皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第十六話:墜落

 1943年4月18日、ブーゲンビル島のジャングルの中。1機の一式陸上攻撃機が地面に突き刺さっていた。噴いた燃料が地面のあちこちに散らばり、酷い石油の臭気を周辺に撒き散らしている。

 

「生き残ったのは私だけか。」

 

 その機体からふらふらと血を流しながら這い出た男が、機体の中にある数人を見ながら呟く。彼らは頭や胸から血を流しており、その身体はもう空気を吸うことも心臓を動かすこともしていなかった。

 

「君たちにはすまなかったな、私が搭乗していたから狙われたのだ。君たちの死を決して忘れはしない。」

 

 必死に回避と迎撃を行おうとした彼らに敬礼をすると、男は空を見上げる。そこには10機以上ののP-38ライトニングが編隊飛行をしていた。先ほど彼らが撃ち落とし、今は男のすぐ近くにある一式陸攻を探しているのだろう。

 

「今こうしている間にも、兵士の命は消えていっている。」

 

 彼は視察予定だった前線基地だけでなく、全戦線の兵士たちを想っていた。今も中国の森林で、ソ連の平地で、太平洋の海上で、遥か上空で、日本兵が、米国兵が、中国兵が、ドイツ兵が、ソ連兵が、英国兵が、その命を散らしている。

 

「彼らの犠牲を無駄にしないため、この戦争を必ず、」

 

 血の付いた拳を握り締め、自身の傷に応急手当を行いながらその男、山本五十六長官は強くその胸に誓う。

 

「意味のあるものにしなければならない。」

 

 

 

 時は進み1946年。陸海軍での戦果報告会は緊急でインドネシア諸島における米軍の上陸作戦に対する対応策を協議する場となっていた。

 

「ひとまず詳しい状況説明を頼む。」

 

 山下は霊夢の声を聞くと、広げられた地図を指しながら報告された現状を話し始める。

 

「端的に言えば非常に厳しい状態です。上陸されたスマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島は全てインドネシアの資源産出中心地域であり、完全に占領されれば再び戦況を逆転されかねません。」

 

「敵軍の数はいくらだ?」

 

「ボルネオ島に40万人、ジャワ島に20万人、スマトラ島に10万人という情報が入ってきています。」

 

「我が軍は?」

 

「それぞれ13万、11万、7万です。」

 

 眉をひそめた霊夢はボルネオ島を指指す。

 

「ボルネオ島に対しての圧力が強いな。」

 

「そこを押さえれば東南アジアのほぼ全域にあらゆる攻撃が可能になるからでしょう。」

 

「インドネシアは常に悩みの種だな。戦闘状況はどうだ?」

 

「各地で劣勢とのことです。ジャワ島は東部諸島から本島に撤退し防衛に成功はしていますが、スマトラ島では中部に上陸されたことから北部で数万の部隊が包囲状態にあり、さらにボルネオ島では防衛線の形成に失敗し各地で部隊が敗走しています。その上スエズ運河への上陸部隊に輸送船を回しているためボルネオ島は補給状況も急速に悪化しているようです。」

 

「兵士が餓死するようでは戦争は終わったも同然だ、貿易船もできるだけ補給に回せ。」

 

「一方でスカルノ率いるインドネシア独立部隊の協力により米軍の情報提供や港の破壊工作が行われております。」

 

「今村の現地人部隊編成が上手く行ったな、魔理沙大臣が彼をジャカルタに戻してくれたおかげだ。少なからず戦局に良い影響を与えるだろう。」

 

 その賞賛に一礼をもって返した魔理沙を確認すると、霊夢は山下に「この状況をどう打開する?」と聞く。

 

「敵軍は大部隊であるがために補給状況も厳しいとの情報が入っています。つまりは敵の進軍を食い止め、持久戦に持ち込むことで我が軍の活路を見出せるでしょう。しかし、敵の進軍を食い止めるためには少なからず数を揃える必要があります。中国軍の組織に成功し余力がある中国防衛部隊を30万人ほど派遣する予定です。」

 

 しかし、と山下も顔をしかめる。

 

「ここで問題になるのが米海軍の存在であり、航空隊から米海軍主力艦隊の情報が入ってきています。空母6隻、戦艦2隻を主力とした大規模な艦隊のようです。」

 

「これを撃破しなければ安全に部隊を輸送できない訳だな……。」

 

 霊夢はそう呟くと海軍代表として参加していた永野元帥の方を向く。

 

「今まで艦隊の損失を避けるために決戦は避けてきたが今こそ出番だ。まず呉港の聯合艦隊に例の船を加えてくれ。」

 

「例の船……つまりは……。」

 

「史上最大の空母、第110号艦改め「信濃」だ!改修と訓練により大和の外郭と超巨大甲板を持つこの空母を聯合艦隊に加え航空戦力を増強する!」

 

 一息の区切りを入れた霊夢は海軍の伝令係に向かって命令する。

 

「山本五十六長官に伝達せよ、聯合艦隊は「信濃」合流と同時にインドネシアに向けて出港、目標はアメリカ太平洋艦隊の撃滅!ここで敵海軍を撃破し部隊をインドネシアに輸送せよ!この海戦に大日本帝国の未来が懸かっている!」

 

 話が終わり、沈黙が包む会議室に、霊夢の声が力強く響いた。

 

「各員一層奮励努力せよ!」

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