皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第十七話:海戦

 1946年2月5日、マラッカ海峡沖を航行する米国主力艦隊を補足、直ちに聯合艦隊はジブラルタルを出港し奇襲する形で戦闘に入った。

 最初に航空隊による奇襲を行うため艦載機がはけた「信濃」の上で、一人の新人整備士が双眼鏡を使い遠くの空を眺めていた。その視線の先では、数百機の航空隊がまるで七面鳥落としのように米空母艦隊の航空隊を撃滅していた。

 

「俺達が整備した「烈風」と「流星」、やっぱり強いなあ……あんなに簡単にアメリカの飛行機を撃ち落とすなんて……。」

 

「当然だろ、俺達の完璧な整備に物量だけのアメ公どもが敵う訳がねえ……お、よし、また一隻沈んだな。」

 

 同僚の声を聞いた整備士が双眼鏡で水平線の彼方に目を向けると、恐らく「流星」の爆撃によるものだろう、駆逐艦が一隻、もうもうと煙を出して海中に沈んでいくのが見えた。

 

「あれで何隻目だ?」

 

「確か5隻目だな。重巡も1隻沈めてるってさっき通信があった。」

 

「そいつは素晴らしいな……。」

 

 口からそう漏らしてぼーっと水平線を眺めている整備士の背中を同僚がバシッと叩く。

 

「ほら、これ以上油売ってる暇はねえぞ、もうすぐ第一攻撃が終わって艦載機も帰ってくるんだからな!」

 

 

 

 その後、第二攻撃が行われ米空母が一隻撃沈された。この攻撃を受けた米艦隊は一時撤退したが、予備艦隊を集め再度出撃し第二次マラッカ海峡戦が始まった。

 次々と敵艦へ向けて砲弾を放つ「武蔵」の観測員はその異様な状況に驚きを隠せないでいた。

 

「一体どうなってやがるんだ、こんな近接で戦艦同士が砲撃し合うなんて正気の沙汰じゃねえぞ!」

 

 彼がそう叫ぶのも無理はない。アメリカ海軍の猛烈な進撃により近接化した戦闘は戦艦による砲撃戦を複数回も行わせていたのだ。その上、砲撃戦を「大和」と共に前線で担当している「武蔵」の46㎝三連砲の威力は凄まじく、彼のいる観測所は発射の反動と近くに着水した無数の砲弾の影響でひどく揺れ、発射音が彼の耳を一時的に使えなくしてしまっていた。それが絶え間なく続くのだから、いくら駆逐艦や空母を一撃で沈め続けているとはいえ苛つきが止まらないのも無理はないだろう。

 空母から発艦した航空隊も戦艦には負けられないと言わんばかりに敵艦隊に猛攻を続け、この時点で戦艦1隻、駆逐艦3隻の撃沈に成功していた。

 

 そして日本軍が長い海戦の末に制海権を確保した時、聯合艦隊は航空機100機以上、軽巡及び駆逐艦多数を損失した。しかし主力艦は大和が中破、他の戦艦が一隻大破したのみであり、主力艦のいくつかを撃沈され傷だらけでマラッカ海峡から撤退した米国主力艦隊に大勝利を収めたと言えるだろう。

 

 

 

「それで、中国防衛部隊はどうなった?」

 

 霊夢が山下に聞く。

 

「18万人がボルネオ島、12万人が分割された上でジャワ島とスマトラ島にそれぞれ派遣されました。最初にスマトラ島にて攻勢を開始、完全に包囲され危機的状況にあった北部の軍を海軍陸戦隊の精鋭と共に救出しました。ボルネオ島では東部で包囲されていた部隊を北部の前線から引き抜いた部隊と共に包囲王へ攻勢を仕掛け、長年の統治による地理情報の優位とインドネシア独立軍の協力によりこの絶望的な攻勢を成功させ前線を突破、包囲網を構成していた部隊の一部を逆包囲しました。その後は防衛線の構築に成功、補給に苦しむ米軍を分断と包囲を巧みに用いて追い詰め総勢40万、つまりは強襲上陸したほとんど全部隊の殲滅に成功しました。ジャワ島での激戦に勝利することはできずいくつかの部隊は撤退しましたが防衛線の維持には何とか成功しております。」

 

「そうか。スエズ運河の方はどうなった?」

 

「英軍の猛攻により一時は運河の北側を奪還されましたが、決死の特別攻撃を英軍に対し敢行、部隊の3分の1が犠牲になりましたが運河は再び大日本帝国の手中に収まりました。」

 

「それは……。」

 

 霊夢は目をぎゅっと瞑り、何かをこらえ、それを完全にどこかへ押し込んでから目を開く。

 

「ともかく、我々は連合軍による多方面の攻撃をかろうじて跳ね除けた、ということで大丈夫だな?」

 

「はい。我々の勝利への道はついに閉ざされることなく守り切られました。」

 

「素晴らしい。スエズで死んだ兵士たちもこれで浮かばれるだろう。」

 

 そう言った所で時計を見た霊夢は山下に向き直り出口の方を指す。

 

「すまないが席を外してくれないか?これから五十六君と少し話をする予定があってな。」

 

「了解いたしました。」

 

 山下は軍人らしく何も詮索せずにそれだけ言うと、参謀総長室のドアをゆっくりと開けて去っていった。

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