下将軍率いる14万の軍がスエズ運河南部に上陸を開始、イギリスは別戦線、恐らくはイタリアより部隊を引き抜き防衛に当てましたが我々はそれを見事に撃破、1月18日にはスエズ運河を完全に占領しました!」

 

「良し!これで連合軍は喜望峰航路かパナマ運河経由でしか太平洋・インド洋に艦隊を送れなくなる!」

 

「その上でアフリカ南部に伊四百型潜水艦を派遣し輸送船を徹底破壊しております。これにより連合軍はインド洋及び太平洋への物資輸送が事実上不可能になりました。」

 

「また、ドイツからの電報によりますと部隊がイタリアから引き抜かれた影響で戦車部隊がイタリアの奪還に成功した模様です。」

 

「素晴らしい!これで日本軍の太平洋における優勢はより強化されたものに——」

 

 霊夢が喜びを顔に出して拳を握り締めていると、魔理沙がバタバタと会議室に入ってきた。

 

「大変だ!たった今南方から電文があった!スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島に米軍部隊が上陸したらしい!偵察隊によると規模は約70万人以上とのこと!」

 

 静まり返った空間で、誰かが握っていたペンが床に落ちる音がいやに煩く響いた。

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